【予想】 このミステリーがすごい! 2024年版 海外部門ノミネート作品はどれだ 38冊

フルタニ

こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 ミステリー を書きます。

2022年10月から2023年9月に発行された海外ミステリー新刊の中から このミステリーがすごい! 2023のランク入りが期待できる作品をセレクトしました。

作品選びの参考にしてください。

Contents
  1. このミステリーがすごい! 2024年版 海外部門ノミネート作品は
  2. 2023年9月
  3. 2023年8月
  4. 2023年7月
  5. 2023年6月
  6. 2023年5月
  7. 2023年4月
  8. 2023年3月
  9. 2023年2月
  10. 2023年1月
  11. 2022年12月
  12. 2022年11月
  13. 2022年10月
  14. まとめ

このミステリーがすごい! 2024年版 海外部門ノミネート作品は

宝島社『このミステリーがすごい!』編集部

  • 「ナイフをひねれば」アンソニー・ホロヴィッツ
  • 「処刑台広場の女」マーティン・エドワーズ
  • 「トゥルー・クライム・ストーリー」ジョセフ・ノックス
  • 「グレート・サークル」マギー・シプステッド
  • 「卒業生には向かない真実」ホリー・ジャクソン
  • 「正義の弧(上下)」マイクル・コナリー
  • 「ハリウッドの悪魔」ジョッシュ・ワイス
  • 「忘却の河」蔡駿
  • 「彼が残した最後の言葉」ローラ・デイヴ
  • 「血塗られた一月」アラン・パークス
  • 「恐るべき太陽」ミシェル・ビュッシ
  • 「愚者の街」ロス・トーマス
  • 「すり替えられた誘拐」D・M・ディヴァイン
  • 「死と奇術師」トム・ミード
  • 「最後の語り部」ドナ・バーバ・ヒグエラ
  • 「幽霊ホテルからの手紙」蔡駿
  • 「禁じられた館」ミシェル・エルベ―ル&ウジェーヌ・ヴィル
  • 「警部ヴィスティング 疑念」ヨルン・リーエル・ホルスト
  • 「夜を生き延びろ」ライリー・セイガー
  • 「頬に哀しみを刻め」S・A・コスビー
  • 「破果」ク・ビョンモ
  • 「はなればなれに」ドロレス・ヒッチェンズ
  • 「インヴェンション・オブ・サウンド」 チャック・パラニューク
  • 「ニードレス通りの果ての家」カトリオナ・ウォード
  • 「だからダスティンは死んだ」ピーター・スワンソン
  • 「忘れられた少女(上下)」カリン・スローター
  • 「鹿狩りの季節」エリン・フラナガン
  • 「七つの裏切り」ポール・ケイン
  • 「アクティング・クラス」ニック・ドルナソ
  • 「三体0【ゼロ】 球状閃電」劉慈欣
  • 「真珠湾の冬」ジェイムズ・ケストレル
  • 「グッゲンハイムの謎」ロビン・スティーヴンス
  • 「ルミナリーズ」エレノア・キャトン
  • 「グレイス・イヤー 少女たちの聖域」キム・リゲット
  • 「木曜殺人クラブ 二度死んだ男」リチャード・オスマン
  • 「このやさしき大地」ウィリアム・ケント・クルーガー
  • 「暗殺者の回想 (上下)」マーク・グリーニー
  • 「ステイト・オブ・テラー」ヒラリー・クリントン、ルイーズ・ペニー

さてどんな結果が待ち受けているでしょうか。

今年も『ナイフをひねれば』『卒業生には向かない真実』の鉄板シリーズ2つと新勢力との対決焦点に。特に、前代未聞のクライム小説『トゥルー・クライム・ストーリー』に注目です。

今年は昨年の「われら闇より天を見る」みたいに独走状態(と私が思った)作品がないので興味津々ですね。

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2023年9月

「ナイフをひねれば」アンソニー・ホロヴィッツ

「われわれの契約は、これで終わりだ」探偵ホーソーンに、彼が主人公のミステリを書くのに耐えかねて、わたし、作家のホロヴィッツはこう告げた。その翌週、ロンドンで脚本を手がけた戯曲の公演が始まる。いきなり酷評する劇評を目にして意気消沈するわたし。ところがその劇評家が殺害されてしまう。凶器はあろうことかわたしの短剣。逮捕されたわたしには分かっていた。自分を救えるのは、あの男だけだと。〈ホーソーン&ホロヴィッツ〉シリーズの新たな傑作登場!

  • 直感に優れ地道なホロヴィッツの捜査、従来の先駆の探偵たちへのリスペクトなど満足できる内容でした。
  • 本格推理のクライマックスは比喩ではなく舞台の上で行われる。客席に警官を置き、舞台には探偵と容疑者たち。この物語を現代で読めるのはただ幸せ。
  • 重要性のレベルには高低差があり、重要性の高い伏線の意味に気付けるかどうかが解決のキーポイント。

2023年8月

処刑台広場の女」マーティン・エドワーズ

1930年、ロンドン。名探偵レイチェル・サヴァナクには、黒い噂がつきまとっていた。彼女は、自分が突きとめた殺人者を死に追いやっている――。レイチェルの秘密を暴こうとする新聞記者ジェイコブは、密室での奇妙な自殺や、ショー上演中の焼死といった不可解な事件に巻き込まれる。一連の事件の真犯人はレイチェルなのか?真実は全て“処刑台広場”に。英国推理小説界の巨匠による極上の謎解きミステリ。

