秋から冬にかけてのお楽しみが、毎年恒例のミステリーランキングの発表です。
SFやミステリーなどの出版で知られる早川書房発行の「ミステリマガジン」1月号の特集「ミステリが読みたい!」では恒例のランキングが公開されました。
- ミステリが読みたい! 2023年ランキング《海外編》
- 1位『愚者の街』ロス・トーマス/松本剛史・訳
- 2位『ナイフをひねれば』アンソニー・ホロヴィッツ/山田蘭・訳
- 3位『頬に哀しみを刻め』S・A・コスビー/加賀山卓朗・訳
- 4位『卒業生には向かない真実』ホリー・ジャクソン/服部京子・訳
- 5位『恐るべき太陽』ミシェル・ビュッシ/平岡敦・訳
- 6位『処刑台広場の女』マーティン・エドワーズ/加賀山卓朗・訳
- 7位『トゥルー・クライム・ストーリー』ジョセフ・ノックス/池田真紀子・訳
- 8位『8つの完璧な殺人』ピーター・スワンソン/務台夏子・訳
- 9位『哀惜』アン・クリーヴス/高山真由美・訳
- 10位『ガラスの橋 ロバート・アーサー自選傑作集』ロバート・アーサー/小林晋・訳
- 11位『はなればなれに』ドロレス・ヒッチェンズ/矢口誠・訳
- 12位『禁じられた館』ミシェル・エルベール&ウジェーヌ・ヴィル/小林晋・訳
- 13位『人生は小説(ロマン)』ギヨーム・ミュッソ/吉田恒雄・訳
- 14位『真珠湾の冬』ジェイムズ・ケストレル/山中朝晶・訳
- 15位『だからダスティンは死んだ』ピーター・スワンソン/務台夏子・訳
- 16位『破果』ク・ビョンモ/小山内園子・訳
- 17位『グレイラットの殺人』M・W・クレイヴン/東野さやか・訳
- 18位『ハンティング・タイム』ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子・訳
- 19位『厳冬之棺』孫沁文/阿井幸作・訳
- 20位『死と奇術師』トム・ミード/中山宥・訳
- まとめ
ミステリが読みたい! 2023年ランキング《海外編》
「ほんミス」「文春ミス」「このミス」と合わせて一番面白いミステリーの読書計画を立ててみてはいかがでとょうか。海外編のランキングを紹介します。
1位『愚者の街』ロス・トーマス/松本剛史・訳
壮絶な過去をもつ元スパイに託された仕事は、 腐敗した街をさらに腐敗させること――。 生まれ落ちたときに母を亡くし、その後は父と二人で上海に渡ったダイ。南京路で爆撃に遭い、気づくと手をつないでいた父親は腕だけになっていた……。娼館のロシア人女性に拾われ、娼婦たちから様々な言葉や文化を学びながら生きのびて成人したダイは、やがて「セクション2」と呼ばれる米国秘密情報部でエージェントとしての活動に従事する。だが、何者かに陥れられて投獄され、情報部からも解雇。彼の出獄を待っていたのは、腐敗した南部の小さな街をさらに腐敗させ再興させるという突拍子もない仕事だった――。一人の男の数奇な運命を綴った壮大なるサーガにして、壮絶なる暴力と騙し合いの狂騒曲。二度のMWA賞に輝くクライム・ノヴェルの巨匠畢生の大作、ついに本邦初登場。
- チャンドラーやハメットのような香りや懐かしさは感じる。 例えば、これを現役の作家が書いたとしたら、あまり、評価されないと思う 。
- クライムノベルで爽快感があるなどと言うと単なるサイコ野郎になってしまうが、傑作だから言えること。ロマンチックな愚か者に強推薦。
- モームからの引用があったりしてセンス最高だ。原尞氏の解説で「小説家は詐欺師のようなものだ」「詐欺の至芸は語り口」「資料のお墨付き、本物だと言う注釈、実用に適う、宗教的な威喝、は詐欺の風上にもおけない」「語り口ひとつで、何の役にも立たないものを見事に売りつけてみせるのが小説の至芸」とある。
- 【このミス4位】
2位『ナイフをひねれば』アンソニー・ホロヴィッツ/山田蘭・訳
「われわれの契約は、これで終わりだ」探偵ホーソーンに、彼が主人公のミステリを書くのに耐えかねて、わたし、作家のホロヴィッツはこう告げた。その翌週、ロンドンで脚本を手がけた戯曲の公演が始まる。いきなり酷評する劇評を目にして意気消沈するわたし。ところがその劇評家が殺害されてしまう。凶器はあろうことかわたしの短剣。逮捕されたわたしには分かっていた。自分を救えるのは、あの男だけだと。〈ホーソーン&ホロヴィッツ〉シリーズの新たな傑作登場!
