
情報の非対称性という言葉があります。
非対称性とは「売り手」のみが専門知識と情報を有し、「買い手」はそれを知らないこと。
電子ゲームで使われる「チートプレイ」みたいなことが、テクノロジーの世界ではよくあります。
しかし、遊びの世界ならまだしも、生活の根幹にかかわるところで行われるとしたらどうでしょう。
「その他大勢の人が理解できていないこと」を理解できている人は圧倒的に有利です。
理解できている少数の人が、支配力を手に入れてしまう世界で何が起きているのか。
本書は、世界で10億人が利用すると言われるインスタグラムの内側を辿りながら、私たちが知っておくべき教訓を探ります。
インスタグラムが創業したのは今からおよそ10年前のこと。
当時のSNSはブログやツイッターなどの文字が中心でした。
写真投稿をメインにしたインスタグラムの登場はたちまち注目の的になりました。
新しいサービスに目をつけたのがフェイスブックです。
フェイスブックが抜け目ないサービスで拡大してきたのに対し、インスタグラムはその美的センスが利用者に評価された会社で、社風は180度違います。
その違いを顧みず、フェイスブックは1100億円をかけ、創業2年のインスタグラムを買収します。
本書は、同じSNSサービスとはいえ、社風もコンセプトも全く違う会社が辿った確執の物語です。
“消費者としての我々は、決断が下されたあとの結果しか知り得ない。しかし本書では、そこに至った経緯が丁寧に描かれている。”
一回の投稿で億単位を稼ぎ出すインフルエンサーという職業の誕生。
他人の投稿と自分の投稿につけられた「いいね」の数を巡って、精神をすり減らす人たちの増加。
守秘義務という厚いベールで閉ざされたインスタグラム・フェイスブックの内情は普通の利用者には知らされてきませんでした。
膨張するサービスの裏側で経営者たちは何を考え、どのように行動したのか、本書は膨大な関係者のインタビューと証言を組み合わせながら描いていきます。
利用ガイドを読むだけでは知ることがないこのサービスの狙いと戦略に私たちは知らないうちに選択肢を狭められている。その実態を理解することでサービスに対する冷静な知見が手に入るような気がします。