  • 600ページ近い大著だけど、猟奇的な殺人事件連続と、クールビューティ探偵・レイチェルキャラにハマってしまい、一気読み。
  • ミステリというより冒険小説な展開にスカッと満足しつつもコレジャナイ感も拭えない複雑な気持ち。
  • あらすじから想像してたのとまったく違う話だった。いつだって小説に裏切られるのは楽しい。
  • 最初はスロースタートだけど、途中からぐいぐい引き込まれる感じ。
  • 名探偵には自分が突きとめた殺人者を死に追いやっているという噂が付きまとうという設定に最後まで惹きつけられる。

「トゥルー・クライム・ストーリー」ジョセフ・ノックス

2011年末、マンチェスター大学の学生寮から、一人の女子学生が姿を消した。彼女の名はゾーイ。6年が経過するも行方はわからず、世間の記憶も薄れてきた頃、作家イヴリンはこの事件に関心を抱き、関係者への取材と原稿執筆を開始。作家仲間であるジョセフ・ノックスにアドバイスを仰いだ。2018年、ゾーイの双子の姉キムが初めてマスコミ取材に応じ、事件は再度注目を集めることになる。だが、取材と執筆を続行するようノックスから助言されていたイヴリンは、翌年、拉致犯人と思われる人物を特定する証拠を入手した直後に死亡。故人の遺志を継いだノックスが原稿の整理と追加取材を行って、『トゥルー・クライム・ストーリー(犯罪実話)』として彼女の遺稿を完成させるのだったが――。

  • いきなり作者が意外な形で登場するのも笑えた。これは堕落刑事シリーズも読まなきゃね。
  • 作家のイヴリンと友人で著者でもあるノックスのメールのやり取りが中心で読みやすく、節目節目に新たな事実が判明することもあり、時間を忘れて読み進められた。 中の登場人物は皆一癖あって好感を持てないし、誰が本当のことを言っているかもはっきりしない。
  • 登場人物への思い入れが揺れ動いたり。いろいろと楽しめる。査定次はどんなの?と期待してしまう。

「グレート・サークル」マギー・シプステッド

幼い頃から空の世界に魅了されていたマリアン。空軍での従軍を経て、生涯の夢である地球一周飛行挑戦の途上、彼女は消息を絶った──50年後、ハリウッド映画でマリアン役を演じるハドリーは、明かされることのなかった秘密に近づいていく。英国最高峰ブッカー賞最終候補作。

  • 読み初めてすぐに主人公マリアンにすっかり魅了され、過酷な状況で悩み苦しみながら生きた生涯に圧倒されました。
  • 悪くはなかったが800頁一気に読ませるほどの訴求力はなく、何度か休憩挟みながら読了。
  • 確か6位だった『精神の生活』の方が断然好きだな。NYTのベストに入らなかった理由はなんとなく分かるというか。

2023年7月

「卒業生には向かない真実」ホリー・ジャクソン

大学入学直前のピップに、不審な出来事がいくつも起きていた。無言電話に匿名のメール。首を切られたハトが敷地内で見つかり、私道にはチョークで首のない棒人間を書かれた。調べた結果、6年前の連続殺人事件との類似点に気づく。犯人は服役中だが無実を訴えていた。ピップのストーカーの行為が、この連続殺人の被害者に起きたことと似ているのはなぜなのか。ミステリ史上最も衝撃的な『自由研究には向かない殺人』三部作の完結編!

  • 性被害やドラッグ、正義の危うさなど、今の日本も通じる問題を取り入れ、三部作の最後に相応しいスリルが味わえた。
  • 途中本当に苦しくなって何回か本を閉じました。 でもしっかりと見届けました! シリーズのクライマックスに相応しい超大作でした!
  • ささやかな日常が一転し、気付けばこんなところまで来てしまった…家族や友人たち、ラヴィとの揺るぎない絆に涙

「正義の弧(上下)」マイクル・コナリー

未解決事件班の責任者になったバラードはボッシュをチームに引き入れる。 優先すべきは約三十年前の女子校生殺人事件だったが、ボッシュは夫婦と子ども二人が砂漠に埋められた一家殺害事件に 没頭して言うことを聞かない。 班員には事物に触れて見えない事情を感じるという共感能力者もいてバラードを困らせる。 ハリー・ボッシュとレネイ・バラード共演第4弾。

  • 未解決事件のファイルを熟読し、小さなほころびを追跡し始める。1行1行が伏線のような、これこそ求めていた展開!という感じ。
  • 読んでいてドキドキして楽しかった!!二人とも本当にいいバートナーでよく似た警官魂の持ち主。ラストのボッシュの行動、バラードの立ち位置。あー、次作が待ち遠しい。
  • 最後の衝撃的な展開には、ついにという思いもある。つらいなぁ。

