
今も続く社会を不安に突き落としたコロナ禍。その象徴がマスクの転売騒動でしたね。
「転売ヤー」に怒り心頭した中高年も多かったのではないでしょうか。でも、高度成長の社会で揉まれてきたシニア世代には、正直、今の社会を語る資格はありません。競争社会を支えるルールそのものが変わっているからです。
社会の仕組みを根本から学び直す、毒のある参考書です。
Contents
不道徳な経済学 転売屋は社会に役立つ

転売屋、ヤクの売人、売春婦、満員の映画館で「火事だ!」と叫ぶ奴…「不道徳」な人々を憎悪し、「正義」の名の下に袋叩きにする現代社会。おかしくないか?彼らこそ、そうした偏見や法の抑圧に負けず私たちに利益をもたらしてくれる「ヒーロー」なのだから!自由という究極の権利を超絶ロジックで擁護、不愉快だけれど知らないと損する「市場経済のルール」を突きつけた全米ベストセラーを、人気作家・橘玲が超訳。
絞りカスのような年齢の私が推薦するのもおこがましいですが、
このブログ記事にめをとめてくださったあなたがGAFAMなどで働く優秀なエンジニアならこの本は読むべき価値がある本です。
才能や実力のある人がその才能を伸ばしていく上で国家というものがどれだけ邪魔臭いものか。その意味を絶妙なレトリックで解き明かす本だからです。
訳者は橘玲さん。冒頭で橘さんはマイケル・サンデルさんの本を引用しながら、現在の代表的な四つの政治的立場を解説しています。四つの政治的立場とは、功利主義、共同体主義、リベラリズム、そしてリバタリズムです。この四つの象限を理解すると、今私たちの国で議論されている立場がいかに古臭いものかがわかります。
ちなみに、功利主義はベンサムが唱えた「最大多数の最大幸福」、共同体主義は伝統や共同体志向の保守主義、リベラリズムは人権尊重の進歩派です。ではリバタリズムは何か。「自分のことはほっておいてくれ」と言う定義には笑いながら腹に落ちました。
政治の話になると極端な人であればあるほど我を忘れがちになりますが、世界を冷ややかに見ることも大切です。これからどんどん複雑になっていく世界で生き残るためには、こうした冷めた視点と行動力が必要になるのかもしれません。
一部首肯しかねる所もありましたが、全体を通じて橘玲節が炸裂しており、多様な視点で価値観や倫理を考える(知る)事が出来る一冊でした。
「法そのものが邪悪であるならば、その法に従う者も邪悪である」という記述は秀逸で、「悪法も法」として従うのが国民の義務と考えていた私にとって、大げさに言えばコペルニクス的転回をもたらしました。
超訳されてます。ていうか超訳って意味を厳密に知らなかったので調べたら、外国語を自国語に直訳したのち分かりやすく意訳していくこと、らしいです。なるほどって感じです。
まとめ
世界中がコロナで大騒ぎしている中でもマスクをかぶろうとしないアメリカ人の理屈。それもそだななんて無防備に口走ると村八分に会いそうな国の国民感情。どっちもどっちだと洞ヶ峠を決め込んで高みの見物ってのが一番健康に良さそうだと感じた本でした。