
ミステリーの楽しみは時間を忘れて謎解きを楽しむ愉悦の時間が手に入ることです。
でも、「読み終わってそれまで」というのも考えてみれはぜもったいない話。
没入感と爽快感だけでなく、後に残る何かも欲しい人には
辻村深月さんの作品をお勧めします。
「被害者だと思っていた子どもたちを、いつまでもその頃の立場のままで留めていた。それは〈ミライの学校〉という組織の中に彼女たちを閉じ込め、時を止めて、思い出を結晶化していたのと同じことだ。 琥珀に封じ込められた、昆虫の化石のように。時が流れ続けていることを、理解しているつもりでいて、本当はまるでわかっていなかった」
最新刊「琥珀の夏」の舞台はカルトがかった集団施設で起きた事件が舞台。
謎解きという縦軸に加え、社会性という横軸が幾重にも編み込まれた読み応えのある作品です。
子育て・教育問題という現代的な問題に加え、親子関係のあり方や正義とは何かという普遍的なテーマまで私たちの価値観を容赦なくえぐってくる読後感に心が震えます。
人にはそれぞれ、土足で踏み込んではならない場所がある。
子どもと大人は地続きだ。そんな当たり前のことに気がつかなかった。
幼なじみとは過去の亡霊なのかもしれない。
かつてカルトと批判された〈ミライの学校〉。その団体施設跡地で女児の白骨遺体が発見された。弁護士となった法子に小学生の頃に参加した〈ミライの学校〉の夏合宿の記憶が蘇る。そこには、自主性を育てるために親と離れて共同生活を送る子どもたちがいた。
学校ではうまくやれない法子。その合宿でノリ子は「ずっと友達」と言ってくれるミカちゃんに出会えたのだった。
もしかして、あの白骨遺体はミカちゃんでは。
大人のズルさ、子どもの素直さ。
法廷によみがえる罪とは。
【新刊】このミステリーがすごい !2022選考対象作品リスト《国内編》 | 気持ちのスイッチ