「ハリウッドの悪魔」ジョッシュ・ワイス

1958年、反共・反ユダヤ主義を標榜するジョセフ・マッカーシーがアメリカ大統領となり、権力を握っている。映画産業は国営化され、制作されるのは反共プロパガンダ映画ばかりだ。ロサンゼルス市警の刑事モリス・ベイカーは、そんなハリウッドで、ある殺人事件を担当することになる。被害者は元映画監督ジョン・ヒューストンと、新進気鋭の記者ウォルター・クロンカイト。現場には「悪魔どもをやっつけろ ベイカー」と書かれたメモが遺されていた。ふたりはなぜ殺され、ベイカーの名前がなぜあったのか? 大統領配下の下院非米活動委員会(HUAC)の横やりが入り、捜査から外されたベイカーに、ソビエト連邦の謎めいた女スパイ、ソフィアが接触してくる。彼はソフィアとともに、俳優ハンフリー・ボガートや脚本家ダルトン・トランボらが暗躍する、もうひとつのハリウッドをさまよう。ユダヤ人のベイカーが大戦中のヨーロッパで過ごした過去の悪夢に悩まされながら――。異なる歴史を歩むハリウッドを舞台にした傑作ノワール。

  • ハリウッドも言論統制でディズニー一強、ナチ残党を優遇した政府への怒りが迸る。ハードボイルドものの文脈で語られるディストピア。
  • ジョセフ・マッカーシーが米国大統領になっていた世界。とはいっても実は現実の世界が編み込まれている。ユダヤ人と共産主義者と同性愛者。米国に移ったナチ。

2023年6月

「忘却の河」蔡駿

1995年6月19日、名門高校の教師申明(シェン・ミン)は何者かに殺された。殺害された生徒と恋愛関係にあったのではないかと疑われていた直後のことだった。慕っていた生徒や同僚、そして婚約者の谷秋莎(グー・チウシャー)からも見放されて――。先に起きた女子高校生殺人事件との関係などが疑われたが、結局真相はわからず事件は未解決となった。 時は流れ、2004年。谷秋莎は訪れた小学校で、すらすらと漢詩を暗誦する小学3年生司望)スー・ワン)と出逢う。父が経営する私立学園の良い広告塔になると思ったのだが、次第に司望に執着していく秋莎。ある日、ふたりは廃車のトランクから死体を発見する。それはあの申明の旧友の死体だった。 忘れたはずの因縁が甦り、そして司望にちらつく申明の影。天才小学生は申明の生まれ変わりなのか? いま、輪廻が巡り始める――。 中国のスティーヴン・キングが描く、異色の輪廻転生ミステリ。

  • たくさんの漢詩が引用されたりいろんな小説タイトルが出てきたりしてなかなか面白い。ただ登場人物の名前の読み方は覚えられない。
  • 結局はホラーよりなのかなと思えば、なかなか入り組んだプロット。

「彼が残した最後の言葉」ローラ・デイヴ

夫が消えた。妻のハンナに残されたのは「彼女を守って」と書かれたメモと、夫の連れ子ベイリー。そしてベイリー宛ての大金が入った鞄。のちに夫が働くテック企業に巨額の詐欺の疑いがかかり、ハンナは失踪の謎に迫る――全米200万部のベストセラーサスペンス。

  • 目が離せず、1日で読んだ。活字が大きめなのも善き。
  • 継母と娘の心の動きがメインの家族ドラマ。でもちょっと文章がくどいのと、現在と過去への行ったり来たりに必然性がないところが気になった。
  • 途中からドキドキして一気読み……なのだが、謎が解けるとあまりにもアメリカンなので個人的には好みではなかった。

「血塗られた一月」アラン・パークス

1973年、グラスゴー。特別房の囚人が予言した少女射殺事件の捜査に挑む刑事ハリー・マッコイは、事件の裏の巨悪に触れるが……

  • 描写される街は汚く悪と権力がモノを言い、女性の人権はつゆ程もない。だが魅力的なのだ。事件解決は振り返れば一本筋に過ぎなかった。
  • 初読みでファンになった。ハリー・マッコイ・シリーズ。これから読み続けていく本になるだろう。
  • 都市にはびこる昏い欲望の深さや、大きな弱みをもつヒーロー像を描いてはいるが、読者の好悪は分かれるだろう。

2023年5月

「恐るべき太陽」ミシェル・ビュッシ

南の島に集まった人気作家と作家志望の女性5名が次々に死体で発見され……。騙りの天才ビュッシが放つ、クリスティへの挑戦作。

  • 仕掛けは面白いが、半分くらいで良かったのでは。さすがフランスミステリーというくらい、とにかく読みにくい。
  • すんごい読みづらい…と思ってたら、それも仕掛けだったのか。才能というものの容赦なさが怖い。
  • 途中までは面白く読んだけれどラストええっどういうこと??と騙されたけどあまりスッキリはせず。うーんという感じ。

「愚者の街」ロス・トーマス

壮絶な過去をもつ元スパイに託された仕事は、 腐敗した街をさらに腐敗させること――。 生まれ落ちたときに母を亡くし、その後は父と二人で上海に渡ったダイ。南京路で爆撃に遭い、気づくと手をつないでいた父親は腕だけになっていた……。娼館のロシア人女性に拾われ、娼婦たちから様々な言葉や文化を学びながら生きのびて成人したダイは、やがて「セクション2」と呼ばれる米国秘密情報部でエージェントとしての活動に従事する。だが、何者かに陥れられて投獄され、情報部からも解雇。彼の出獄を待っていたのは、腐敗した南部の小さな街をさらに腐敗させ再興させるという突拍子もない仕事だった――。一人の男の数奇な運命を綴った壮大なるサーガにして、壮絶なる暴力と騙し合いの狂騒曲。二度のMWA賞に輝くクライム・ノヴェルの巨匠畢生の大作、ついに本邦初登場。

