
岐阜県の山中で顔面を激しく損壊された男性の遺体が発見された。
取材に赴いた週刊誌記者の宮治は、警察が何かを隠していると疑う。
隣県にはひとつ歳下の弟・夏樹が住んでいた。久々に弟の部屋に立ち寄った宮治は、その言動に不信感を抱く。
弟が事件になんらか関わっているのかもしれない。報道の使命を貫くか、家族を守るか、宮治は揺れ動くが……。
このミステリーの表紙画を担当するのは三部けいさん。
時間遡行能力(タイムリープ)を持つ主人公が、過去に行って自分と周囲の人々を襲う悲劇を回避するサスペンス漫画「僕だけがいない街」の著者です。
物語の切れ味もさることながら、読者の心をつかんでやまなかったのは、事件に巻き込まれる女子生徒の境遇でした。
女子生徒は母親から虐待を受けていたのです。
家族だからこそ踏み込めない領域が物語に一層の奥行きを与えてくれた秀作でした。
表紙の持つ衝撃の世界感が誘う「共犯者」もまた複雑な家族の物語。
加害者にも被害者にも主人公にも様々な「家族の絆」があることが、読み進むうちに見えてきます。
言えないこと。いわないこと。見ていたもの。見えなかったもの。
角度を変えるとそれまで見えていたものががらりと変わります。
それぞれの物語に染まるうちに、見えてくる善悪では割り切れない人生のありようが読者の胸に強く刺さります。
迷走する警察。暴走する世論。壊れゆく家族。
ひとつの殺人事件が、隠された過去の真相を炙り出していく。
その罪は赦されるか。愛と憎しみの衝撃サスペンスミステリー。
【新刊】このミステリーがすごい !2022選考対象作品リスト《国内編》 | 気持ちのスイッチ
