
よく立ち寄る書店の一つが、二子玉川にある蔦屋家電です。一階は文芸書と実用書、ビジネス書コーナーになっています。すぐ隣には楽天本社があることから選書にもひねりがあります。
平積みされた本の中にはロングセラーも並んでいるのは、土地柄もあるのでしょう。2012年に発行された売れ筋本を紹介します。
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ザッポス体験

ザッポスとはスペイン語で靴を意味する「ザパトス」に由来する社名。インターネットで靴を通販するこの会社は、創業10年で年間売上高10億円に成長し、アマゾンに買収されました。
インターネット通販は実店舗より経費が安く済むことです。注文を受け次第、商品をベンダーの倉庫から消費者に届けることから店舗にかかる費用がカットできます。
しかし、靴の場合、消費者は実店舗で試しばきをして選ぶことが多いことから靴の通販は盲点になっていました。ここに目をつけたザパトスの創業者は客の不安やニーズに積極的に対応することで靴の通販をビジネスにすることに成功したのです。
本書はザッポスの起業に携わった人たちに成功法則を取材したビジネス書です。
本書では成功法則を五つの章にわけて、成功を生み出した仕組みをまとめています。
- パーフェクト・フィットをめざせ
- 迅速で手間いらずのサービスを
- パーソナルに踏み込め
- ストレッチ(STRETCH)
- 勝つために遊ぶ
インターネットで成功した企業についてまとめた書籍の多くは、経営方法やシステムなど引いた目線で書かれた本が少なくありません。
ザッポスは人材採用に力を入れる会社であることがわかります。それも求人の応募者に独自の価値観を求める異色なものです。伸びる企業は文化をここまで重視するのかと驚かされます。
また、本書では起業の過程で生じた問題を実際に解決した当事者の証言を元に構成されています。読者は消費者ではなく起業家になった気持ちで追体験できるのです。
まとめ
ザッポス体験とは 行き届いたサービスを提供し、やりとりを透明にし、異質な要素も寛大に受け入れること。生産性は高いが遊び心も忘れず、社員と顧客の心がしっかりと繋がること。
企業の成功ストーリーは「よいしょ半分」で読むことにしています。個別の事例には致命的な失敗もあるはずだからです。
注目したいのはメッセージの部分です。本書からは、企業というものは短期的な利益に惑わされず将来の顧客のために正しいと思うことを実践すること。そのための投資を惜しまない姿勢であるという点については納得できる内容の本でした。