久しぶりに書店を覗いたら、海外ミステリーの書架の顔ぶれが入れ替わっていました。
「あんたを殺したかった」ペトロニーユ・ロスタニャ
男を殺し、死体を焼いたと言って若い女が出頭してきた。
レイプされそうになり、反撃したという。
ヴェルサイユ警察のドゥギール警視は“被疑者”ローラの自白に従い
捜査を開始するが、死体はおろか犯罪の形跡すら見つからない。
正当防衛か、冷酷な計画殺人か?
手がかりは全て教えた─ローラはそう言って黙秘するが、
別の被害者を示唆する証拠が新たに発見され……。コニャック・ミステリー大賞受賞作!
- さすがフランス、なんともいえない(本場の?)イヤミス。最後の一行まで目がはなせなかった。
- フランスの<司法制度>を知るいい機会になり得る警察小説としてサクサクと読み進めることができます。
「キングの身代金」エド・マクベイン
アメリカの大都市アイソラで、大会社重役ダグラス・キングの運転手の息子が誘拐された。犯人はキングの子と間違えたのだ。身代金を払えばキングは破産。しかし人道的には……一方、アイソラ市警87分署のキャレラ刑事らは犯人との交渉のためキング邸に赴くが、主人が非協力的で捜査は難航。まもなく身代金の受け渡し時刻が迫る――。
- メインのプロットは知ってたし、オーバーアクティングに感じられるキャラクターとかレトリックが鼻についたりするけどさすがのおもしろさだった。
- アイディアは面白いのだが、中心人物が周り全員から「人殺し」呼ばわりされるのはともかくキャレラが同意するのは「え?」殺すのは犯人でしょうに。
「狂った宴」ロス・トーマス
辣腕の選挙コンサルタントとして鳴らしたシャルテルは、大手広告代理店DDT広報部のアップショーとともに、英連邦から独立間近のアフリカの小国アルバーティア初の国家元首選挙に駆り出される。資源に恵まれながらも腐敗にまみれたこの国で、DDTに有益な人物を当選させるために、二人は汚い手段を駆使してでも選挙キャンペーンを成功させようとする。だが、やがて事態は混乱をきたし、彼らにすら手に負えない様相を呈してくる――。
- 地政学的背景はよく分からないが、西洋の影響力が薄れたアフリカ小国の政治にとって重要な候補者を選ぶ場にアメリカといった資本国家が裏から手を引いている構図が見えてくる。
- 選挙戦は混沌たる様相を呈する。本作を読んでフォーサイスの「戦争の犬たち」やコンラッドの「闇の奥」も想起したが、本作はエンタメとして読むのが吉。
「極夜の灰」サイモン・モックラー
1967年末。ある火災の調査のため、精神科医のジャックは、顔と両手に重度の火傷を負い、記憶を失ったコナーという男と向かいあっていた。北極圏にある極秘基地の発電室で出火し、隊員2名が死亡。彼は唯一の生存者だという。火災現場の遺体は、一方は人間の形を残していたが、もう一方は灰と骨と歯の塊だった。なぜ遺体の状態に差が出たのか? 謎と陰謀が渦巻くミステリ長編!
