
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で自宅で過ごす時間が増える中、犬や猫を飼う人も増えています。しかし、ペットを手放すケースもテレビなどで報道されるようになりました。その背景にはどんな事情があるのでしょうか。
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犬と猫 ペットたちの昭和・平成・令和

『ドリームボックス 殺されてゆくペットたち』(2006年)、『車いす犬ラッキー 捨てられた命と生きる』(2017年)などで、人とペットの関係を問い続けてきた著者が、動物愛護管理センターで所長をつとめる一人の公衆衛生獣医師を主人公に描く、壮絶な<犬猫殺処分>クロニクル。
目に見えないものは存在しないみものに等しいとみなされる現代社会。隠れた事実を可視化するのはメディアの役割です。最前線の現場で働く人に近づき、事実を深堀りしたリポートからは、思いがけない発見があります。
動物愛護センターには、飼えなくなったり、負傷した犬猫、迷子の犬や親から見放された子猫たちが収容されます。ペットブームの陰で、ペットとして扱われなかった動物たちに待ち構える運命は過酷です。
私たちができることは、現実から目を背けずに事実を受け止めながら、啓もう活動を続けることしかありません。
行政や団体によっては、意見の食い違いがあったり、連携が取れなかったりすることもあり、アンタッチャブルな世界であることもこの本を弓進むうちに見えてきます。
単なる殺処分はかわいそう、捨てる人が悪いという浅い見方ではなく、問題解決にはなにが必要なのかを思考する努力が必要です。現場の声を積み上げた労作を通じて想像力を働かせることの重要性を感じます。
「捨てられた犬猫は、どのような運命を辿るのか。交通事故に遭う、人間による虐待行為の危険も大きい。山野の野生動物に捕食される、野生化した仲間に襲われることもある。負傷して動けなくなっている状態で、保護されるケースは多い。」(小林照幸『犬と猫 ペットたちの昭和・平成・令和』P44) pic.twitter.com/hAH5IIfe7N
— 本ノ猪 (@honnoinosisi555) October 7, 2020
小林照幸さん
1968(昭和43)年、長野県生まれ。作家。明治薬科大学在学中の1992(平成4)年、奄美・沖縄に生息するハブの血清造りに心血を注いだ医学者を描いた『毒蛇』(TBSブリタニカ・文春文庫)で第1回開高健賞奨励賞を受賞。1999(平成11)年、終戦直後から佐渡でトキの保護に取り組んだ在野の人々を描いた『朱鷺の遺言』(中央公論新社・中公文庫・文春文庫)で第30回大宅壮一ノンフィクション賞を当時、同賞史上最年少で受賞。信州大学経済学部卒。明治薬科大学非常勤講師。
自治体が増えています
最前線の現場から、深い気づきを感じるのは何気ないエピソードです。声高に理屈を叫ぶのではなく、何気ない風景を切り取り関係者の声を紡ぎだす姿勢こそが、取材者ができる声援であり、協力なのかもしれません。