- 直感に優れ地道なホロヴィッツの捜査、従来の先駆の探偵たちへのリスペクトなど満足できる内容でした。
- 本格推理のクライマックスは比喩ではなく舞台の上で行われる。客席に警官を置き、舞台には探偵と容疑者たち。この物語を現代で読めるのはただ幸せ。
- 重要性のレベルには高低差があり、重要性の高い伏線の意味に気付けるかどうかが解決のキーポイント。
- 【このミス2位】
3位『頬に哀しみを刻め』S・A・コスビー/加賀山卓朗・訳
殺人罪で服役した黒人のアイク。出所後庭師として地道に働き、小さな会社を経営する彼は、ある日警察から息子が殺害されたと告げられる。白人の夫とともに顔を撃ち抜かれたのだ。一向に捜査が進まぬなか、息子たちの墓が差別主義者によって破壊され、アイクは息子の夫の父親で酒浸りのバディ・リーと犯人捜しに乗り出す。息子を拒絶してきた父親2人が真相に近づくにつれ、血と暴力が増してゆき――。
- まず題名に惹かれ、読んでみたらまさしくビンゴ!!クライムノベル好きは、四の五の言わずにとにかく読んでみよう。今年度必読の1冊!
- 秀逸なのは差別や偏見といったシリアスな問題を核にしてなお、ストーリーを加速し続けていること。心揺さぶられる傑作!
- LGBTQや人種差別といった問題を真正面から捉えた犯罪小説で、なかなか読み応えがあった。クライマックスの戦闘シーンも手に汗握る展開。
- 【このミス1位】
4位『卒業生には向かない真実』ホリー・ジャクソン/服部京子・訳
大学入学直前のピップに、不審な出来事がいくつも起きていた。無言電話に匿名のメール。首を切られたハトが敷地内で見つかり、私道にはチョークで首のない棒人間を書かれた。調べた結果、6年前の連続殺人事件との類似点に気づく。犯人は服役中だが無実を訴えていた。ピップのストーカーの行為が、この連続殺人の被害者に起きたことと似ているのはなぜなのか。ミステリ史上最も衝撃的な『自由研究には向かない殺人』三部作の完結編!
- 性被害やドラッグ、正義の危うさなど、今の日本にも通じる問題を取り入れ、三部作の最後に相応しいスリルが味わえた。
- 途中本当に苦しくなって何回か本を閉じました。 でもしっかりと見届けました! シリーズのクライマックスに相応しい超大作でした!
- ささやかな日常が一転し、気付けばこんなところまで来てしまった…家族や友人たち、ラヴィとの揺るぎない絆に涙
- 【このミス6位】
5位『恐るべき太陽』ミシェル・ビュッシ/平岡敦・訳
南の島に集まった人気作家と作家志望の女性5名が次々に死体で発見され……。騙りの天才ビュッシが放つ、クリスティへの挑戦作。
- 【このミス7位】
6位『処刑台広場の女』マーティン・エドワーズ/加賀山卓朗・訳
1930年、ロンドン。名探偵レイチェル・サヴァナクには、黒い噂がつきまとっていた。彼女は、自分が突きとめた殺人者を死に追いやっている――。レイチェルの秘密を暴こうとする新聞記者ジェイコブは、密室での奇妙な自殺や、ショー上演中の焼死といった不可解な事件に巻き込まれる。一連の事件の真犯人はレイチェルなのか?真実は全て“処刑台広場”に。英国推理小説界の巨匠による極上の謎解きミステリ。
- 600ページ近い大著だけど、猟奇的な殺人事件の連続と、クールビューティ探偵・レイチェルのキャラにハマってしまい、一気読み。
- ミステリというより冒険小説な展開にスカッと満足しつつもコレジャナイ感も拭えない複雑な気持ち。
- あらすじから想像してたのとまったく違う話だった。いつだって小説に裏切られるのは楽しい。
- 最初はスロースタートだけど、途中からぐいぐい引き込まれる感じ。
- 名探偵には自分が突きとめた殺人者を死に追いやっているという噂が付きまとうという設定に最後まで惹きつけられる。
- 【このミス3位】
7位『トゥルー・クライム・ストーリー』ジョセフ・ノックス/池田真紀子・訳
2011年末、マンチェスター大学の学生寮から、一人の女子学生が姿を消した。彼女の名はゾーイ。6年が経過するも行方はわからず、世間の記憶も薄れてきた頃、作家イヴリンはこの事件に関心を抱き、関係者への取材と原稿執筆を開始。作家仲間であるジョセフ・ノックスにアドバイスを仰いだ。2018年、ゾーイの双子の姉キムが初めてマスコミ取材に応じ、事件は再度注目を集めることになる。だが、取材と執筆を続行するようノックスから助言されていたイヴリンは、翌年、拉致犯人と思われる人物を特定する証拠を入手した直後に死亡。故人の遺志を継いだノックスが原稿の整理と追加取材を行って、『トゥルー・クライム・ストーリー(犯罪実話)』として彼女の遺稿を完成させるのだったが――。
