記憶と物語が受け継がれる「スキマワラシ」

フルタニ
こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。

新聞や雑誌に定期的に掲載されるコミックや小説は評価の定まっていない作品を自分だけで楽しむ醍醐味があります。最後まで一気読みしたい人、ヒット作を読みたい人は単行本になるのを待ちます。一気読みしたい作品「スキマワラシ」をご紹介します。

スキマワラシ

古い物に触れると過去が見える能力を持つ男・散多(さんた)と、古道具屋を営む兄・太郎が謎に巻き込まれていく、ファンタジックなミステリ長編。兄弟が幼いころに亡くなった両親にまつわる謎と、廃ビルで目撃されたという“少女”の都市伝説を軸に物語は進んでいきます。
再開発予定の地方都市を舞台にした、ファンタジックミステリー。

300回に渡って地方紙に連載された新聞小説が背表紙約30mm。462ページの長編となって出版されました。

ビルの解体現場に現れる少女の都市伝説を巡ってちょっと不思議な能力を持つ主人公の散多(サンタ)くんが、兄とともにスキマワラシを探す話です。座敷わらしを連想する不思議な存在は東北地方の夏景色を連想させてくれます。

物語は中盤以降、アーティストの醍醐覇南子(ダイゴハナコ)さんが登場したあたりから加速し、読者を夢の世界に誘います。

不気味な話かと思って読み始めたんだけど、ジブリみたいな後味の作品だった。スキマワラシはまっくろくろすけみたいだ。

今まで読んだ恩田陸さんの4作品の中で一番温かくって且つ日常の中のファンタジーで凄く楽しかった。スキマワラシ(隙間童子)というネーミングの音が可愛い。

スキマワラシ、ミステリーでファンタジーで、でもちょっとホラーチックで、最後の方はホロリと泣ける一冊でした。

恩田陸さん

1964(昭和39)年、宮城県生れ。早稲田大学卒。1992(平成4)年、日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作となった『六番目の小夜子』でデビュー。2005年『夜のピクニック』で吉川英治文学新人賞、本屋大賞を、2006年『ユージニア』で日本推理作家協会賞を、2007年『中庭の出来事』で山本周五郎賞をそれぞれ受賞した。

まとめ

最近よく見かけるのが古民家や廃材を活用してカフェやギャラリーにするリノベーション。古きを訪ね新しきを知る試みは、地方都市や都会の商店街の活性化に一役買っています。

生活感が染みついた古材を使った建築には新築物件にはない肌触りがあり、訪れた人の思い出を呼び覚ますからかもしれません。

失われる寂しさだけでなく、受け継がれる清々しさと未来への希望がそこにある。過去への郷愁と次の時代への期待。過去と未来へのスキマにうまれる一瞬の交差を恩田陸は飄々とした筆致で描いた。(大矢博子 書評家)

ノスタルジアの魔術師と呼ばれる著者が女性読者層に支持される理由がわかるような気がします。