  • チャンドラーやハメットのような香りや懐かしさは感じる。 例えば、これを現役の作家が書いたとしたら、あまり、評価されないと思う 。
  • クライムノベルで爽快感があるなどと言うと単なるサイコ野郎になってしまうが、傑作だから言えること。ロマンチックな愚か者に強推薦。
  • モームからの引用があったりしてセンス最高だ。原尞氏の解説で「小説家は詐欺師のようなものだ」「詐欺の至芸は語り口」「資料のお墨付き、本物だと言う注釈、実用に適う、宗教的な威喝、は詐欺の風上にもおけない」「語り口ひとつで、何の役にも立たないものを見事に売りつけてみせるのが小説の至芸」とある。

「すり替えられた誘拐」D・M・ディヴァイン

父親は大金持ち、本人は大学の講師と交際している札つきの問題児――そんな学生バーバラの誘拐計画が進行中だという怪しげな話が、大学当局に飛びこんでくる。そして数日後、学生クラブが主催する集会の最中、彼女は本当に襲われた。ところが、この誘拐事件は思いもかけぬ展開を迎え、ついには殺人へと発展する――入り組んだ事件が鮮烈な結末を迎える、謎解きミステリの職人作家ディヴァインならではのエッセンスが詰まった長編!

  • 最初はフーダニットの興味が持てたが、そこからサスペンスに移行する構成が私には合わなかった。視点も色々な人物に替わり過ぎて混乱した。
  • 犯人に意外性はないものの推理の過程、動機などどれをとっても楽しめる物語だった。
  • 物造形がとても英国的なのでイギリス文学好きにも、そして1920年生まれ(1980年没)なのに女性の描き方がとても良いのも快適に読める要因。

2023年4月

「死と奇術師」トム・ミード

1936年、ロンドン。高名な心理学者リーズ博士が、自宅の書斎で何者かに殺されているのが発見された。現場は密室状態。凶器も見つからず、死の直前に博士を訪れた謎の男の正体もわからなかった。この不可能犯罪に、元奇術師の探偵ジョセフ・スペクターが挑む。

  • 袋とじはあくまでも客寄せパンダの仕掛け、それに耐えうるミステリーであることが大切。
  • 解決編を読むのに、理解していくのに 少し時間がかりましたが、古典的な感じのミステリーとして 楽しめました。
  • 大好物な本格ミステリー。ちょっと謎解きが雑な感じもあったけれど楽しめました。探偵さんのキャラが良かった。

「最後の語り部」ドナ・バーバ・ヒグエラ

  • ぐんぐん読めた。何より主人公の強さと賢さ、優しさに圧倒された。
  • ニューベリー賞とプーラ・ベルプレ賞を同時受賞らしい。そういう賞の存在を初めて知る。大人が読んでもバリバリ楽しめる。
  • いろいろ考えさせられたが、登場人物に共感しづらいのもあって読破はほぼ勢い。味わって読もうとはなれなかった。

「幽霊ホテルからの手紙」蔡駿

  • 途中なので読むのを止めるにやめられない、終わるに終われず、惰性で読み続けているところがあり、勇気を出して読むのを止めた。
  • 毎回何とかのキングというセリフに騙されるが、今回は読んで損はいないと思う!
  • 中国の歴史や芸能も題材としつつ、美女たちとの関係もロマンティックに描かれる。オチはちょっと物足りなさも感じるが、この独特の世界観は嫌いじゃない。

2023年3月

「禁じられた館」ミシェル・エルベ―ル&ウジェーヌ・ヴィル

飲食産業で成功を収めた富豪のヴェルディナージュが、マルシュノワール館に引っ越してくる。これまでの所有者には常に災いがつきまとってきた曰く付きの館だ。
再三舞い込む「この館から出ていけ」との脅迫状。
果たして雨の夜、謎の男の来訪を受けた直後、館の主は変わり果てた姿で発見される。
どこにも逃げ道のない館から忽然と姿を消した訪問者。捜査が難航するなか、探偵トム・モロウが登場し……『黄色い部屋の謎』以降の歴史的空白を埋めるフランス産不可能犯罪小説の傑作、ついに発掘!

  • 探偵が登場と古典ならでは。シンプルで読みやすくそれなりの出来と思うが,同時代の名作連と比べるとやはり見劣りする。
  • どの人物にも感情移入できなくて、特に役人たちの俗物ぶり、小物ぶりに気分が悪くなった。ともあれ、埋もれた名作を発掘しようという意欲にあふれ、翻訳してくださった訳者には感謝している。
  • 海外っぽい構成さがにじみ出てきて、ジョークな要素も忘れてなくて、楽しめました。日本と海外の環境、感性や思考回路など垣間見るとまた面白さが増して新鮮でした。

「警部ヴィスティング 疑念」ヨルン・リーエル・ホルスト

ある朝、ヴィスティングの自宅の郵便箱に差出人不明の封書が届く。中にあったのは、12―1569/99と数字だけが書かれた一枚の紙。数字は事件番号で、隣接する警察署の管内で1999年に起きた1569号事件を意味していた。 この年の7月、十七歳のトーネ・ヴァーテランが行方不明となり、二日後に絞殺体で発見された。トーネの体内から検出された精液のDNA型が元恋人のもの一致し、男は逮捕され禁固十七年の刑を受けていた。 匿名の手紙は冤罪を示唆しているのか、何を訴えたいのか、そしてなぜ自分に届けられたのか‥‥。

