──事件は、本の中にあります。
いやぁ、今月も来ましたね。国内ミステリーの新刊ラッシュ。
もう本屋の平積みを見るだけで、心拍数が3割増しになる季節ですよ。ページをめくるたびに、あの「え? え? そう来る?」っていうゾクゾクが待ってるやつ。
今回は、2025年7月に刊行された、注目の国内ミステリーをご紹介します。
- 2025年7月の新刊!注目の 国内ミステリー 29選
- 『ニュースが消える日』堂場瞬一(7/30)
- 『粒と棘』新野剛志(7/30)
- 『コージーボーイズ、あるいは四度ドアを開く』笛吹太郎(7/30)
- 『ダークネス』桐野夏生(7/30)
- 『マスカレード・ライフ』東野圭吾(7/30)
- 『ダブル・ミステリ』芦辺拓(7/30)
- 『美しすぎた薔薇』くわがきあゆ(7/29)
- 『ライアーハウスの殺人』織守きょうや(7/25)
- 『赤ずきん、イソップ童話で死体と出会う。』青柳碧人 (7/25)
- 『アミュレット・ワンダーランド』方丈貴恵 (7/24)
- 『18マイルの境界線 法医昆虫学捜査官』川瀬七緒(7/24)
- 『正しい世界の壊しかた』彩藤アザミ(7/16)
- 『アンサクリファイス 警視庁監察特捜班 堂安誠人』長沢樹 (7/10)
- 『恋する殺人者』倉知淳(7/10)
- 『8番出口』川村元気(7/9)
- 『盗んで食べて吐いても』桜井美奈(7/9)
- 『建築士探偵 神迎圭の事件簿』桜川ヒロ(7/4)
- 『青の純度』篠田節子(7/2)
- 『神都の証人』大門 剛明(7/2)
- 『谷根千ミステリ散歩 密室の中に猫がいる』東川篤哉(7/2)
- 『三毒狩り』 東山彰良
- 『13月のカレンダー』 宇佐美まこと
- 『蛍たちの祈り』 町田そのこ
- 『エレガンス』 石川智健
- 『7人の7年の恋とガチャ』大前 粟生
- 『南海王国記』飯嶋和一
- 『共謀捜査I 桜は闇に咲く』河合莞爾
- 『K 時代の恋人』前川裕
- 『全能のカミナ』喜多喜久
- まとめ
2025年7月の新刊!注目の 国内ミステリー 29選
『ニュースが消える日』堂場瞬一(7/30)
「俺たちは、面白いから記事を書くわけじゃないですよ。伝える必要があるから記事にするんです」 大手全国紙の整理記者を辞め、実家の印刷所が発行する「地域紙」編集長になった戸倉大介。 部数1万部、編集部員3人、週3回発行、全4ページ。人口25万人の平和な地方都市に事件は少なく、行政発表や街ネタが中心の、刺激に乏しい紙面だ。 そんな中、SNSを駆使する若き市長が自宅前で何者かに襲撃された。これはテロか? その事件が、戸倉の記者魂に火を付けた。 人手も拡散力も速報性もない。それでも、地元で起きたこの事件の真相を誰よりも深く、正確に報道してやる。 裏を取れないことは書かない。特定の人物の主張だけで記事にしない。引用だけのこたつ記事は載せない。 元新聞記者の著者が報道の矜持を問う長編小説
これはね、「報道の矜持」というやつを正面からぶん殴ってくる作品です。
元・大手紙の記者が、部数1万部の地域紙編集長になり、平穏な街で市長襲撃事件に挑む。
「裏を取れないことは書かない」
これ、簡単そうでめちゃくちゃ難しい。SNS時代、早い者勝ちの情報戦で、この信念を貫ける人がどれだけいるか。
あるシーンでは、犯人像を特定できる手がかりを掴むんですが、「確証がない」という理由で紙面に載せない。その瞬間、胸がギュッとなります。だって、自分なら出しちゃうかもしれないから。
