週刊文春恒例の「文春図書館拡大版ミステリーベスト10」が週刊文春 2024年12月12日号で公表されました。
この「ミステリーベスト10」は、日本推理作家協会会員及びミステリー作家、文芸評論家、書店員、各大学ミステリー研究会へのアンケート調査の結果によるものです。
国内編のランキングを紹介します。
- 週刊文春 文春図書館 2024年国内編ミステリーベスト10
- 1位「地雷グリコ」青崎有吾
- 2位「冬期限定ボンボンショコラ事件」 米澤穂信
- 3位「禁忌の子」山口 未桜
- 4位「檜垣澤家の炎上」永嶋恵美
- 5位「法廷占拠 爆弾2」呉勝浩
- 6位「ぼくは化け物きみは怪物」白井智之
- 7位「明智恭介の奔走」今村昌弘
- 8位「乱歩殺人事件――「悪霊」ふたたび」芦辺 拓
- 9位「少女には向かない完全犯罪」方丈貴恵
- 10位「シャーロックホームズの凱旋」森見登美彦
- 10位「日本扇の謎」有栖川有栖
- 10位「難問の多い料理店」結城真一郎
- 13位「六色の蛹」櫻田智也
- 14位「名探偵の有害性」桜庭一樹
- 15位「虚史のリズム」奥泉光
- 16位「彼女が探偵でなければ」逸木 裕
- 17位「暗殺」柴田哲孝
- 18位「伯爵と三つの棺」潮谷験
- 19位「ぼくらは回収しない」真門浩平
- 20位「兎は薄氷に駆ける」 貴志祐介
週刊文春 文春図書館 2024年国内編ミステリーベスト10
1位「地雷グリコ」青崎有吾
ル系JK。実はとんでもない頭脳の持ち主。グリコにじゃんけん、だるまさんがころんだなど、誰もが知ってる遊びにルールが加わり知的ゲームの騙し合いが展開される。
2位「冬期限定ボンボンショコラ事件」 米澤穂信
交通事故で入院中の主人公。小市民をめざす彼が思いめぐらしたののは、三年前、同じ場所で
同級生が巻き込まれた交通事故のことだった。15年ぶりの新作。シリーズ完結編。
3位「禁忌の子」山口 未桜
救急医・武田の元に搬送されてきた、一体の溺死体。その身元不明の遺体「キュウキュウ十二」は、なんと武田と瓜二つであった。彼はなぜ死んだのか、そして自身との関係は何なのか、武田は旧友で医師の城崎と共に調査を始める。しかし鍵を握る人物に会おうとした矢先、相手が密室内で死体となって発見されてしまう。自らのルーツを辿った先にある、思いもよらぬ真相とは――。過去と現在が交錯する、医療×本格ミステリ! 第三十四回鮎川哲也賞受賞作。
4位「檜垣澤家の炎上」永嶋恵美
横濱で知らぬ者なき富豪一族、檜垣澤家。当主の妾だった母を亡くし、高木かな子はこの家に引き取られる。商売の舵取りをする大奥様。互いに美を競い合う三姉妹。檜垣澤は女系が治めていた。そしてある夜、婿養子が不審な死を遂げる。政略結婚、軍との交渉、昏い秘密。陰謀渦巻く館でその才を開花させたかな子が辿り着いた真実とは――。小説の醍醐味、その全てが注ぎこまれた、傑作長篇ミステリ。
5位「法廷占拠 爆弾2」呉勝浩
東京地方裁判所、104号法廷。史上最悪の爆弾魔スズキタゴサクの裁判中、突如銃を持ったテロリストが乱入し、法廷を瞬く間に占拠した。「ただちに死刑囚の死刑を執行せよ。ひとりの処刑につき、ひとりの人質を解放します」前代未聞の籠城事件が発生した。スズキタゴサクも巻き込んだ、警察とテロリストの戦いが再び始まる!
- 後半はタゴサクも本領発揮して存在感抜群。この先どうなっていくんだろうか?もう第3弾に期待しかない。
- めっちゃ面白かった!こりゃ、まだ続くねぇ。このレベルの小説を続けられる呉勝浩さんが凄い!
- まさかの続編。そしてまさかの結末。これはまだ続きそうな予感……?
