
コロナ禍で人と直接会う機会が極端に減りました。
これを機会にネットで勉強をすることにしました。でもなにか物足りなさが残ります。
そのもやもや感を言葉にしてあらわすと「人と会うこと」の欠乏症なのでしょうか。
のっけから関西人のボケとツッコミの解釈から始まる不思議な本です。
会話にツッコミなど不要。なるほどそうきたか。
本書によると会話に悩む読者層が増えているそうです。その読者層に向けて「会話」をテーマにしたビジネス書を出せばヒットするのではないかと企画されたのがこの本。打算的でわかりやすい目論見が笑いを誘います。
本書のテーマは「会って、話をすること」
それだけで一冊の本になるわけで、それなりのコスパを期待して読み始めるわけです。
ただしこの本、少しクセが強過ぎます。
読み始めると、冒頭の50ページは会話で構成されていて、読み飛ばせば数分という中身の薄さ。「ちょっと待て、これだけかよ、金返せと」かすかな不安感を感じます。
冒頭から展開されるのは著者と編集者のとりとめのない会話。
おじさん同士の会話に、だれが興味あるのかと本書自ら宣言してしまう脱力感。
これだけで三分の一近くの紙数が費やされます。
・・・
と感じ始めたあたりまで読み進めると、やにわに話は急展開。
これまでの雑談が、実は周到に計画された著者のたくらみであることに気づかされます。
映画でも言えるのですが、それは制作者にとっては計算づく。前半冗長な作品は中盤を過ぎたあたりから徐々に加速をはじめ、驚きの展開を見せるケースがよくあります。「パラサイト 半地下の家族」や「映画大好きポンポさん」
中盤を過ぎたあたりから、「会って、話すこと」の持つ本質的な意義が徐々に見え始めます。
学校で学んだことはなんの役に立つのか?
答えは、人と会話するときのためにある。
人は、意見を述べても賢くならない。人の意見に意見をのべても賢くならない。
つまり、会って、話すこととは、人と対話する時の自分の姿勢のことだったのです。
著者はコピーライター・CMプランナーで「読みたいことを、書けばいい」の著者の田中泰延さん。本誌の編集者と会話をキャッチボールするように会話形式という構成を保ちながら、人が会って話をすることの本質を、実にわかりやすく腹落ちする味わいで考えさせてれます。
ネット上の対話の主役は情報です。往往にして余分な成分は省かれます。
私たちが求めているのは、マインドや自分の機嫌の良さ、距離感の取り方、面白い会話のベースなど、本質的なことだったことが読み進むうちに見えてくるのです。
自分のことは話さなくていい。相手のことも聞き出さなくていい。ただ、お互いの「外」にあるものに目線を合わせられれば、誰とだって会話は続くし、楽しくなる。
コロナ禍で失われてしまった日常を取り戻し、幸せな人間関係を築くための技術と考え方を伝える本。ダイヤモンド社が提供する味わい深いビジネス書です。
会話とは仮説の提示です。
・話者が現実に対してボケという仮説を提示する。
・他者は、そのボケをいったん認定し、別の事象を提示する。
・両者がその法則性を発見し、他の事象へ演繹する。
・さらにもう一度全体に帰納する。
・すると現実世界の見え方が変わり、新しい認識が生まれる。
「会話とは「仮説の提示」からはじまる演繹と帰納」
コロナ禍で失われた宝物とはなんだったのか。
楽しく読めて、気づきに出会う納得のビジネス書でした。
自分のことは話さなくていい。相手のことも聞き出さなくていい。
ただ、お互いの「外」にあるものに目線を合わせられれば、誰とだって会話は続くし、楽しくなる。
2020年から非日常になってしまった「会って、話す」を問い直し、幸せな人間関係を築くための技術と考え方を伝えます。
【新刊】このミステリーがすごい !2022選考対象作品リスト《国内編》 | 気持ちのスイッチ