『粒と棘』新野剛志(7/30)
戦後、東京。 暗闇の底に灯る一瞬の生の輝き。 占領と復興の十年、名もなき人々の 人生と犯罪を描破する珠玉の六編。 ある男は、上海から空輸されたダイヤモンドの行方をめぐって追手から逃げる――飛行士として空を駆けた日々に思いを馳せながら。 ある少年は、みずからと似た境遇の浮浪児を集めて地方の農家に身売りする――それが彼らにとっての幸福に違いないと信じながら。 ある女は、紙芝居の出版社で働く傍ら許婚とともに義兄の帰りを待ち続ける――父のいなくなったこの国で自由とは何か悩みながら。 一九四五年、第二次世界大戦の終結とともに被占領国となった日本の状況は一変した。あらゆるものを失い、時に犯罪に手を染めてもなお、生きるために人々はもがく。惨めにも、時に気高く。占領と復興の十年を駆け抜けた名もなき人々の生を描破する珠玉の六編。
戦後の東京を舞台にした6つの短編。
ダイヤを抱えて逃げる元飛行士、浮浪児を農家に売る少年、義兄を待ち続ける女…。
ここに描かれるのは、教科書じゃ分からない戦後の顔です。
ある短編で、少年が浮浪児を「売る」場面があります。非道に見える行為だけど、少年はそれが「救い」だと信じている。このねじれた正義感が、読み手を容赦なく揺さぶります。
『コージーボーイズ、あるいは四度ドアを開く』笛吹太郎(7/30)
父のデビュー作の初版本はどこに? スナックのママさんの予知能力は本物なのか? 夜な夜なリコーダーでゲーム音楽を吹き鳴らす怪人の正体は? 無意識に食べたクッキーにはどのキャラクターが描かれていた? そして、またしても居酒屋が消えた!? ミステリ談義の集まりにひとりゲストをお呼びして、毎回カフェでゆるゆると行う推理合戦。それなりにみんながんばるのだけど、謎を解き明かすのは決まって店長の茶畑さんなのだった。期待の新鋭が贈るほがらかなミステリ・シリーズ、お待たせしました第二弾です。
ミステリって、殺人ばっかじゃないんですよ。
このシリーズはゆるっとコーヒーを啜りながら読むやつ。ミステリ談義のカフェ会で、なぜかいつも店長だけが正解にたどり着くんですよ。
中でも「居酒屋が消えた!?」という話が最高。地図にもネットにも痕跡がない居酒屋って何?ってなるんですが、そのオチがまた絶妙。
『ダークネス』桐野夏生(7/30)
見届けよ、ミロの最後の闘いを。桐野夏生の傑作ノワール・エンタメ最終幕! 私の愛した男たちは皆行ってしまった。私の魂を受け止めてくれる相手はもうどこにもいないーー衝撃作『ダーク』から20年、村野ミロは生きていた。そして息子のハルオは「悪」を知る旅に出るが……。息子を守るため、凍る火の玉、ミロの最後の闘いが始まる。圧倒的迫力で描く、著者渾身のエンタテインメントの結末は。
はい、来ました。『ダーク』から20年、ミロの最後の闘い。
息子を守るため、彼女は再び「凍る火の玉」になる。
あるシーンで、ミロが息子に向かって「悪を知れ」と言うんですよ。これ、普通の親なら絶対言わない言葉。でも、ミロの生き方を知っていると、その一言がズシンとくる。
『マスカレード・ライフ』東野圭吾(7/30)
ホテル・コルテシア東京で開催されることになった、『日本推理小説新人賞』の選考会。 当日、文学賞受賞の候補者として、ある死体遺棄事件の重要参考人が会場に現れる!? 警視庁を辞め、コルテシア東京の保安課長となった新田浩介が、 お客様の安全確保を第一に、新たな活躍をみせる最新作。 シリーズ絶好調、累計550万部突破!
