このホラーがすごい! 2025 ランキング ベスト20
『このホラーがすごい!2025年版』が出ました。
・作家生活10周年 澤村伊智特集
・映画『近畿地方のある場所について』特別対談
・著名作家陣 楳図かずお 追悼エッセイ
恒例人気作家さんの怖い「体験談」などもりだくさんです。
1『深淵のテレパス』上條 一輝

「変な怪談を聞きに行きませんか?」会社の部下に誘われた大学のオカルト研究会のイベントで、とある怪談を聞いた日を境に高山カレンの日常は怪現象に蝕まれることとなる。暗闇から響く湿り気のある異音、ドブ川のような異臭、足跡の形をした汚水――あの時聞いた”変な怪談”をなぞるかのような現象に追い詰められたカレンは、藁にもすがる思いで「あしや超常現象調査」の二人組に助けを求めるが……選考委員絶賛、創元ホラー長編賞受賞作。
- 序盤から張り巡らされていた伏線を回収しつつクライマックスは一気にテンポが上がり緊迫感マックス。メリハリがあって飽きることなく読了することができた。
- テレビで紹介された一冊 とても読みやすく、夜に読んだので後半ドキドキしながら読了。
- 怪奇現象を突き止めるまでの調査パートも、それまでに集めた情報でピンチを切り抜けるクライマックスも楽しく、総じて完成度の高いエンタメ作品に仕上がっていた。
2『さかさ星』貴志 祐介

戦国時代から続く名家・福森家の屋敷で起きた一家惨殺事件。死体はいずれも人間離れした凄惨な手口で破壊されており、屋敷には何かの儀式を行ったかのような痕跡が残されていた。福森家と親戚関係の中村亮太は、ある理由から霊能者の賀茂禮子と共に屋敷を訪れ、事件の調査を行うことになる。賀茂によれば、福森家が収集した名宝・名品の数々が実は恐るべき呪物であり、そのいずれか一つが事件を引き起こしたという。賀茂の話を信じきれない亮太だったが、呪物が巻き起こす超常的な事象を目にしたことで危機を感じ始める。さらに一家の生き残りの子供たちにも呪いの魔の手が……。一家を襲った真の呪物は? そして誰が何のために呪物を仕掛けたのか? 数百年続く「呪い」の恐怖を描く、待望の長編ホラー。
- 600ページもあって特別派手な展開があるわけでもないが冗長を感じさせない物語の運び方にのめり込める。捻りの効いた設定は掘り下げが徹底してあってどっぷり物語に浸れる。
- 面白ーーい!こりゃあ色んなジャンルのホラーゲームごった煮小説!
- 怖い・怖そうなんですが、文字数の多さと作者の知識量に只々付いていくのが、一杯で、途中で心が折れそうになりました。
3『骨を喰む真珠』北沢 陶

大正十四年、大阪。病弱だが勝ち気な女性記者・苑子は、担当する身上相談欄への奇妙な投書を受け取る。大手製薬会社・丹邨製薬の社長令息からの手紙であり、不審を覚えた苑子は、身分を偽り丹邨家に潜入することに。調査を進めるうち、その異様さが明らかになっていく。苑子を苦しめていた咳をただちに止める、真珠のような丸薬。
一家の不可解な振る舞い。丸薬を怪しんだ苑子は、薬の成分分析を漢方医に頼む。
返ってきた結果には、漢方医も知らない「骨」が含まれていた――。
- 構成も良かった。クライマックスへと続く悍ましい一連のシーン。ようやく辿り着いたのにやるせなさ過ぎる。ダークだがラストは温かみが残る怪奇ミステリ。
- めちゃくちゃ良かった!関西弁が良い雰囲気を醸し出してくれる大正ホラー。
- 血飛沫が飛びまくるホラーなラストは生臭さでいっぱい。私の眉間のシワもいっぱい。
4『口に関するアンケート』背筋

5『宵闇色の水瓶 怪奇幻想短編集』井上 雅彦
2020年に再開された《異形コレクション》(光文社)で、注目されている作家・アンソロジスト、井上雅彦の個人アンソロジー。現在では入手困難な媒体に発表されたものを中心に、書き下ろし1篇を加えた全13篇を収録。それぞれの作品には、手法と意図を分析した「作者のコメンタリー」を掲載。そこからは、著者の「短篇論」「ホラー論」も浮かびあがる。
- 怪奇幻想短編集。幻想だけではなく、ましてや怪奇だけでもない、両者相乱れての末の、この陶酔感。
- 物語がある一点に辿り着き転換点を迎えてからの描写に脱帽する。
- 一話ごとに挿入される作者のコメンタリーで心霊科学や怪奇小説に関する幅広い知識が披露されるのが興味深い。
6『右園死児報告』真島 文吉

右園死児案件が引き起こした現象の非公式調査報告書である。明治二十五年から続く政府、軍、捜査機関、探偵、一般人による非公式調査報告体系。右園死児という名の人物あるいは動物、無機物が規格外の現象の発端となることから、その原理の解明と対策を目的に発足した。
6『斬首の森』澤村伊智

鬱蒼と暗い森の中に建つ合宿所。ある団体の“レクチャー”を受け洗脳されかけていたわたしは、火事により脱出する。男女五人で町へ逃げだそうとするが、不可解な森の中で迷ってしまう。翌朝、五人のうちのひとりの切断された頭部が発見される。頭部は、奇怪な装飾を施された古木の根元に、供物のように置かれていてーー
8『バラバラ屋敷の怪談』大島 清昭

民俗学のフィードワークの手法を用いて、取材を元に怪談を執筆してる呻木叶子が遭遇する四つの事件。八人の女性が犠牲になったバラバラ殺人の現場周辺で目撃される四体の幽霊の謎と、現場の屋敷で新たに発生した密室殺人を呻木が解き明す表題作ほか、博物館で目撃される少女の霊の来歴を探るうちに、思わぬ不可能犯罪に行き当たる「青いワンピースの怪談」など、第17回ミステリーズ!新人賞受賞作『影踏亭の怪談』の新鋭による恐怖と驚愕の連作集。
9『頭の大きな毛のないコウモリ 澤村伊智異形短編集』澤村伊智

みんな死ぬよ 誰も帰れない。ホラー映画撮影スタッフを襲う悪夢のような事件。元アイドルのバスツアー参加者たちが語る戦慄の一夜。保育士と母親の連絡日記から浮かび上がる歪んだ日常。小学生時代の不穏な事件に隠された薄気味悪い符合。恐れと禍いの最高到達点。どこまでも不気味で、どうしようもなく愉しい、暗黒奇譚集。
9『撮ってはいけない家』矢樹 純

「その旧家の男子は皆、十二歳で命を落とす――」映像制作会社でディレクターとして働く杉田佑季は、プロデューサーの小隈好生から、モキュメンタリーホラーのプロットを託される。「家にまつわる呪い」のロケのため山梨の旧家で撮影を進める中、同僚で怪談好きのAD・阿南は、今回のフィクションの企画と現実の出来事とのおかしな共通点に気付いていく。そして現場でも子どもの失踪事件が起こり……。日本推理作家協会賞短編部門受賞『夫の骨』著者の最新作!