
30年前、アメリカのリゾート地と言われるフロリダ州を旅したことがあります。
引退したセレブが暮らすフロリダは高級リゾート地として知られています。
その街外れに、古びたトレーラーが並んでいました。
案内してくれた知人に聞くと、それはトレーラーハウスといって、
トレーラーを住居にして暮らす人たちが不法に路上を占有している状態なのだそうです。
ほぼ全員が生活保護家庭なのだということでした。
本書のタイトル「ノマド」も車上で暮らしながら日々の糧を求める人たちのノンフィクションです。
日本では、昭和の遺物と言われながらも終身雇用制度が守られていますが、アメリカでは運や実力のない人は容赦無く選別される競争社会。
フリーランスで生きることの本質を本書は数多くのノマド生活者の生活に寄り添いながら描き出します。
衝撃だったのが、アマゾンの物流がいつでも雇い止めできるノマド生活者によって成り立っている事実でした。
アマゾンの存在がキーワードとなって私たちの生活にリンクしたのです。これは対岸の火事ではない。
フリーランスは自己責任と合わせて語られます。
アメリカの実態を見るとそら恐ろしさを感じるのは私だけではないと思いました。
車上生活の辛いところはトイレの確保だ。それ以外は不自由を感じない。
取材したノマド生活者のみなさんが口にする不自由さは、どこかユーモラスにも見えます。
今の生活を受け入れながら生きてのは何故なのでしょうか。
それは開拓の歴史を持つアメリカの風土があるからかもしれません。
「何も持たない」自由は、つまり自然と一体化すること。
ノマド生活者のみなさんが、悲惨な生活水準の中でも陽気に暮らしているところが救いでした。
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