シリーズ累計550万部の「マスカレード」最新作。
ホテル・コルテシア東京で文学賞の選考会…なのに、そこに死体遺棄事件の重要参考人が来るんですよ。まるで、ホテルそのものが仕掛けた謎解きみたい。
新田浩介の「お客様第一」がどんな形で試されるのか。終盤、会場がざわめくシーンは、頭の中で映画のように再生されます。
累計550万部突破の人気に加え、安定の完成度。これは確実にこのミス2026の上位候補でしょう。
『ダブル・ミステリ』芦辺拓(7/30)
二つの物語が前と後ろ、両方から始まります。 閉鎖空間での殺人を推理する本格ミステリ& 不気味な悪意をジャーナリストが追うサスペンス 驚愕の真相は中央の「解決篇」で! 名探偵が陸の孤島と化したホテルで遭遇した殺人を解き明かす王道の犯人当て「月琴亭の殺人」。元恋人の死をきっかけに、殺人とも事故ともつかない不気味な事件の連鎖に気がついたジャーナリストの捜査行を描くサスペンス「ノンシリアル・キラー」。前者は縦書きの右綴じ、後者は横書きの左綴じ。あなたは前から読みますか? それとも後ろから読みますか?–二つの中編を繋ぐのは驚愕の「解決篇」。読む順番で事件の見え方ががらりと変わります。
「前から読むか、後ろから読むか」っていう本。
閉鎖空間の本格ミステリと、悪意を追うサスペンス、中央の「解決篇」で繋がる構造が面白すぎます。
読む順番で真相の見え方が変わるので、1冊で2度おいしい。いや、正確には3度ですね。
『美しすぎた薔薇』くわがきあゆ(7/29)
竜守令祥(たつもりれいしょう)は、転職先の2歳年上のSE工藤三鷹(くどうみたか)に会った瞬間、憧れを抱く。彼と同じになりたいという思いは日々募り、服装、髪型、発言、行動に至るまで全てを真似ていく令祥。過激なストーカー行為は、ついに殺人事件へと繫がる──東斜岡(ひがしはすおか)署の若手刑事・静川涼吾(しずがわりょうご)が初めて取調べに立ち会う事件は、意外な展開への序章に過ぎなかった。捜査を進めるなか、「この男」の人生を取り巻く数々の執着が浮かび上がる。──愛が狂気へと変貌する、人間の「闇」に迫る。息をもつかせぬ衝撃のサスペンス。
最初はただの憧れだったんです。
それが、服も、髪も、言葉遣いも全部真似るようになって…ついには殺人事件へ。
令祥が鏡の前で、工藤と同じ髪型を必死で作るシーン。あれ、怖いんですよ。微笑みながらも、目がどこか空っぽで。
ストーカーの心理をこんなに生々しく描かれると、「もし自分が対象になったら…」と背筋が冷えます。
『ライアーハウスの殺人』織守きょうや(7/25)
孤島に聳え立つ来鴉館で 嘘つきたちの饗宴が始まる お嬢様・彩莉は転がり込んできた莫大な遺産で孤島にギミックつきの館を建設し、かつて自分の書いた小説を馬鹿にした相手を殺害しようと企てる。 「おまえらがバカにした私の考えたトリックで死ね」 嵐の気配が近づく中、ターゲットのミステリ愛好者たち(ショーゴ、詩音)、医療関係者(みくに)、刑事(矢頭)、霊能者(真波)、嘘で雇われたメイド(アリカ)が館に集められ、金にものを言わせた自前のクローズドサークルが完成。有能メイド・葵の鬼のダメ出しの末、綿密に練られた復讐劇は、成功間違いなしと思われた。しかし、一夜明けると、彩莉が殺した覚えのない死体が転がっていた……。 二度読み必至。空前絶後の超本格ミステリ!!