- いきなり作者が意外な形で登場するのも笑えた。これは堕落刑事シリーズも読まなきゃね。
- 作家のイヴリンと友人で著者でもあるノックスのメールのやり取りが中心で読みやすく、節目節目に新たな事実が判明することもあり、時間を忘れて読み進められた。 中の登場人物は皆一癖あって好感を持てないし、誰が本当のことを言っているかもはっきりしない。
- 登場人物への思い入れが揺れ動いたり。いろいろと楽しめる。査定次はどんなの?と期待してしまう。
- 【このミス5位】
8位『8つの完璧な殺人』ピーター・スワンソン/務台夏子・訳
ミステリー専門書店の店主マルコムのもとに、FBI捜査官が訪れる。マルコムは10年前、犯罪小説史上もっとも利口で、もっとも巧妙で、もっとも成功確実な“完璧な殺人”が登場する8作を選んで、店のブログにリストを掲載した。『赤い館の秘密』、『ABC殺人事件』、『見知らぬ乗客』……。捜査官によると、それら8つの作品の手口に似た殺人事件が続いているという。犯人は彼のリストに従っているのか? ミステリーへの愛がふんだんに込められた、謎と企みに満ちた傑作!
- 【このミス8位】
9位『哀惜』アン・クリーヴス/高山真由美・訳
海岸で発見された男性の死体。彼の死に隠された真相とは? 小さな町に起きた奇妙で複雑な事件に、刑事マシュー・ヴェンが挑む。
10位『ガラスの橋 ロバート・アーサー自選傑作集』ロバート・アーサー/小林晋・訳
エドガー賞 2度受賞!「51番目の密室」の著者日本初のミステリー短編集。雪に閉ざされた屋敷から女性が消えた…。不可能犯罪の名作他、異才の精華をここに!
雪に閉ざされた山荘を訪ねていった女性が消えた!屋敷へ入る足跡のみが残された状況での人間消失を描いた、不可能犯罪の歴史的名作「ガラスの橋」。老姉妹が、これまで読んできた千冊以上の推理小説の知識を武器に、犯罪者たちに戦いを挑む痛快な冒険譚「極悪と老嬢」等々、キレのいい短編で知られるロバート・アーサーの日本初の作品集登場!
ミステリー・ドラマの送り手として、2度のエドガー賞に輝く名手が、みずから選んだ傑作ばかり。
【このミス9位】
11位『はなればなれに』ドロレス・ヒッチェンズ/矢口誠・訳
トリュフォーからゴダールへの贈りもの。 映画『はなればなれに』の原作として盟友が推薦した、 傑作青春ノワールがついに本邦初紹介! ともに22歳の前科者スキップとエディは夜間学校で天涯孤独の17歳の娘カレンと出会う。彼女が身を寄せる未亡人宅には頻繁に訪れる男がいて、どうやら未亡人の元娘婿らしいその男ストールツはカジノ関係者で、莫大な現金を屋敷に保管しているという。二人はその金を奪う計画を立てるが、元ギャングのスキップの叔父に嗅ぎつけられ、プロの犯罪者仲間を計画に加えたときから、すべての歯車が狂い始める……。トリュフォーの推薦でゴダールが映画『はなればなれに』の原作に選んだ傑作犯罪小説。本邦初訳。
- ゴダール映画の原作である本作が翻訳されるとは!楽しみに手にとる。いやはやシンプルだけどしっかりしたサスペンスノワールで一気読みであった。
- 短慮で刹那的な若者たちは、ひたすらに愚かな行動を積み重ねていく。その様子は読んでいて不快でありつつ、どこか痛々しさすら感じる。
- 映画で見れば面白かったのかなという感じ。
- 【このミス17位】
12位『禁じられた館』ミシェル・エルベール&ウジェーヌ・ヴィル/小林晋・訳
「ストレートで高純度の本格ミステリ。 よくぞ掘り出してくれました。 1930年代のフランスでこんな不可能犯罪ものが書かれていたとは、 ヴィンテージミステリの世界はまだまだ底が知れませんね。」 ――有栖川有栖(作家)
- 【このミス13位】
13位『人生は小説(ロマン)』ギヨーム・ミュッソ/吉田恒雄・訳
14位『真珠湾の冬』ジェイムズ・ケストレル/山中朝晶・訳
世界最大のミステリ文学賞エドガー賞最優秀長篇賞受賞作 太平洋戦争迫るハワイ、香港、そして日本。彼は真実を追い求めた―― 1941年ハワイ。アメリカ陸軍上がりの刑事マグレディは、白人男性と日本人女性が惨殺された奇怪な事件の捜査を始める。ウェーク島での新たな事件を経て容疑者がマニラ・香港方面に向かったことを突き止めた彼はそれを追うが、折しも真珠湾を日本軍が攻撃。太平洋戦争が勃発する。陥落した香港で日本軍に捕らえられ、東京へと流れついたマグレディが出会ったのは……。戦乱と死が渦巻く激動の太平洋諸国で連続殺人犯を追う刑事の執念。その魂の彷徨を描く大作ミステリ。
