【2026年版予想】 このミステリーがすごい! 海外篇・3月刊行の注目作レビュー

フルタニ

こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 このミステリーがすごい! 海外篇・3月刊行の注目作を書きます。

いやぁ、今年もこの季節がやってきました。

夏の猛暑が過ぎて、夜に窓を開けるとようやく涼しい風が入ってくる。そんな晩にコーヒー片手に読みたいのが、海外ミステリー。なかでも毎年12月のランキング発表を前に、「これが来るんじゃないか?」とソワソワする――そう、「このミステリーがすごい!」の予想タイムです。

今回は2024年3月に刊行された作品から、僕が「これはランキングに食い込むかも!」と思った注目作をピックアップ。例によって、ストーリーの詳細には触れず、読みながら感じたことを思いっきり語っていきます。

【2026年版予想】 このミステリーがすごい! 3月注目の 海外ミステリー

『悪人すぎて憎めない』 クイーム・マクドネル 2025年03月31日 

バニー・マガリー刑事には、かつて最高の相棒がいた――1999年、ダブリンでは武装強盗が頻発していた。現金輸送車を襲う鮮やかな手口に、警察本部はカーター一味に目をつける。特捜班に入ったバニーと相棒のグリンゴは、一味を監視する業務につくが、ジャズ・シンガーの黒人女性シモーンと出会ったことで、全員の運命が思わぬほうへ変わりはじめ……。ノンストップ・サスペンス『平凡すぎて殺される』に連なる衝撃のバニー過去編登場!

まずはバニー刑事シリーズの過去編。

いやぁ、これね……読んでる間ずっと楽しかった。軽妙なんだか、ただの口汚い罵りあいなんだかわからないセリフの応酬がクセになるんですよ。ページをめくるたびに「あーもう、こいつらまたやってるよ!」って笑ってしまう。

でも、その軽さの裏にじわっと影が差す瞬間があるんです。ジャズシンガーのシモーンとの出会い。ここでふっと物語の空気が変わる。あのダブリンの街のざらついた空気の中で、ほんのひととき差し込む光みたいな場面。単なる刑事小説じゃないんだよな、って感じさせられました。

邦題はちょっとコミカル寄りで「え?」って思うかもだけど、中身はシリーズ屈指の骨太さ。過去を描くことで、バニーが「なぜこうなったのか?」という人間臭さがぐっと立ち上がってくる。読後、「こいつ憎めないなぁ」ってまんまとタイトル通りの気持ちになってました。

『ボニーとクライドにはなれないけれど』 アート・テイラー 2025年03月19日

コンビニ店員のルイーズは、学費のために強盗をしにきた青年デルと恋に落ちた。ふたりはデルの学位取得を契機に、まともな人生を始めることにする。不動産業を営むデルの姉を手伝うために車で旅に出たが、なぜか次々に事件や犯罪が起き、そのたびに新たな土地へ向かう羽目に。窃盗を疑われ、ワイン泥棒に加担し、教会では強盗の人質にされ……。デルとルイーズの安住の地とは? チャーミングな恋人たちを描く連作ミステリ短編集。

これね、最初は軽いラブコメだと思って油断してたんですよ。コンビニ強盗なんてドタバタ劇だろう、と。そしたら途中からどんどんシリアスな展開に入ってきて、「あれ、こんなに胸が締めつけられる話だったっけ?」って。

デルとルイーズの関係がいいんです。マヌケな犯罪を繰り返しつつ、でもここぞという場面では決めてくれるデル。そんな彼を見守りながらも、芯の強さを見せるルイーズ。なんか、ただの犯罪小説というより、二人の人生の物語なんですよね。

特に印象的だったのは、彼らが「平凡な幸せ」に手を伸ばす場面。血みどろの抗争や大金じゃなくて、ほんの小さな「普通」。そこにたどり着けるかどうかで、こんなにも読者の心を揺さぶるんだって気づかされました。ボニーとクライドにはならなくていい、ただ二人で暮らしてほしい――そう祈らずにいられない。

『読書会は危険?: 〈秘密の階段建築社〉の事件簿』ジジ・パンディアン 2025年03月19日

本を取るとひらく本棚や、レバーを引くと現れる秘密の部屋――そんな仕掛けを得意とする〈秘密の階段建築社〉。元イリュージョニストのテンペストが働くこの家業の最新の仕事は、ある家の地下室を改装して読書コーナーや読書会スペースを作ること。そして今宵その地下室で、種も仕掛けもある交霊会がひらかれる。だが明かりが点滅するなか、8人が囲むテーブルの中央に死体が忽然と……。『壁から死体?』に続くシリーズ第2弾!