これはもう、「トリックで殺す」という究極のミステリー愛。
お嬢様・彩莉が自分の小説に書いたトリックを、リアルで実行しようとする。しかも嵐の孤島で。
計画の全貌がメイドの葵によってダメ出しされる場面は笑えるんですが、その後の予想外の死体で笑いは一瞬で凍ります。
二度読み必至ってのは、本当です。
『赤ずきん、イソップ童話で死体と出会う。』青柳碧人 (7/25)
世界のいろいろな国で事件を解決してきた赤ずきん。そんな「赤ずきんシリーズ」の第4弾が登場! 今作では「うさぎとかめ」「オオカミ少年」「アリとキリギリス」といった教訓話で知られるイソップ童話の世界で事件が起き、赤ずきんはこれまで同様死体と出会います。シリーズ史上最高の伏線回収にも注目です。
童話の世界に死体って…発想がもう反則。
「うさぎとかめ」や「オオカミ少年」の世界観でミステリーが展開するんですが、子どもの頃の記憶と絡むから、余計に不気味なんです。
特に、「アリとキリギリス」での事件。冬の寒さと死体の冷たさがリンクして、ページをめくる指まで冷えてくる感覚があります。
『アミュレット・ワンダーランド』方丈貴恵 (7/24)
噂の犯罪者御用達ホテル、それがアミュレット・ホテルだ。2つのルールさえ守れば、どんな違法なサービスも受けられるし、警察の介入も一切ない。しかし、そのルールが破られたときはホテル探偵が犯人を追い詰める! ホテルの部屋で生配信中に殺されたShinTuber、バーの落とし物を巡る奪い合い、バトル・ロワイヤルが開催される殺し屋コンペ、爆弾魔ボマーとの対決…前作より大きくスケールアップしたエンタメ度MAX本格ミステリ。
犯罪者御用達ホテルっていう設定だけでワクワクしますが、そのルール違反から始まる事件が、もうカオス。
ホテルのバーで落とし物を巡る小競り合いが、気づけば命の奪い合いになっている。
あの閉ざされた空間での緊張感は、読んでいるこちらまで息苦しくなります。
『18マイルの境界線 法医昆虫学捜査官』川瀬七緒(7/24)
「私は犯人を逃がすつもりはないよ。今回も虫たちの協力体制はばっちりだから」 事件現場の昆虫相から真相を導き出す奇才法医昆虫学者、赤堀涼子。待望のシリーズ最新作! 高級会員制ゴルフ場の雑木林で発見された女性の遺棄死体。 歯を抜かれ、髪を刈られ、顔面や指紋など身元特定に繋がる箇所は全て完膚なきまでに損壊されていた。 ここまで残忍な犯行に及ぶ犯人像とは? 動機は? 三日後、同様に損壊された女性の遺体が、他県の解体スクラップヤード敷地内で発見された。 手口から同一犯であることは間違いない。しかし発見場所は20キロ以上離れており、関係者にも繋がりは見出せない。 遺体から発見された昆虫相が意味するものは……? 例外なく秩序立った行動を取る虫たちが、人間には見えないミッシングリンクを炙り出す。
死体と虫って聞くと、正直ちょっと引きますよね。
でも、赤堀涼子の推理は「虫の声を聞く」ような繊細さがあるんです。
雑木林で発見された遺体から採取した昆虫相が、犯行時刻をぴたりと示すシーンは、知的興奮が爆発します。
虫、恐るべし。
『正しい世界の壊しかた』彩藤アザミ(7/16)
優しい世界が壊れ始め、世界は何度も、ひっくり返るーー衝撃のミステリ。いばらに囲まれた小さな村で幸福に暮らす未明。だが「いばらの外に出てはならない」という村の決まりを破り、瀕死の少年を介抱したことから全ては崩れ始める。村の優しき指導者が何者かに殺害され、人々の疑心暗鬼が頂点に達したとき、さらなる悲劇がーー。犯人は誰なのか。大どんでん返しが待ち受ける、衝撃のミステリ。
村の「優しい世界」が、瀕死の少年ひとりで崩れ始める。
この作品は、優しさが時に残酷になることを教えてくれます。