- 真相にはなかなかたどり着かない。だがベールが剥がされるにつれ、確かに伏線はあったと気付かされる。一気読みおすすめの作品。
「殺人は夕礼拝の前に」リチャード・コールズ
英国の田舎町チャンプトンの司祭ダニエルは悩んでいた。教会のトイレ設置をめぐって住民が真っ二つに割れてしまったのだ。そんななか裕福な地元の名士が夜の教会で殺された。住民をまとめあげ、犯人を突き止めるには司祭が適任だ。狡猾な犯人にダニエルが挑む
- 英国の田舎の村。噂が好きな村の人。古い地主の家と、海外ミステリー好きな人にはたまらない要素がてんこもり。
- ベースにはやはりクリスティーが垣間見えますね。(時にル・カレが見えたりもします(笑)。
「終着点」エヴァ・ドーラン
ここはロンドンの集合住宅の一室。女性がひとり。死体がひとつ。見知らぬ男に襲われ、身を守ろうとして殺してしまったと女性は語る。死体は名も明かされぬまま、古びたエレベーターシャフトに隠された……謎に満ちた事件が冒頭で描かれたのち、過去へ遡(さかのぼ)る章と未来へ進む章が交互し、物語はその「始まり」と「終わり」に向けて疾走する! 英国ミステリ界の俊英が放つ衝撃的傑作。
- 登場人物一覧表がない! でも最後まで読むと、この判断には納得。カタカナの名前が苦手の人も、登場人物は多くないのでたぶん大丈夫です。
- 後半は一気読みですね。特に良かったのはキャラクターの造形かな。
- 騙された。久しぶりに騙された。こんなオチが待っていたとは…何と言うか まあこういう結末にするしかないと思わせる終わり方。
「雪山書店と嘘つきな死体」アン・クレア
故郷の雪山に帰ってきたエリーは、姉と看板猫とともにミステリ好きの集う書店、ブック・シャレーを切り盛りしていた。ある日、山腹と麓をつなぐゴンドラ内で男の刺殺体が発見される。男は直前に書店を訪れ、クリスティ『春にして君を離れ』の初版本を残しており、時を同じくして店からは従業員の女性が姿を消した。ふたつの事件には関係が? エリーは推理を働かせることに……謎と雪が降り積もる書店から贈る、新ミステリシリーズ!
- 登場人物たちの思惑が交差してコージーミステリのフーダニットなかなか楽しめた。
- 途中で誰が誰なのか分からなくなり、何度も登場人物紹介ページに戻って確認するのは海外ミステリーあるあるだと思う。
「動物城2333」荷午,王 小和
動物は人間と並ぶ知能を得て独立を試みるが、人間はそれを受け入れずに戦争を起こした。
長く続いた戦闘の後、西暦2333年、動物と人間との間は冷戦状態にある。
動物王国の首都・動物城一番の探偵・ブレーメンのもとに、ワニのネロ将軍がやって来た。
人類から派遣された大使が殺害されたという。
いち早く真犯人を見つけ、正しい手はずで公表しなければ、新たな戦争につながりかねない。
ブレーメンはカエルのアグアとともに不可解な事件の調査に乗り出す。
- 最初は動物が探偵ということで、ちょっとアホくさいかな~とか思っていたんですけれど、島田荘司氏の超訳というのもあって、動物というのが気にならなくなってくる。
- 物語はまるでディズニー映画【ズートピア】×【名探偵ホームズ】のような奇想ミステリー。
- 世界観を揺り動かすぶっとんだ設定が待っていて、久々に面白かったトンデモミステリかも?
「副大統領暗殺」リー・チャイルド
放浪中のリーチャーのもとに奇妙な依頼が届いた。
亡兄の恋人であり、シークレットサービスの幹部であるフレイリックから、
暗殺予告が届いた次期アメリカ副大統領を守ってほしい、と。
リーチャーは戦友のニーグリーに協力を仰ぎ、依頼に応じるのだが。
- シリーズの中で最も本格趣味の濃い作品。たっぷりと読ませる。
「ほんとうの名前は教えない」アシュリィ・エルストン
生きるために、他人になりすまして“仕事”をしてきた“わたし”。今回はエヴィという女の経歴を使って、ある男の裏稼業を調査しつづけている。だが突然、驚愕の事態に。パーティで会った女性が、自分そっくりの外見で、自分の本名を名乗り、自分自身が経験した出来事を語ってきたのだ。“わたし”になりすましている彼女は何者なのか? 目的は?
- 最近読んだ海外作品の中で一番おもしろかった!ハラハラしたし、ラストもすごくよかった。
- 面白そう、と思ったんだけど。正直、残念。組織のスケール感がちぐはぐ。デカいんだか、小さいんだかよくわからない。
まとめ
最新の海外ミステリー小説10冊を紹介しました。謎解きやサスペンスなどジャンルは豊富で、ミステリーが好きな人にとって、新しい本との出会いを楽しめる内容です。詳細は実際に手に取ってご確認くださいね。
こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 海外ミステリー を書きます。※本ページにはPRが含まれます