いやぁ、コージーミステリー好きにはたまらないやつ。秘密の部屋、仕掛け本棚、交霊会……ワクワクする要素がぎゅっと詰まってる。事件そのものは一見「不可能犯罪」なんだけど、テンペストの視点で「何をどう見るか」がポイントになるあたり、本格ミステリの香りもするんです。

僕がニヤッとしたのは、登場人物たちが仕掛けや演出に翻弄されながらも、本を愛する気持ちはみんな一緒だというところ。血なまぐさい殺人事件と、読書会という「本好きの集い」が奇妙に同居していて、そのギャップがたまらないんですよ。

『世界の終わりの最後の殺人』スチュアート・タートン 2025年03月12日 

突如発生した霧により、世界は滅亡した。最後に残ったのは「世界の終わりの島」、そこには100名を超える住民と、彼らを率いる3人の科学者が平穏に暮らしていた。沖には霧の侵入を防ぐバリアが布かれ、住民たちはインプラントされた装置により〈エービイ〉と名づけられたAIに管理されていた。 だがある日、平穏は破られた。科学者のひとり、ニエマが殺害されたのだ。しかも住民たちは事件当夜の記憶を抹消されており、ニエマの死が起動したシステムによってバリアが解除されていた。霧が島に到達するまで46時間。バリア再起動の条件は殺人者を見つけること――。 果たして「世界の終わりの島」に隠された秘密とは? そして真犯人は誰なのか? 人格転移タイムループ館ミステリ『イヴリン嬢は七回殺される』、海洋冒険ホラー歴史ミステリ『名探偵と海の悪魔』に続く鬼才スチュアート・タートンの第3作。特殊設定メガ盛りで読者に挑戦するポストアポカリプス犯人捜しミステリ!

これはもう、読み終えたあと椅子に沈み込んで「はぁぁ……」って声が出ました。とにかく濃い。世界観の情報量がすごい。途中で「ちょっと凝りすぎじゃない?」って思うんだけど、気づいたらページを止められなくなってるんですよ。

特に、記憶を失った住民たちが「誰が殺人者か」を探し始めるくだり。全員が真相を知らないはずなのに、どこかに手がかりはある。その不安と緊張感が島全体に漂っていて、読んでる自分も霧に包まれたみたいな気分になる。

最後の着地点は「なるほど……!」と唸らされました。疲れるくらい複雑なのに、納得感がある。このバランスはタートンならでは。ランキング常連の実力を見せつけられましたね。

『弔いの鐘は暁に響く』 ドロシー・ボワーズ 2025年03月05日

「次に死ぬのはお前かもしれない」 不気味な手紙は殺人の予告だったのか? 施錠された室内で発見された老婦人の絞殺死体。撲殺された無垢な娘。相次ぐ自殺。平和な町を襲う未曾有の事件に秘められた真相とは……。 夭折の女流作家が遺した最後の長編を初邦訳!

いやぁ、これぞ黄金期の香り。施錠された室内、絞殺、連続自殺――クラシカルな要素が次々に出てくるんだけど、ただの古臭い謎解きにはならない。ボワーズの筆致は切れ味が鋭くて、容疑者同士が一室に集まる終盤のサスペンスは鳥肌モノでした。

夭折した作家の遺作という背景もあって、読んでいて「もっと続きがあったかもしれない」という思いがつきまとうんですよね。レイクス警部が新しい探偵像として定着していたら……と考えると惜しい。だけど、この一作で十分に存在感を放っている。個人的にはボワーズ最高傑作だと思いました。