6位「ぼくは化け物きみは怪物」白井智之
クラスメイト襲撃事件を捜査する小学校の名探偵。滅亡に瀕した人類に命運を託された“怪物”。郭町の連続毒殺事件に巻き込まれた遊女。異星生物のバラバラ死体を掘り起こした三人組。見世物小屋(フリークショー)の怪事件を予言した“天使の子”。凶暴な奇想に潜む、無垢な衝動があなたを突き刺す。白井智之は容赦しない。
7位「明智恭介の奔走」今村昌弘
信家でミステリ愛好会の会長明智恭介。その生前の活躍譚。葉村くんと共に謎に挑む新作シリーズ第1作。肌着引き裂き事件に試験問題漏洩事件。手紙ばら撒き事件など五つの謎に挑む日常系ミステリ。
- あの「明智先輩」が主役の短編集なんて! いろいろ考えますね〜。シリーズの持つインパクトこそありませんが、読みやすくて面白かったです。
- 明智恭介のまさかの復活を祈っているファンは多いはず。私もその一人。キョウスケ、カムバック!!
- 屍人荘での明智の運命を考えると切ないが、青春ミステリシリーズとして、もう少し続いても良いのではと感じた。もちろん本編シリーズの続編にも期待したい。
8位「乱歩殺人事件――「悪霊」ふたたび」芦辺 拓
1923年(大正12年)に「二銭銅貨」でデビューし、探偵小説という最先端の文学を日本の風土と言語空間に着地させた江戸川乱歩。満を持して1933年(昭和8年)に鳴り物入りで連載スタートした「悪霊」は、これまでの彼の作品と同様、傑作となるはずだった。
謎めいた犯罪記録の手紙を著者らしき人物が手に入れ、そこで語られるのは、美しき未亡人が不可思議な血痕をまとった凄惨な遺体となって蔵の2階で発見された密室殺人、現場で見つかった不可解な記号、怪しげな人物ばかりの降霊会の集い、そして新たに「又一人美しい人が死ぬ」という予告……。
期待満載で幕を開けたこの作品はしかし、連載3回ののち2度の休載を挟み、乱歩の「作者としての無力を告白」したお手上げ宣言で途絶した。
本書は、『大鞠家殺人事件』で日本推理作家協会賞と本格ミステリ大賞を受賞した芦辺拓が、乱歩がぶちあげた謎を全て解き明かすと同時に、なぜ「悪霊」が未完になったかをも構築する超弩級ミステリである。
9位「少女には向かない完全犯罪」方丈貴恵
れた少女・音葉に出会う。
彼女は、出会い頭に彼に斧を叩き込んで、言う。
「確かに、幽霊も子供も一人じゃ何もできないよ。
でも、私たちが力を合わせれば、大人の誰にもできないことがやれると思わない?」
天井に足跡の残る殺人、閉じ込められた第一発見者、犯人はこの町にいる。
10位「シャーロックホームズの凱旋」森見登美彦
舞台はヴィクトリア朝京都。
洛中洛外に名を轟かせた名探偵ホームズが……まさかの大スランプ!?
- 京都を右往左往する登場人物たちの可笑しくも哀しい様に笑った。聖なる怠け者の破綻でスランプに陥ったという作者の苦悩が想像できた。これはモリミーの凱旋でもある。
- 途中のどんでん返し等あり、最後まで不思議な話だった。
- ヴィクトリア朝京都を舞台にしたシャーロック・ホームズと言われれると、なんじゃそら!?と思わず声に出てしまうが森見登美彦が書いたとあれば読まずにはいられまい。
10位「日本扇の謎」有栖川有栖
舞鶴の海辺の町で発見された、記憶喪失の青年。名前も、出身地も何もかも思い出せない彼の身元を辿る手がかりは、唯一持っていた一本の「扇」だった……。そして舞台は京都市内へうつり、謎の青年の周囲で不可解な密室殺人が発生する。事件とともに忽然と姿を消した彼に疑念が向けられるが……。動機も犯行方法も不明の難事件に、火村英生と有栖川有栖が捜査に乗り出す!