いばらの外から吹き込む風が、村の空気を少しずつ変えていく描写が巧みで、読みながら心臓がざわつくんですよ。
『アンサクリファイス 警視庁監察特捜班 堂安誠人』長沢樹 (7/10)
双子の兄弟・誠人と賢人は、二人一役を武器に警察内の犯罪を暴く監察の切り札だ。ある日、都内で刑事が自殺し、神奈川ではストーカー殺人が発生。無関係に見えていた事案だが、死亡者は皆、六年前のある事件の関係者だと判明する。しかも捜査線上には、次期外事四課長の名が浮上。公安が目論む陰謀とは? 異色バディが不正を暴く、警察小説。
二人一役を武器に警察内の犯罪を暴く監察官兄弟が主人公って時点で、もう面白い。
彼らが追うのは、警察内部の腐敗と、過去の未解決事件。
入れ替わりの瞬間を目撃した同僚の反応が絶妙で、緊迫感の中にユーモアがある。
でも最後はやっぱり、正義のために全てを賭ける展開に胸が熱くなります。
『恋する殺人者』倉知淳(7/10)
大好きな従姉の転落死に不審を抱く大学生・高文は、彼に片思いするフリーター女子・来宮を“助手〞に真相を探っていく。大型猫科肉食獣を思わせる担当刑事・鷲津にあしらわれながら“捜査”を進める高文だが、彼が協力を依頼した人が次々と殺されていく。何がどうなっているのかーー?“読書”の快楽が存分に味わえる、これぞ本格ミステリ。
大学生の高文が、大好きな従姉の死の真相を追う。助手役は、彼に片思いする来宮。
二人のやりとりはほのぼのしてるんですが、協力を頼んだ人が次々死ぬあたりから、空気が一変します。
最後の真相にたどり着いたとき、来宮の表情が忘れられません。
『8番出口』川村元気(7/9)
全世界で社会現象になった無限ループゲーム「8番出口」が書き下ろし小説として登場!
あの有名ゲームが小説化。
「出口にたどり着けない」というシンプルなループが、文章になると想像以上に不安を煽ります。
同じ廊下を何度も歩く描写が少しずつ変わっていくのが怖すぎて、ページを戻して確認したくなります。
『盗んで食べて吐いても』桜井美奈(7/9)
どうかあなたに、希望の光がさしますように 「太ったら、食べちゃダメなの」。幼いころに聞いた母の言葉をずっと忘れられないでいる早織。 早織は小学校6年生ごろから体重が増えはじめ、体型を何よりも重視する母は彼女の食事量を厳しく制限した。お菓子はダメ、お代わりはダメ。でも、もっと食べたい、もっと痩せたい。 早織は食べて吐くを繰り返すようになり、吐くための食料を手に入れるため、食べ物を万引きするようになってしまう。結婚をして夫と娘と仲良く暮らしながらも、彼女は万引きをやめられないでいた。 そんなある日、早織は妹からの電話を受ける。それはずっと避けていた母の命が、もう長くないと告げるものだったーー。 母の呪縛。痩せたいという願い。間違いだとは分かっているのに、今日も彼女は正解を選べない。 既刊続々実写ドラマ化、『殺した夫が帰ってきました』『塀の中の美容室』で大注目の著者が描く新境地の傑作小説。
これはミステリーというより、人間の心のミステリー。
母の呪縛、摂食障害、万引き。重いテーマなのに、主人公の視点があまりにリアルで、逃げられなくなります。
妹からの「母がもう長くない」という電話のシーン、心臓を直接握られたような感覚になります。
『建築士探偵 神迎圭の事件簿』桜川ヒロ(7/4)
不祥事を起こし捜査一課から捜査0課という雑用部署に異動になった雛(ひな)。 捜査一課に戻るために実績を作ることを決意した雛のもとにさっそく事件が舞い込む。 それは美術館で起きた密室殺人事件。 密室の謎を解明するため美術館を設計した建築家を訪ねると建築学科の学生・圭(けい)を紹介される。 捜査一課に戻りたい雛と学科単位がほしい圭が手を組み密室事件の謎に挑む建築ミステリ!
