1月発行の新刊についてザックリ分類すると
- 歴史×本格
- SF×恋愛
- ホラー×警察
- 家族×戦争
- AI×リーガル
- 民俗学×怪異
など、ジャンル横断型のミステリーが多い月でした。
特に目立つのは
「人間の内面・社会の闇を“謎”として扱う作品」
が増えていることです。
- 『辺境恋愛詩』雪舟えま,2026-01-05
- 『月白』宇佐美まこと,2026-01-07
- 『本日ノ亡者 娑婆ノ縁尽キテ』津田美幸,2026-01-07
- 『カンザキさん』ピンク地底人3号,2026-01-07
- 『最後の皇帝と謎解きを』犬丸幸平,2026-01-09
- 『おまあ推理帖』諸田玲子,2026-01-09
- 『ひまわりと銃弾』麻宮好,2026-01-14
- 『叫び』畠山丑雄,2026-01-14
- 『分水 隠蔽捜査11』今野敏,2026-01-15
- フェイスウォッシュ・ネクロマンシー,栗原知子,2026-01-15
- 『スノウマンの葬列 真々部律香の推理断章』麻根重次,2026-01-15
- 『もの言うピストル 終戦、張家口で何が起こったか』田中敬子,2026-01-16
- 『雨音』久永実木彦,2026-01-21
- 『あしたの肖像』岩井圭也,2026-01-21
- 『七浪京大卒無職・院等寺庵乃雲の奔走』佐川恭一,2026-01-21
- 『桜葬』斎堂琴湖,2026-01-21
- 『灰は灰 新宿探偵 鬼束啓一郎』香納諒一,2026-01-21
- 『やっぱり犬は知っている』大倉崇裕,2026-01-21
- 『沈黙と爆弾』吉良信吾,2026-01-21
- 『少年とハリス』稲葉稔,2026-01-21
- 『カナエトメイ 怪奇専門探偵事務所2』嗣人,2026-01-21
- 『2222』大山淳子,2026-01-21
- 『コンフィデンシャル・ゲーム』石井仁蔵,2026-01-21
- 『愛しいチグサ』島田荘司,2026-01-21
- 『警視庁公安部喫茶課』陽向悠里,2026-01-22
- 『あいつらの末路』真梨幸子,2026-01-26
- 『三重県津市西区平山町3-15-7』大舟,2026-01-26
- 『おおきな口がまっている』一條次郎,2026-01-26
- 『この罪を消し去ってください』高谷再,2026-01-26
- 『あるネット掲示板の奇妙な書き込み(1)』機村械人,2026-01-27
- 『グレタ・ニンプ』綿矢りさ,2026-01-27
- 『エデンの裏庭』吉田篤弘,2026-01-27
- 『被告人、AI』中山七里,2026-01-28
- 『生きとるわ』又吉直樹,2026-01-28
- 『踊る男 (木部美智子シリーズ)』望月諒子,2026-01-29
- 『はくしむるち』豊永浩平,2026-01-29
- 『幽民奇聞』恒川光太郎,2026-01-30
- 『冷蔵庫婆の怪談』大島清昭,2026-01-30
『辺境恋愛詩』雪舟えま,2026-01-05
SF×恋愛×詩情ミステリーという独自路線。
歌人でもある雪舟えまの文体は、情緒と余白が命。
“恋愛”を扱いながら、SF的設定がもたらす距離感・孤独・観測者の視点が、
「心の謎」を解くミステリーとして読めるのが最大の魅力。
事件ではなく“感情の不可解さ”を解き明かすタイプの新しい恋愛ミステリー。
『月白』宇佐美まこと,2026-01-07
戦後の殺人鬼事件を再検証する“戦後史×犯罪心理ミステリー”。
宇佐美作品らしく、
- 事件の闇
- 戦後社会の歪み
