エイレングラフ弁護士の事件簿 レビュー:悪徳弁護士が仕掛けるダークなミステリー

フルタニ

こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 今日は、ミステリー好きな皆さんにピッタリな一冊をご紹介します。その名も 『 エイレングラフ弁護士の事件簿 』(ローレンス・ブロック著)。※本ページにはPRが含まれます

ローレンス・ブロックといえば、「マット・スカダー」シリーズでおなじみの犯罪小説の巨匠ですよね。その彼が手がけた異色の法廷ミステリーが、この作品。

法廷ミステリーと聞いて、あなたはどんな展開を想像しますか?正義のために戦う弁護士?依頼人の無実を信じて全力で弁護?残念ながら、エイレングラフはそんな正義の味方じゃありません!

彼は、自分のルールに従い「勝つため」にすべてを操る、まさに「悪党弁護士」。

早速、詳しく見ていきましょう。

「 エイレングラフ弁護士の事件簿 」レビュー:悪徳弁護士が仕掛けるダークなミステリー

🎩 エイレングラフとは何者か?

洒落たスーツをまとい、抜け目ない交渉術を駆使するエイレングラフは、ニューヨークの法曹界で知られる敏腕弁護士。彼の仕事のルールは簡潔明瞭:

1. 無罪を勝ち取れば高額報酬をもらう

2. 有罪になれば一銭も受け取らない

一見すると潔いルールですが、彼の手法は極めてシニカルです。依頼人の無罪を証明するのではなく、「無罪になる状況を作り出す」――これが彼のやり方。法廷での劇的な弁護シーン?そんなものはほぼありません。むしろ彼の物語は、裁判が始まる前に事件が決着するという珍しいスタイルなんです。

📚 偉大なるパターン化:シンプルなのに飽きない展開

『エイレングラフ弁護士の事件簿』は全12編の短編から構成されています。それぞれの物語は「依頼 → 解決 → 報酬交渉」という同じ流れで進みます。これ、ある意味ワンパターン。でもその「パターン化」がこの作品の面白さでもあります。

例えば、エイレングラフが手にする案件は毎回ユニークで、依頼人たちの個性も際立っています。そして、事件が解決した後の報酬交渉がもう一つのクライマックス。ここで明かされる依頼人の本性が、またなんともブラックなんです。

読み進めていくうちに、「また同じ展開かな?」と思いきや、最後には必ず予想を裏切られる。これがブロックの凄さ。

😈 エイレングラフの推定:悪党弁護士の真骨頂

エイレンの最大の魅力は「法のグレーゾーン」を駆使するその手腕。

物的証拠があろうと、依頼人が罪を告白していようと、彼にとって重要なのは「真実」ではありません。あくまで結果。依頼人が無罪になるために、手段を選ばず状況を作り出します。

これを作中では「エイレングラフの推定」と呼ぶにふさわしい流儀です。彼のやり方を見ていると、「ここまでやるか!」と思うこと必至。でも、それが読者を夢中にさせる理由なんですよね。

💬 会話中心の語り:酩酊感にハマる!

本作は、ほとんどが会話だけで進む異色の構成。登場人物たちの駆け引きや言葉の応酬が続き、内面描写はほぼ皆無。でもこの語り口が独特のリズムを生み出していて、読んでいると一種の酩酊感を味わえます。

まるで一流の噺家の語りを聞いているような心地よさがあるんです。キャラクターの台詞回しが巧妙で、シンプルな構造なのに何度でも読める魅力があります。

😏 ブラックユーモアが効いたピカレスク作品

「ピカレスク」という言葉をご存知ですか?悪党を主人公にした物語のことですが、この作品ほどピッタリなものはありません。

エイレンの自己中心的な振る舞いに最初は驚きますが、読んでいるうちに不思議と「爽快感」すら覚えます。

例えば、依頼人がエイレンに報酬を渋るシーン。普通なら「正義の味方がクライアントを救う」展開を期待するところ、エイレンは冷徹に取るものは取る。そんな姿が逆に新鮮なんです。

✍️ まとめ

『エイレングラフ弁護士の事件簿』は、法廷ミステリーというよりも、ブラックユーモアたっぷりのキャラクタードラマ。

ブロック作品に馴染みのない方でも、そのシンプルな構成と独特の語り口に一気に引き込まれるはずです。

そして何より、エイレンというキャラクターの魅力!彼の悪党ぶりに一度触れたら、あなたもきっと虜になることでしょう。ぜひ手に取ってみてください!