美術館の密室殺人を、建築の知識で解く。
圭の「この壁の厚み、おかしくないですか?」という一言から、一気に展開が動くのが爽快。
建築って、ミステリーの舞台装置としてこんなに面白いのか…と感心します。
『青の純度』篠田節子(7/2)
その「青さ」は、本物かーー? 最年少で管理職となり、仕事一筋で駆け抜けてきた編集者・有沢真由子。 五十歳の誕生日を迎え、つかの間の息抜きに訪れたリゾートホテルで、彼女は一枚の絵画と出会う。 ジャンピエール・ヴァレーズーーバブルの時代に煌びやかな海中画で大衆の心を掴み、一方で当時悪質商法が話題にもなった、“終わった画家”。 かつて鼻で笑っていた彼の絵に、不覚にも安らぎを覚えた真由子だったが、ほどなくして都内の外資系ホテルでヴァレーズの原画展が行われるという情報を得る。 なぜ今再び、ヴァレーズなのか? かつての熱狂的ブームの正体とは? 違和感を手繰り、真由子は単身ハワイの地を目指すーー。 煌びやかな「バブル絵画」の裏に潜んだ底知れぬ闇に迫る、 渾身のアート×ミステリー大長編!
バブル期に人気だった画家の絵が、なぜ今になって再評価されるのか。
ハワイへ飛んだ編集者の目線で、アートの光と影が描かれます。
青い海を描いた絵の前に立った主人公の、短い息づかいまで伝わる文章が印象的です。
『神都の証人』大門 剛明(7/2)
ここにもある袴田事件、免田事件、財田川事件、足利事件の理不尽。 生きるということは、かくも哀しく美しいものか。照らし出される司法の闇、冤罪の虚構、人間の絆。作家の才能に嫉妬する。-堀川惠子(ノンフィクション作家・代表作『教誨師』) 突然、父親を奪われた少女に救いは訪れるのか? 事件の謎は戦前から令和まで引き継がれ、慟哭の結末は我々に生きる意味さえ問いかける、前代未聞かつ究極の「冤罪」ミステリー。
冤罪事件を戦前から令和まで追う、骨太な社会派ミステリー。
「真実」を求める少女の人生が、数十年の時を超えて描かれます。
証言台に立つクライマックスは、ページをめくる手が震えるレベル。
読み終わった後、しばらく動けなくなります。
『谷根千ミステリ散歩 密室の中に猫がいる』東川篤哉(7/2)
下町情緒あふれる谷根千の路地裏にある、隠れ家的雑貨屋「怪運堂」。 店主の探偵の素質に気付いた岩篠つみれが難事件を持ち込むと、竹田津は猫をかまったり寄り道ばかりしながらも、鮮やかに謎を解き明かしていく!
