恋愛小説の世界は、時代や国、文化を超えて、私たちの心を揺さぶり続けています。
愛の喜びや痛み、嫉妬や切なさといった感情を鮮烈に描き出す作品は、読者にとって特別な体験を提供してくれます。
今回は、代官山蔦屋書店が選んだ海外の名作恋愛小説を、心に残るストーリーとともにご紹介します。
恋愛のもどかしさと輝きが交錯する、珠玉の物語たち
リディア・デイヴィスの「話の終わり」から、アガサ・クリスティーの「ナイルに死す」まで、各作家が描く「恋」と「愛」の形は一つひとつが魅力的です。それぞれの作品に込められた深い感情を、ぜひ一緒に楽しんでいきましょう。
「話の終わり」リディア・デイヴィス
語り手の〈私〉は12歳年下の恋人と別れて何年も経ってから、交際していた数か月間の出来事を記憶の中から掘り起こし、かつての恋愛の一部始終を再現しようと試みる。だが記憶はそこここでぼやけ、歪み、欠落し、捏造される。正確に記そうとすればするほど事実は指先からこぼれ落ち、物語に嵌めこまれるのを拒む――
ミランダ・ジュライなど下の世代の作家にもファンの多い「アメリカ文学の静かな巨人」デイヴィスの、代表作との呼び声高い長編が待望の復刊!
「キャロル」パトリシア ハイスミス
クリスマス、おもちゃ売り場の女店員はキャロルと出会う…サスペンスの女王による、二人の女性の恋の物語。映画化原作ベストセラー。
「ブラームスはお好き」フランソワーズ・サガン
パリに暮らすインテリアデザイナーのポールは、離婚歴のある39歳。美しいがもう若くないことを自覚している。恋人のロジェを愛しているけれど、移り気な彼との関係に孤独を感じていた。そして出会った美貌の青年、シモン。ポールの悲しげな雰囲気に一目惚れした彼は、14歳年上の彼女に一途な愛を捧げるが——。二人の男の間で揺れる大人の女の感情を繊細に描く、洒脱で哀切な恋愛小説の名品。
「悲しみよ こんにちは」フランソワーズ サガン
セシルはもうすぐ18歳。プレイボーイ肌の父レイモン、その恋人エルザと、南仏の海辺の別荘でヴァカンスを過ごすことになる。そこで大学生のシリルとの恋も芽生えるが、父のもうひとりのガールフレンドであるアンヌが合流。父が彼女との再婚に走りはじめたことを察知したセシルは、葛藤の末にある計画を思い立つ……。
20世紀仏文学界が生んだ少女小説の聖典、半世紀を経て新訳成る。
「嫉妬/事件」アニー・エルノー
アニー・エルノーの2作品を収録 「嫉妬」 別れた男が他の女と暮らすと知り、私はそのことしか考えられなくなる。どこに住むどんな女なのか、あらゆる手段を使って狂ったように特定しようとしたが……。盲執に取り憑かれた自己を冷徹に描く。 「事件」 1963年、中絶が違法だった時代のフランスで、妊娠してしまったものの、赤ん坊を堕ろして学業を続けたい大学生の苦悩と葛藤、闇で行われていた危険な堕胎の実態を克明に描く。
「美女と野獣」ボーモン夫人
父の旅のみやげに一輪のバラの花を頼んだため心優しいベルは恐ろしい野獣の住む城へ……野獣が彼女に求めたものは――。詩人ジャン・コクトーが絶賛した美しく幻想的な物語。
「オペラ座の怪人」ガストン・ルルー
19世紀末、パリ。華やかなオペラ座の舞台裏では、奇怪な事件が続発していた。首吊り死体、シャンデリアの落下。そして、その闇に跋扈する人影。“オペラ座の怪人”と噂されるこの妖しい男は、一体何者なのか? オペラ座の歌姫クリスティーヌに恋をしたために、ラウラはこの怪異に巻き込まれる。そして、運命の夜、歌姫とラウルは、まるで導かれるように、恐ろしい事件に飲み込まれていく――。
「ナタリ-」ダヴィド フェンキノス
最愛の人を失う悲劇、大きすぎる喪失感から、人はどのように立ち直るのか。そんな繊細な物語を、丁寧な心理描写、説明のつかない恋心、思わず心が温かくなるような人との交流を通して描いていく、とても個性的な物語。
「赤いモレスキンの女」アントワーヌ・ローラン
男はバッグの落とし主に恋をした。手がかりは赤い手帳とモディアノのサイン本。パリの書店主ローランが道端で女物のバッグを拾った。中身はパトリック・モディアノのサイン本と香水瓶、クリーニング屋の伝票と、文章が綴られた赤い手帳。バツイチ男のローランは女が書き綴った魅惑的な世界に魅せられ、わずかな手がかりを頼りに落とし主を探し始める。英王室カミラ夫人も絶賛、洒脱な大人のおとぎ話第二弾。
「ハロルド・フライのまさかの旅立ち」レイチェル・ジョイス
65歳のハロルドに元同僚の女性から、末期癌でホスピスにいるという手紙が届く。
彼は20年会っていない彼女に返事を書くが、ポストへの投函を躊躇ううちに、一人で1000キロの道を歩き、直接気持ちを届けようと決意する。
徐々に明かされる家族の秘密に世界が泣いた感動作。
「ナイルに死す」アガサ・クリスティー
美貌の資産家リネットと夫サイモンのエジプトでのハネムーンに暗雲が垂れこめていた。サイモンのかつての婚約者が銃を隠し二人を付け回しているのだ。不穏な緊張感が高まるなか、ナイル川をさかのぼる豪華客船上に一発の銃声が轟く。それは嫉妬ゆえの凶行か? 船に乗り合わせたポアロが暴き出す意外な真相とは?