  • シリーズ前作の『悪意』が急にエンタメ路線で驚いたけれど、本作は1・2作目と同じ静かな展開に戻っている。過去の事件の再調査という北欧ミステリでよくあるパターンの展開だ。
  • 現在の事件と解決したはずの過去の事件の再捜査、今回も読ませてくれるよ。しみじみ面白かった。
  • コツコツ、丹念に調べを進める。頼むべきところは頼む。そして積み上げた事実から浮かび上がる真実。その積み上げ方が読んでいて面白い。

「夜を生き延びろ」ライリー・セイガー

1991年、冬の深夜零時、人けのないダイナーの駐車場から発進する一台の車。助手席には、映画オタクの女子大学生チャーリーが座っている。ハンドルを握るのは正体不明の男。ふたりは知り合ってまもない。だが、チャーリーはすでに確信している。この男、二か月前に親友のマディを殺した連続殺人犯にちがいない、と――。シートベルト必須! アクセル全開でハイウェイを駆け抜け、驚愕のラストへと突き進む極上のノンストップ・サスペンス!!

  • 設定が活きるシーンがあるし、無謀と思える行動の説明があるので、中盤はまぁそうかと納得。そして終盤、予想外の絡みからとても面白くなりました。
  • ほぼ一直線で話は進みます。途中、「これでどんでん返しするなら、これしかないよな。
  • サスペンス色強めのスリラーが好みです その中でも最高レベルで面白かった傑作 運転手と主人公の心理戦のサスペンス ある要素がある事で、先が全く読めないし 悪意と好意のバランスが、絶妙 素晴らしい。

2023年2月

「頬に哀しみを刻め」S・A・コスビー

殺人罪で服役した黒人のアイク。出所後庭師として地道に働き、小さな会社を経営する彼は、ある日警察から息子が殺害されたと告げられる。白人の夫とともに顔を撃ち抜かれたのだ。一向に捜査が進まぬなか、息子たちの墓が差別主義者によって破壊され、アイクは息子の夫の父親で酒浸りのバディ・リーと犯人捜しに乗り出す。息子を拒絶してきた父親2人が真相に近づくにつれ、血と暴力が増してゆき――。

  • まず題名に惹かれ、読んでみたらまさしくビンゴ!!クライムノベル好きは、四の五の言わずにとにかく読んでみよう。今年度必読の1冊!
  • 秀逸なのは差別や偏見といったシリアスな問題を核にしてなお、ストーリーを加速し続けていること。心揺さぶられる傑作!
  • LGBTQや人種差別といった問題を真正面から捉えた犯罪小説で、なかなか読み応えがあった。クライマックスの戦闘シーンも手に汗握る展開。

「破果」ク・ビョンモ

稼業ひとすじ45年。かつて名を馳せた腕利きの女殺し屋・爪角(チョガク)も老いからは逃れられず、ある日致命的なミスを犯してしまう。守るべきものはつくらない、を信条にハードな現場を生き抜いてきた彼女が心身の揺らぎを受け入れるとき、人生最後の死闘がはじまる。韓国文学史上最高の「キラー小説」、待望の日本上陸!

  • 岩波から出ているだけあって、メッセージ性も強い。著者も意識してあえて「読みにくい」文章になるようにしていたとか。読んでも翌週にはスジを忘れてしまうことが多いエンタメ小説。
  • 爪角さん、カッコいいです。女であること、老いていくこと、腐りゆく桃のような体と心の変化に戸惑いながらも風のように生きる姿は眩しかったなぁ。
  • 作者の意図した「読みやすくしない」文体は日本の講談のようで、段々と引き込まれスピードアップしていき、気づいたら読み終わっていた、という感じです。

「はなればなれに」ドロレス・ヒッチェンズ

トリュフォーからゴダールへの贈りもの。 映画『はなればなれに』の原作として盟友が推薦した、 傑作青春ノワールがついに本邦初紹介! ともに22歳の前科者スキップとエディは夜間学校で天涯孤独の17歳の娘カレンと出会う。彼女が身を寄せる未亡人宅には頻繁に訪れる男がいて、どうやら未亡人の元娘婿らしいその男ストールツはカジノ関係者で、莫大な現金を屋敷に保管しているという。二人はその金を奪う計画を立てるが、元ギャングのスキップの叔父に嗅ぎつけられ、プロの犯罪者仲間を計画に加えたときから、すべての歯車が狂い始める……。トリュフォーの推薦でゴダールが映画『はなればなれに』の原作に選んだ傑作犯罪小説。本邦初訳。

  • ゴダール映画の原作である本作が翻訳されるとは!楽しみに手にとる。いやはやシンプルだけどしっかりしたサスペンスノワールで一気読みであった。
  • 短慮で刹那的な若者たちは、ひたすらに愚かな行動を積み重ねていく。その様子は読んでいて不快でありつつ、どこか痛々しさすら感じる。
  • 映画で見れば面白かったのかなという感じ。

2023年1月

「インヴェンション・オブ・サウンド」 チャック・パラニューク

「全世界の人々が同時に発する悲鳴」の録音を目指すハリウッドの音響技師ミッツィ、児童ポルノサイトで行方不明の娘を探し続けるフォスター。2人の狂妄が陰謀の国アメリカに最悪の事件を起こす――