10位「難問の多い料理店」結城真一郎
。オーナーシェフからバイトを頼まれた主人公。噓みたいな儲け話に主人公はこの店は「ある手法」で、探偵業も担っているらしいことに気づく。「もし口外したら、命はない」オーナーの正体とは。
- 謎解きモノかと思いきや最後にはゾクっとさせられるダークな展開に驚く『真相はあなた次第』の新感覚のミステリ。
- 連載開始時からここまで計算していならすごいよな、と感心。なかなかおもしろかったです。
- 真相の究明というよりも謎解きがキモになっていてその解釈を楽しむという新感覚なミステリ。
13位「六色の蛹」櫻田智也
青年が主人公。6色の色をテーマに虫大好き人間の主人公が解く事件の鍵。人間の奥に潜む善意と本性。温かな余韻に包まれる連作短編集。
14位「名探偵の有害性」桜庭一樹
かつて、名探偵の時代があった。ひとたび難事件が発生すれば、どこからともなく現れて、警察やマスコミの影響を受けることなく、論理的に謎を解いて去っていく正義の人、名探偵。そんな彼らは脚光を浴び、黄金時代を築き上げるに至ったが、平成中期以降は急速に忘れられていった。
……それから20年あまりの時が過ぎ、令和の世になった今、YouTubeの人気キャンネルで突如、名探偵の弾劾が開始された。その槍玉に挙げられたのは、名探偵四天王の一人、五狐焚風だ。「名探偵に人生を奪われた。私は五狐焚風を絶対に許さない」と語る謎の告発者は誰なのか? かつて名探偵の助手だった鳴宮夕暮——わたしは、かつての名探偵——風とともに、過去の推理を検証する旅に出る。
15位「虚史のリズム」奥泉光
ら戻り地元で療養中、神島の長兄・棟巍正孝夫妻が何者かによって殺害される。正孝の長男・孝秋とその妻・倫子は行方知れず、三男の和春も足取りが掴めない。他の容疑者も浮かぶ中、神島の依頼を受けた石目は、初めての「事件」を追い始める。ほどなく、石目のもとに渋谷の愚連隊の頭から新たな依頼が舞い込む。東京裁判の行方をも動かしうる海軍の機密が記されている「K文書」の正体を探ってほしいと言われるが……。
16位「彼女が探偵でなければ」逸木 裕
森田みどりは、高校時代に探偵の真似事をして以来、人の〈本性〉を暴くことに執着して生きてきた。気づけば二児の母となり、探偵社では部下を育てる立場に。時計職人の父を亡くした少年(「時の子」)、千里眼を持つという少年(「縞馬のコード」)、父を殺す計画をノートに綴る少年(「陸橋の向こう側」)。〈子どもたち〉をめぐる謎にのめり込むうちに彼女は、真実に囚われて人を傷つけてきた自らの探偵人生と向き合っていく。謎解きが生んだ犠牲に光は差すのか。痛切で美しい全5編。
17位「暗殺」柴田哲孝
奈良県で日本の元内閣総理大臣が撃たれ、死亡した。その場で取り押さえられたのは41歳男性の容疑者。男は手製の銃で背後から被害者を強襲。犯行の動機として、元総理とある宗教団体とのつながりを主張した――。
日本史上最長政権を築いた元総理が殺された、前代未聞の凶行。しかし、この事件では多くの疑問点が見逃されていた。致命傷となった銃弾が、現場から見つかっていない。被害者の体からは、容疑者が放ったのとは逆方向から撃たれた銃創が見つかった。そして、警察の現場検証は事件発生から5日後まで行われなかった。
警察は何を隠しているのか? 真犯人は誰だ?
18位「伯爵と三つの棺」潮谷験
フランス革命が起き、封建制度が崩壊するヨーロッパの小国で、元・吟遊詩人が射殺された。
容疑者は「四つ首場」の改修をまかされていた三兄弟。五人の関係者が襲撃者を目撃したが、犯人を特定することはできなかった。三兄弟は容姿が似通っている三つ子だったからだ。
DNA鑑定も指紋鑑定も存在しない時代に、探偵は、純粋な論理のみで犯人を特定することができるのか?
19位「ぼくらは回収しない」真門浩平
数十年に一度の日食が起きた日、名門大学の学生寮で女子学生が亡くなった。密室状態の現場から自殺と考えられたが、小説家としても活躍し、才気溢れた彼女が死を選ぶだろうか?
三年間をともに過ごしながら、孤高の存在だった彼女と理解し合えないまま二度と会えなくなったことに思い至った寮生たちは、独自に事件を調べ始める――。第十九回ミステリーズ!新人賞受賞作「ルナティック・レトリーバー」を含む五編を収録。大胆なトリックと繊細な心理描写で注目を集め、新人賞二冠を達成した新鋭による、鮮烈な独立作品集。
20位「兎は薄氷に駆ける」 貴志祐介
資産家を殺害した疑いで逮捕された主人公。しかしそれは、過去に殺人の容疑で捕まった自らの父の冤罪を雪ぐためだった。主人公は本当に殺人犯なのか。それとも冤罪なのか。冤罪をテーマとした法廷ミステリー。
こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 文春図書館拡大版ミステリー を書きます。