- 3部構成の骨格がきっちりしており、時間と場所の流れはメリハリがあり、頁を捲るのももどかしい程に読ませる。
- 憎むべきは敵国の人間ではなく、戦争を始める一部の人間である事を伝える内容が見られ、『ファシズムに対する怒りと批判がテーマ』(解説より)である事がわかる。
- 詩情溢れる文章で、印象的なシーンも多いが、一番は野沢温泉の冬のラストシーンだ。
- 【このミス10位】
15位『だからダスティンは死んだ』ピーター・スワンソン/務台夏子・訳
ボストン郊外に越してきた版画家のヘンと夫のロイドは、隣の夫婦マシューとマイラの家に招待された。食事後にマシューの書斎に入ったとき、ヘンは2年半前に起きたダスティン・ミラー殺人事件で、犯人が被害者宅から持ち去ったとされる置き物を目にする。マシューは殺人犯だと確信したヘンは、彼について調べ、跡をつけはじめるが……。数人の視点で語られる物語は読者を鮮やかに幻惑し、衝撃のラストへとなだれ込む。息もつかせぬ超絶サスペンス!
- 「こんなのってアリ?」と思わず声が漏れてしまいそうなトリックで新鮮でした。
- 数人の視点で語られる物語は読者を鮮やかに幻惑し、衝撃のラストへとなだれ込む。息もつかせぬ超絶サスペンス!
- 後半に入ると何かしらの違和感があり、それが最後に繋がった。やはりこの作家さんの作品はハズレがない。
- 【このミス19位】
16位『破果』ク・ビョンモ/小山内園子・訳
稼業ひとすじ45年。かつて名を馳せた腕利きの女殺し屋・爪角(チョガク)も老いからは逃れられず、ある日致命的なミスを犯してしまう。守るべきものはつくらない、を信条にハードな現場を生き抜いてきた彼女が心身の揺らぎを受け入れるとき、人生最後の死闘がはじまる。韓国文学史上最高の「キラー小説」、待望の日本上陸!
- 岩波から出ているだけあって、メッセージ性も強い。著者も意識してあえて「読みにくい」文章になるようにしていたとか。読んでも翌週にはスジを忘れてしまうことが多いエンタメ小説。
- 爪角さん、カッコいいです。女であること、老いていくこと、腐りゆく桃のような体と心の変化に戸惑いながらも風のように生きる姿は眩しかったなぁ。
- 作者の意図した「読みやすくしない」文体は日本の講談のようで、段々と引き込まれスピードアップしていき、気づいたら読み終わっていた、という感じです。
- 【このミス11位】
17位『グレイラットの殺人』M・W・クレイヴン/東野さやか・訳
売春宿で殺されたサミット関係者の男。テロを警戒する政府はポーに捜査を命じる。ポーは3年前の強盗殺人事件との関連を疑い……
- 【このミス16位】
18位『ハンティング・タイム』ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子・訳
19位『厳冬之棺』孫沁文/阿井幸作・訳
上海郊外の湖畔に建つ陸家の館で殺人事件が起こる。現場は大雨で水没した地下室で完全な密室だった! 天才漫画家探偵・安縝(あんしん)登場
20位『死と奇術師』トム・ミード/中山宥・訳
まとめ
「ミステリーが読みたい」のランキング結果をご紹介しました。
いずれも評判がよく、読みごたえのある小説ばかりです。ランキング結果を参考に、自分に合った1冊を選んでください。
Amazonには「Amazonチャージ」というサービスが用意されています。この「Amazonギフト券 チャージタイプ」に現金でチャージすると、Amazonポイントが還元されるのがポイント。
例えば、プライム会員が現金で1度に10万円チャージすると、2,500円相当のAmazonポイントが貯まります。さらにプライム会員は通常会員よりも還元率が高くなります。
Amazonチャージを使って本を買うとポイントが還元された分だけ実質的な値引きになります。
Amazonギフトカード チャージタイプ(直接アカウントに残高追加)
クレジットカードで決済するよりも、あらかじめ現金で「Amazonギフト券 チャージタイプ」でチャージしておく方がお得です。
こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 ミステリが読みたい! を書きます。