  • エンタメとして扱うにはデリケートなエピソードもあるので、手放しで面白い!って言えない部分もあり悩ましいです。
  • メッセージ性は感じたけども。何を目的としてフォスターが罠に嵌められたのかもわかんなかったし、余白なのか僕の読解力不足なのかわからんけど、そこはっきりさせてよ……と思っちゃったので合ってないのかも。
  • スパスパ切れ味鋭い文体も、映像化しやすそうだなあくらいの印象が先立ってイマイチ乗れず。

「ニードレス通りの果ての家」カトリオナ・ウォード

暗い森の家に住む男。過去に囚われた女。レコーダーに吹き込まれた声の主。様々な語りが反響する物語は、秘密が明かされる度にその相貌を変え、恐るべき真相へ至る。巨匠S・キングらが激賞。異常な展開が読者を打ちのめす、英国幻想文学大賞受賞の傑作ホラー。

  • 「犯人の内面」から描いた物語はとても珍しいと思った。後書きを読むと、この精神疾患への著者の思いが伝わってきた。
  • それぞれの視点で語られる物語は、ちぐはぐで不穏。 なかなか読み進められなかったけれど、真相はこんなだったんだと驚きつつ、後半はするする読めた。心が痛む。

「だからダスティンは死んだ」ピーター・スワンソン

ボストン郊外に越してきた版画家のヘンと夫のロイドは、隣の夫婦マシューとマイラの家に招待された。食事後にマシューの書斎に入ったとき、ヘンは2年半前に起きたダスティン・ミラー殺人事件で、犯人が被害者宅から持ち去ったとされる置き物を目にする。マシューは殺人犯だと確信したヘンは、彼について調べ、跡をつけはじめるが……。数人の視点で語られる物語は読者を鮮やかに幻惑し、衝撃のラストへとなだれ込む。息もつかせぬ超絶サスペンス!

  • 「こんなのってアリ?」と思わず声が漏れてしまいそうなトリックで新鮮でした。
  • 数人の視点で語られる物語は読者を鮮やかに幻惑し、衝撃のラストへとなだれ込む。息もつかせぬ超絶サスペンス!
  • 後半に入ると何かしらの違和感があり、それが最後に繋がった。やはりこの作家さんの作品はハズレがない。

「忘れられた少女(上下)」カリン・スローター

連邦保安局の新米保安官補アンドレア・オリヴァーは、最初の任務として、殺害を予告する脅迫状を受け取った判事の身辺警護を命じられる。その判事は、38年前に18歳の娘エミリーを殺害されていた。誰もが一目置く人気者で優等生だった少女は、プロムの翌朝、裸をさらした無惨な姿でゴミ置き場で発見されたのだ。そして迷宮入りした事件の真相を突き止めることが、アンドレアのもうひとつの任務だった――。

  • 真相が明らかになっても、爽快感は無い。しかしながら、この後味の悪さがカリン・スローターの醍醐味ともいえる。
  • 今まで読んだカリンスローターさんの本の中ではスピード感が無いな〜 読んでいてあまりドキドキしないというか。 ちょっと退屈ですね。
  • 登場人物いずれも姓と名両方で書かれており中々覚えられないのは難点ですが、回収迄結構面白く読めました。

「鹿狩りの季節」エリン・フラナガン

1985年11月、ネブラスカ州ガンスラム。鹿狩りの季節を迎えた田舎町で、女子高生ペギーが失踪した。当初は家出と見られたが、弟マイロは不審に思い、周囲に聞き込みをする。やがてペギーに好意を抱いていた知的障害のある青年ハルが鹿狩りの帰りに血が付いたトラックに乗っていたことから疑惑の目を向けられる。ハルの無実を信じて事件を調べる保護者代わりの中年夫婦、姉の行方を追うマイロ、何かを隠している町の人々とハル……様々な思惑の果てに浮かぶ真実とは? アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞受賞作。

  • ミステリが主軸ではなく、ペギーの小さな弟と、ハルを保護者として支えていたアルマの葛藤と友情が繊細に描かれたヒューマンドラマである。
  • 可哀想なんだけど読んでいてストレスフル。当初からあまり興味を持てなかった失踪事件の真相に私のイライラが加速、アルマ並みにキレそう(笑)あくまで作者の視線は優しく、読後感は悪くない。
  • ヒロインとはいえ共感しかねる。わさわざ生きにくいほうへ行かなくても。ミステリというよりヒューマンドラマだった。

2022年12月

「七つの裏切り」ポール・ケイン

レイモンド・チャンドラーが「ウルトラ・ハードボイルド」と評した幻の作家の代表作7編を収録した傑作集。町なかで別人と間違われて呼び止められた男。そのまま倒れこんでしまった相手を助けてタクシーに乗せたものの、彼はすでに絶命していた。こうして町の裏世界に関わることになった男は、驚くべき行動に出る……

  • つまらないっていうわけでもなくて、シナリオに近いようなぶっきらぼうな文体で振り回されながら読むノワールはシュールな不条理小説のような魅力がある。
  • 感情表現が少なく最初は慣れるのに大変だったが、慣れると帯の通り詰めた文書が心地よい。
  • 登場人物たちの言動から当時のアメリカの荒廃した雰囲気が滲みでている。

「アクティング・クラス」ニック・ドルナソ

倦怠期の夫婦、シングルマザーにヌードモデル。社会にうまく馴染めない10人は、人生の変化を求めて演技教室に通い始める。謎の男ジョン・スミスが指導する即興演技クラスに参加するうちに、現実と演技の境界は曖昧に。カラフルに彩られた不穏さが響き渡る。

