一気読み必至のリーガルミステリー「原因において自由な物語」

原因において自由な物語

『原自(げん・じ)物語』と略されるミステリーです。

作家の紡季(つむぎ)にはある秘密があった。
それは恋人の弁護士・想護(そうご)が考えたプロットを基に書いていること。
新作の執筆中、高校生の転落死事件に内容が酷似していると編集者から指摘される。
直後に想護が同じ場所で転落、意識不明に。紡季は想護の同僚とともに彼が担当していた高校で絡み合った謎を探る。

著者の五十嵐律人さんは1990年岩手県盛岡市生まれ。
東北大学法学部卒。司法試験合格後も裁判所で働きながら執筆を続ける弁護士・小説家です。
デビュー作『法廷遊戯』で2020年第62回メフィスト賞を受賞。
本作は二作目になります。
なぜ人は罪を犯すのか、という人間の不合理さに迫りたいとリーガルミステリーに挑み続けています。

「今作だと、『物語が途中でなくなる』というコピーがまず浮かんで、
その続きを主人公の作家がどう埋めていくかを書こうと決めた。
でも、そういう小説自体は、他にもあるんですよ。
その虚と実をもし反転させたらどうかとか、
より新鮮な形を探るうち、プロットが頭の中に出来ていきました」

本作は、探偵役の紡季が椎崎らの協力を得て真相に迫り、
作中作『原因において自由な物語』(原自、、物語)を完成させる物語です。

学校のいじめ解決に取り組む弁護士(スクールロイヤー)、
見た目に点数をつけて恋愛相手を選び出すマッチングアプリといった
近未来的な要素もちりばめられています。
過去作以上の緻密な構成で、読み手を翻弄する「小説の力」や存在意義を問う物語です。

「伏線や謎解きもなく真犯人が登場しても、読者は納得しないと思います。
その結末に至るのにいかに魅力的な謎や伏線を鏤ちりばめ、
フェアに事を運ぶかという点は、法律論とも似てますよね」

「冒頭の僕が誰をどう殺すのかとか、謎に対する答えは僕も持ってなくて、
半分まで書いて考えてまた書く、みたいな。
それでもこの謎は魅力的だという自信はあったので、廃病院での2つの転落と、
なぜそれを物語にしたのかという謎を何とか着地させる術を探っていきました」

タイトルの「原因において自由な物語」の意味については作中で語られています。
人気推理作家として活躍する二階堂紡季こと〈市川紡季〉に、
弁護士で大学以来の恋人の〈遊佐想護〉はこう説明している。
〈刑法の有名な理論に、「原因において自由な行為」っていうのがあるんだ〉
〈自由な意思決定に基づく原因行為が存在する限り、
それによって生じた結果行為の責任も負わなければならない〉
〈かっこいい名前の理論に外れはない。そういう法則があってさ〉──。

残酷な人間心理を描く場面もありますが、
法律の苦手な読者も虜にするテンポよい展開と爽やかな読後感を感じる作品です。