『暗殺依存症』ロブ・ハート 2025年03月05日

引退した殺し屋のマークは、「暗殺依存症」患者の自助団体に参加し、「二度と人を殺さない」と誓うが、何者かに命を狙われ、襲撃されてしまう。敵の正体を探るため世界中を飛び回るマークのなかで、敵を殺してしまいたいという欲求がどんどん高まっていき……

いやもう、このタイトルからして強烈。読んでると「殺すことが癖になる」っていう発想が、怖いのにリアルに感じられるんですよ。主人公マークが「もうやめたい」のに、身体の奥底から湧き上がる衝動に抗えない。読んでるこっちまでゾワゾワしてくる。

でもね、この作品がただのバイオレンスで終わらないのは、自助グループの仲間たちの存在。彼らがマークを信じ、支えることで、ほんの少し希望が差すんです。そのバランスがすごく良い。ラストで突き抜けてくれるから、読後感が絶望で終わらないんですよね。

『彼女を見守る』ジャン=バティスト・アンドレア 2025年03月05日

第一次大戦後、イタリア北西部にある村。貧しい家に生まれた、石工の弟子、ミモ。村の城館に住む侯爵家の娘でありながら自立を望むヴィオラ。出会うはずのなかった二人は惹かれ合い、時に反発し、両大戦間の激動の時代を生き抜いていく。ゴンクール賞受賞作!

これ、文学賞受賞作だけあって、読んでいて圧倒されました。石工ミモと侯爵令嬢ヴィオラ。二人の関係は恋愛というより、もっと大きな「時代を生き抜くパートナー」という感じ。

僕が心を掴まれたのは、ヴィオラの存在感です。彼女は「百年早く生まれた」女性として描かれるんですが、その言葉にすごく重みがある。社会の枠組みに押し込められながら、それでも自分の意志で生きようとする。そんな彼女に引っ張られて、ミモの人生も変わっていく。

歴史小説と恋愛小説とミステリーが交差するような、スケールの大きさ。じっくり腰を据えて読みたい一冊です。

『家族のなかの見知らぬ人』A・R・トーレ 2025年03月05日

仕事を失い、夫の浮気に絶望していたリリアン。彼女に魅力的な男性が接近してくる。妻の変化に気づいた夫は尾行を開始するが……。信頼できない語り手だとわかるリリアンと夫の関係に次々と新事実が浮かび上がるサスペンス小説。

これはね、「信頼できない語り手」の恐ろしさを改めて実感しました。リリアンと夫、どちらを信じればいいのかわからなくなる。読み進めるたびに「え、今までの話、ぜんぶ嘘だった?」って裏切られる感覚。

正直、結末はある程度予想できたんだけど、その道筋の描き方がうまい。少しずつ積み重なる嘘や隠し事が、じわじわと効いてくるんですよ。ラストに行き着くまでの不安感こそ、この小説の醍醐味だと思います。

『孔雀と雀 アラブに消えゆくスパイ』I・S・ベリー 2025-03-19

50歳を過ぎて引退を控え、最後の任地バーレーンでうだつの上がらない生活をおくるCIA分析官シェーン・コリンズが主人公。物語は「アラブの春」の延長線にある2013年バーレーン騒乱に収斂していくが。

最後に紹介するのは、静かだけど渋みのあるスパイ小説。主人公コリンズの「うだつの上がらなさ」が逆にリアルで、読んでいて胸が痛いんです。50歳を過ぎたCIA分析官の姿に、「スパイだって結局は一人の人間なんだ」って気づかされる。

アラブの春以後という現実の政治情勢に根ざしているから、フィクションなのに現実感がすごい。派手な銃撃戦やカーチェイスよりも、人間関係のすれ違いや疑念の積み重ねに重きが置かれていて、読んでるうちにじわじわ効いてくる。派手さはないけど、渋く光る良作だと思いました。

まとめ

3月だけでこれだけ豊作って、2026年版のランキング争いは相当熾烈になりそうです。

個人的には、『世界の終わりの最後の殺人』と『弔いの鐘は暁に響く』が頭ひとつ抜けてる印象。でも『暗殺依存症』や『ボニーとクライドにはなれないけれど』も人気投票で強そうだし……いやぁ悩ましい!

12月の発表まで、今年もこの「ソワソワ」を楽しもうじゃないですか。

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