  • それは現実からの解放ではあるんだけど、妄想世界に飛びこむことでもある。即興劇の内容が魅力的であるだけに、たまらなくおそろしくなる。おそろしいけどページをめくらずにはいられない。
  • 登場人物が無表情で何を考えてるかわからない。 現実と虚構があやふやで怖い。
  • コミュニティーセンターの演技講座に集まった、クセのある男女の群像劇。徐々に現実と空想の世界が入り乱れる、気味の悪さ、不穏さが秀逸。

「三体0【ゼロ】 球状閃電」劉慈欣

両親と食卓を囲んでいた少年・陳(チェン)の前に、それは突然現れた。壁を通り抜けてきた球状の雷(ボール・ライトニング)が、陳の父と母を一瞬で灰に変えてしまったのだ。自分の人生を一変させたこの奇怪な自然現象に魅せられた陳は、憑かれたように球電の研究を始める。

  • やっぱうまいなあ。奇想家かつストーリーテラーは欧米SF界にも、めったにいない。
  • 謎の自然現象「球電」の正体を追う科学者の探究がスリリングだし、その正体から導かれる様々な出来事や存在も盛沢山で、面白さが止まらなかった。科学の進歩と兵器についても考えさせられる。
  • 次第に殺意がエスカレートしていくのが恐ろしい。そしてあまりにもしれっと米中戦争をやっているのが笑う。

真珠湾の冬」ジェイムズ・ケストレル

世界最大のミステリ文学賞エドガー賞最優秀長篇賞受賞作 太平洋戦争迫るハワイ、香港、そして日本。彼は真実を追い求めた―― 1941年ハワイ。アメリカ陸軍上がりの刑事マグレディは、白人男性と日本人女性が惨殺された奇怪な事件の捜査を始める。ウェーク島での新たな事件を経て容疑者がマニラ・香港方面に向かったことを突き止めた彼はそれを追うが、折しも真珠湾を日本軍が攻撃。太平洋戦争が勃発する。陥落した香港で日本軍に捕らえられ、東京へと流れついたマグレディが出会ったのは……。戦乱と死が渦巻く激動の太平洋諸国で連続殺人犯を追う刑事の執念。その魂の彷徨を描く大作ミステリ。

  • 3部構成の骨格がきっちりしており、時間と場所の流れはメリハリがあり、頁を捲るのももどかしい程に読ませる。
  • 憎むべきは敵国の人間ではなく、戦争を始める一部の人間である事を伝える内容が見られ、『ファシズムに対する怒りと批判がテーマ』(解説より)である事がわかる。
  • 詩情溢れる文章で、印象的なシーンも多いが、一番は野沢温泉の冬のラストシーンだ。

グッゲンハイムの謎」ロビン・スティーヴンス

謎解きのおもしろさに夢中になれる 『ロンドン・アイの謎』続編! 誰が美術館から名画を盗んだのか? 12歳の少年テッドの推理が冴える! 夏休みを迎えた12歳のテッドは、母と姉といっしょに、グロリアおばさんといとこのサリムが住むニューヨークを訪れた。おばさんはグッゲンハイム美術館の主任学芸員で、休館日に特別に入館させてくれた。ところが改装中の館内を見学していると、突然、何かのきついにおいと、白くて濃い煙が。火事だ! テッドたちは、大急ぎで美術館の外に避難した。だが火事は見せかけで、館内の全員が外に出た隙に、カンディンスキーの名画〈黒い正方形のなかに〉が盗まれていたのだ。しかも、おばさんが犯人だと疑われて逮捕されてしまう。なんとしても絵を取りもどして、おばさんの無実を証明しなければ。「ほかの人とはちがう」不思議な頭脳を持つテッドは、絵の行方と真犯人を探すため謎解きに挑む。『ロンドン・アイの謎』につづく爽快なミステリ長編!

  • グッゲンハイム美術館実際に見てみたい。さわやかな終わりでとても満足。
  • 使い古された手。関係者の多くに謎があり、真実を突き止めながら、真相に向かっていく手法。これもちょっと、迂遠なのよね。とはいえ、小中学生ならば楽しめるに違いない。
  • イギリスからNYへ遊びに来た3人の少年少女達の”少年探偵団”ストーリーが微笑ましい。

2022年11月

「ルミナリーズ」エレノア・キャトン

舞台はゴールドラッシュに沸く19世紀ニュージーランド。隠者の死と娼婦の悲劇、失踪した金鉱掘り……事件の真相を求めて12人の男が集う時、輝く者たちは天球を廻りはじめる。野心的な構想と創意溢れる設計、圧倒的長大さで世界を驚嘆させた2013年ブッカー賞受賞作。

  • 登場人物が多いせいか最初は説明も多くイマイチ入りきれなかったが、300頁を超えたあたりから物語は加速していき登場人物たちの繋がりもみえてきだしました。
  • 占星術をモチーフとした<運命の物語>がいったい事件にどう関連していたのか、というのを読者に考えさせるのが味わいになっていた。
  • 複雑怪奇に見えた陰謀劇が、ある二人の登場人物の運命的な出会いへと収斂していくラストがとても美しい。

「グレイス・イヤー 少女たちの聖域」キム・リゲット

ガーナー郡では、少女たちに“魔力”があると信じられている。その“魔力”が開花する16歳を迎えた少女たちは、ガーナーの外に広がる森の奥のキャンプに一年間追放される。“魔力”を解き放ち、清らかな女性、そして妻となるために。16歳を迎えるティアニーは、妻としてではなく、自分の人生を生きることを望みながら、〈グレイス・イヤー〉に立ち向かう。キャンプではいったい何が? そして、魔力とは?生死をかけた通過儀礼が、始まる──。