下町の路地裏と猫と密室。もうそれだけで温かいのに、事件はきっちりミステリーしてます。
猫を撫でながら推理を進める探偵の姿が、何とも人間くさい。
ラストで猫が何気なく動いた瞬間、密室の謎が解けるのが最高です。
『三毒狩り』 東山彰良
冒頭から胸を打ち抜かれました。捨て子として育った少年・雨龍の物語なんですが、舞台は毛沢東が支配する激動の中国。
村に赴任してくる共産党の青年幹部・田冲が、養父と浅からぬ因縁を持っていると分かるシーン。あの場面の「いつ爆発するか分からない緊張感」は、ページをめくる指が止まらない。
雨龍を取り巻くのは養父母に姉、そして愛犬まで、みんな血肉の通ったキャラクターでとにかく強い。泣けて笑えて、どこか懐かしさも漂う。まさに「エンタメ巨編」という言葉がぴったりです。
『13月のカレンダー』 宇佐美まこと
松山の古い家で見つかった「13月まであるカレンダー」と、祖母の手記に記された「十三月はあったのよ」という一文。これだけで鳥肌が立ちました。
そこに重なるのが、広島原発事故の悲惨さを描くパート。数万人が一瞬で命を奪われ、その後も数十万単位の犠牲者が出たという現実感。
物語はフィクションなのに、背筋が凍るほどのリアリティ。最後にたどり着く結末は、心を激しく揺さぶります。
『蛍たちの祈り』 町田そのこ
虐げられる子どもたちの声を描いた連作短編。読んでいて胸が痛い。毒親の描写があまりに生々しくて、正直ページを閉じたくなる瞬間もありました。
けれど、幸恵と隆之が15年ぶりに再会するシーンで、涙がこみあげてきました。絶望の中にも光がある。人と人が再び繋がる瞬間の尊さ。
物語全体は希望と絶望が交互に押し寄せる波のようで、読後にしばらく動けなくなるほどの余韻を残しました。
『エレガンス』 石川智健
東京大空襲の最中に洋装の女性たちが次々と不審死を遂げる――そんな状況でも刑事は事件を追う。
「どうせ空襲で死ぬのに、なぜ殺人を追うのか?」という問いが突き刺さります。釣鐘草のドレスをまとった死体の描写は、戦火の赤と重なって強烈に脳裏に焼きつきました。
ただの戦争小説じゃなくて、そこに人間の気高さと、どうしようもない生の衝動が描かれている。圧倒されました。
『7人の7年の恋とガチャ』大前 粟生
もうタイトルからしてクセがすごい(笑)。「恋」と「ガチャ」、この二つを組み合わせて小説にするって誰が想像しました? 大前さんの作品は常に“現代を生きる僕ら”のリアルをすくい取るんですが、今回はそれがミステリーに接続してくる。偶然か必然か分からない“ガチャの当たり外れ”が人生や恋に絡んでいく構造、めっちゃ新鮮でした。実験的だけど、妙に心に残るんですよね。
『南海王国記』飯嶋和一
もうね、スケールが違う! 歴史と冒険と叙事詩がミックスされた作品なんですが、とにかく文章が力強い。南海の島々に広がる王国の興亡を描きながら、その中で人間がどう生き、どう裏切り、どう夢を見るかを追っていく。飯嶋和一の“文学としての重厚さ”がミステリー読者にも刺さるかは未知数ですが、間違いなく2025年の大作のひとつ。
『共謀捜査I 桜は闇に咲く』河合莞爾
新シリーズの幕開け! 警視庁生活安全部って舞台設定がもう渋い。組織犯罪の闇や警察内部の思惑を描きつつ、主人公・真白春花のキャラクターがしっかり立ってるんです。社会派的な視点もあるし、エンタメ性もちゃんとある。シリーズ化前提の一作目としても上出来で、今後の展開が楽しみすぎる。
『K 時代の恋人』前川裕
タイトルからしてちょっと不穏でロマンチック。実際、中身は“時代を愛した人間たち”の群像劇でありながら、そこにミステリー的な仕掛けが潜んでるんです。人と人の関わり、時代の流れ、そして恋。単なる恋愛小説じゃなくて、時代そのものが“恋人”として立ち現れる感覚。じわじわ来るタイプの作品。
『全能のカミナ』喜多喜久
来ましたね、科学サスペンスの快作。今回のテーマは“全能”。科学の力で神の領域に踏み込むとき、人間は何を失い、何を得るのか。テンポの良さとエンタメ力は相変わらずで、映画化しても絶対映えるやつ。王道サイエンス・スリラーの魅力全開。
まとめ
いやもう、7月は本当に当たり月ですよ。
戦後の闇、市井の温もり、ホテルの緊張感、孤島の血の匂い…ページをめくるたび、違う匂いが漂ってくる。
「夏はホラー」と言いますけど、ミステリーも負けてません。
事件の冷たさと、人間の熱さ。どちらも浴びると、今年の夏はもっと忘れられないものになりますよ。

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