- 記憶のねじれ
が絡み合い、**「真相は本当に一つなのか」**という問いが突き刺さる。
歴史の影に潜む“語られなかった動機”を掘り起こす、重厚な社会派。
『本日ノ亡者 娑婆ノ縁尽キテ』津田美幸,2026-01-07
寺院の御開帳をめぐる“宗教ミステリー×因習サスペンス”。
住職が御開帳を拒む理由=寺に隠された“過去の罪”。
閉ざされた宗教空間の緊張感と、津田作品特有の湿度のある心理描写が光る。
「寺」という密室空間が、事件の構造そのものになっているのが巧い。
『カンザキさん』ピンク地底人3号,2026-01-07
ブラック企業×悪魔的存在という、現代ホラーと社会派の融合。
暴力と不条理の連鎖が“怪異”なのか“人間の闇”なのか曖昧で、
読者の倫理感を揺さぶるタイプの問題作。
「悪魔とは誰か?」という問いが、読者自身に跳ね返ってくる。
『最後の皇帝と謎解きを』犬丸幸平,2026-01-09
溥儀と日本人絵師が密室殺人に挑む“歴史本格ミステリー”。
紫禁城という舞台装置がまず強い。
身分制度・政治的緊張・文化差異が、謎解きのロジックに絡むのが面白い。
歴史的制約を逆手に取った「その時代にしか成立しないトリック」が魅力。
『おまあ推理帖』諸田玲子,2026-01-09
江戸のおばあちゃん“おまあ”が事件を解く、人情×本格のハイブリッド。
諸田玲子の時代描写は安定感抜群で、
“おばあちゃん探偵”という設定が、
観察力・生活知・人情の機微を武器にした独自の推理を生む。
時代物の温かさと、ミステリーの知的快感が両立している。
『ひまわりと銃弾』麻宮好,2026-01-14
戦時下の若者の奇跡を描く“昭和青春×戦争ミステリー”。
事件そのものより、
**「なぜ彼らはその選択をしたのか」**という心理の謎が中心。
歴史の中で埋もれた“個人の真実”を掘り起こすタイプの作品。
『叫び』畠山丑雄,2026-01-14
芥川賞受賞作。
政治と宗教(政と聖)を描く、社会構造のミステリー。
事件の謎というより、
「社会の仕組みそのものが謎」という視点で読む作品。
権力の構造を読み解く“社会の暗号解読”としてのミステリー。
『分水 隠蔽捜査11』今野敏,2026-01-15
シリーズ11作目。
今野敏の真骨頂である“組織論×警察ミステリー”。
スキャンダルと死体をめぐる攻防は、
**「警察組織の論理 vs 真実」**というシリーズのテーマがより深化。
事件より“組織の動き”が面白い、唯一無二の警察小説。
フェイスウォッシュ・ネクロマンシー,栗原知子,2026-01-15
祖母の霊を降ろせるようになった40代女性の物語。
これは“霊能×家族×心理ミステリー”。
怪異よりも、
**「家族の記憶のほうがよほど怖い」**というリアルな恐怖が刺さる。
ホラーの皮をかぶった、切実な家族ミステリー。
『スノウマンの葬列 真々部律香の推理断章』麻根重次,2026-01-15
吹雪のテント、異様な死体、暗号、密室。
本格ミステリーの王道を全部盛りしたような作品。
女性探偵・真々部律香の“推理無双”は、
論理の切れ味が鋭く、シリーズ化を予感させる。
冬の山岳という極限状況が、トリックの説得力を高めている。
『もの言うピストル 終戦、張家口で何が起こったか』田中敬子,2026-01-16
母の告白から始まる“家族史×戦争犯罪ミステリー”。
「父にピストルを向けた」という一言が、
家族の歴史を再構築する鍵になる。
家族の沈黙が“最大の謎”として立ち上がる、重厚な作品。
『雨音』久永実木彦,2026-01-21