  • 結構キツイ描写沢山有りだけどついついページをめくってしまう。自分がキャンプに行ったら、う~ん~、着く前にアウト!だな。
  • すぐには変わらない世界で、一人ひとりが何を見て、選ぶのか。その大切さを感じさせてくれる物語だった。途中の展開は本当に『蠅の王』のようだが、気のせいか女の子だけだと余計に怖い。
  • とてもよかった。フェミニズムディストピア小説となっているけど、フェミニズムが押しつけがましくなく物語として自然と受け入れられ、そして共感や共鳴を感じ、ただただ祈るような気持ちで読み進めた。

「木曜殺人クラブ 二度死んだ男」リチャード・オスマン

老人探偵グループ〈木曜殺人クラブ〉メンバーのエリザベスが、死んだはずの因縁ある英国の諜報員から手紙を受け取った。彼は2千万ポンド相当のダイヤを盗んだ疑いを掛けられて米国のマフィアから狙われており、協力を求めてきたのだ。そしてクラブのメンバーたちは消えたダイヤとスパイ、凶悪な犯罪者たちにまつわる国際的な大事件に巻き込まれる。

  • 老人探偵団は、老人ながら冴えた頭の閃きを見せる。人生を知った老人だからこそな因縁や人間関係や推理がよかった。
  • 老人ホームに住む4人が活躍するシリーズの第二弾。なかなか読み終わるのが惜しいというのはないけれどこれはまさしくそんな作品。ミステリーとしても面白いけれどウィットに富んだ言葉の数々がたまらない。
  • ミステリの構成もとても凝っていて、二転三転するストーリーにドキドキしっぱなしなのだが、それを凌駕するキャラクター仕立ての上手さに舌を巻いた。大好き!!

2022年10月

「このやさしき大地」ウィリアム・ケント・クルーガー

1932年、ミネソタ。教護院に暮らすオディは、ある日、暴力を振るう職員を殺してしまう。彼はおばに会うため、兄や親友、竜巻で母親を失ったばかりのエミーと施設から逃げ出し、一路カヌーでミシシッピ川を目指すが――。少年たちのひと夏の冒険と成長の物語。

  • ずっしりとした読後感。少女エミーの発作による能力には多少とまどったけれど、彼らの子供からの早すぎる離脱に、それでも強く心揺さぶられた。
  • 「ハックルベリー・フィンの冒険」と時代背景も異なりますが、懐かしい物語に再び見える喜びと新しい物語を読む楽しさをたっぷり堪能できる物語です。
  • ひどい待遇を受けていた教護院か、抜け出して川を下る彼らと出会う人たちの描写が素晴らしくとても良かった。おすすめの一冊です。

「暗殺者の回想 (上下)」マーク・グリーニー

暗殺者グレイマンことジェントリーは、依頼を受けてアルジェリアのトルコ大使館へ潜入した。パキスタンの情報機関員を探るこの任務には、彼にとってある目論見があった。12年前、CIAの特殊活動部地上班であるゴルフ・シエラの一員だったときに関与した南アジアの事件にまつわる情報の獲得だ。そんな彼の前に「死んだはずの男」が現われ……過去のCIA時代と現在の激闘を巧みに交錯させて描くシリーズ新機軸の最新作。

  • ド派手なクライマックスへむけて完璧な筋道をたてていく映画向きな作品。
  • 12年前と現在のクライマックスが交互に描かれる。12年前のチーム戦でのアクションと現在の単独アクション、どちらも凄い。
  • 最近はちょっと停滞してた気がするグレイマン、久々に面白かった。暗殺者だけど昔から正義感だったんだな。

ステイト・オブ・テラー」ヒラリー・クリントン、ルイーズ・ペニー

 当選したばかりの大統領は、予備選でライバル候補を支援してきた最大の政敵を国務長官に選んだ。 新たな国務長官エレン・アダムスは、過去四年間、前政権が犯罪的な無能ぶりを発揮して合衆国を死に体にしていくのを目の当たりにしてきた。 新大統領が議会で一般教書演説を始めた頃、国務省南・中央アジア局の女性職員のデスクに数字と記号だけが並んだ奇妙なメールが届く。 そしてその日の深夜、ロンドンで大規模な爆破事件が起きる。 翌朝、米国+英連邦4か国の諜報部門からなる“ファイブ・アイズ”の緊急会合が始まるが、そのさなか出席者の携帯電話が一斉に鳴った。 次なる爆発は、パリで起こった。 「あなたがたは怪物を解き放った。あなたがたには責任がある」 元アメリカ合衆国国務長官+英国推理作家協会新人賞(CWAニュー・ブラッド・ダガー)・アガサ賞受賞作家による、超一級の国際政治スリラー!!

  • 途中までいい感じの小説なんだけど、だんだん混乱してなんとかして収拾しなければと悪戦苦闘している小説です。
  • テロリストに立ち向かうアメリカ女性国務長官の話。国務長官を経験した筆者だからこその臨場感はさすがだった。
  • あの人やこの人かなと思える人物がつぎつぎと登場してフィクションとは思えないような迫力。手に汗握るシーンもあり、楽しめた。

まとめ