銃声と雨音が重なる詩的なサスペンス。
残された銃弾が導く“恋愛×犯罪の交差点”。
叙情性が強く、
「音」が物語の伏線として機能するのが特徴。
『あしたの肖像』岩井圭也,2026-01-21
故人を描くために事故の真相を探る“追悼ミステリー”。
岩井作品らしく、人物の内面、記憶のズレ、語りの不確かさが絡み、静かな余韻が残る。
『七浪京大卒無職・院等寺庵乃雲の奔走』佐川恭一,2026-01-21
ミステリーというより“中年青春×社会風刺”。
ただし、「なぜ彼は七浪し、なぜ今こうなったのか」
という人生の謎解きとして読むと面白い。『学歴狂の詩』で話題の著者が描く、疾風怒濤の“中年”青春物語
『桜葬』斎堂琴湖,2026-01-21
線路へ消えた男の謎を追う“儀式性犯罪ミステリー”。
冷酷な刑事の視点が、事件の異様さを際立たせる。
儀式性・象徴性を帯びた犯罪は、現代ミステリーのトレンドの一つ。
『灰は灰 新宿探偵 鬼束啓一郎』香納諒一,2026-01-21
定年退職を待たずに警察を辞め、新宿界隈で探偵稼業に勤しむ鬼束。時に警察の手も借りながら真相に迫る。新宿を舞台にした“ハードボイルド探偵小説”。
鬼束のキャラクター造形が魅力で、警察との距離感が絶妙。都市の闇を歩く探偵像が、古典的でありながら今風。
『やっぱり犬は知っている』大倉崇裕,2026-01-21
犬が主役の警察ミステリー続編。
犬の嗅覚・行動学が“推理の武器”になる独自性が強い。
動物ミステリーとしても、警察小説としても一級品。
『沈黙と爆弾』吉良信吾,2026-01-21
監察課が主人公の“組織内部ミステリー”。
家族小説の情感と、警察小説の緊迫感が両立している。
「監察」という地味な部署をここまでドラマにする力量がすごい。
『少年とハリス』稲葉稔,2026-01-21
開国前夜。肉親の愛に飢えた少年、日本の行く末を案じるアメリカ人総領事。幕末動乱期に下田という港町で出会った二人の絆が、この国の運命を大きく変えてゆく。幕末×外交×少年成長。
歴史ミステリーというより、**歴史の裏側に潜む“選択の謎”**を描く作品。
『カナエトメイ 怪奇専門探偵事務所2』嗣人,2026-01-21
探偵と助手は従業員が立て続けに自殺したというコンカフェに潜入調査することに…。
呪具×バディ×ホラー。
コンカフェの連続自殺という現代的テーマが刺さる。怪異と現代社会の病理が地続きになっているのが特徴。
『2222』大山淳子,2026-01-21
猫弁作者が描くSF転生。
ミステリー的には、
「なぜ転生したのか」「何をやり直すのか」
という人生の謎が中心。
『コンフィデンシャル・ゲーム』石井仁蔵,2026-01-21
チェス×世界情勢×サスペンス。
語りが変幻自在で、
「一手の意味」が物語の構造そのものになる知的エンタメ。
『愛しいチグサ』島田荘司,2026-01-21
島田荘司がSF恋愛に挑む異色作。
閉塞感・孤独感が強く、“恋愛の謎”を本格ミステリー的に扱うのが面白い。
『警視庁公安部喫茶課』陽向悠里,2026-01-22
公安の心理戦・情報戦をリアルに描く“インテリジェンス・ミステリー”。
元公安の著者ならではのディテールが武器。元公安の「中の人」だった著者だからこそ、本当の心理戦、情報戦をここまでリアルに描けた。
『あいつらの末路』真梨幸子,2026-01-26
フリーライターの景子から送られてきた、『助けて』というメール。婚活サイトで出会った夫と、郊外のニュータウンで幸せに暮らしているはずだった彼女の身に一体何が?
真梨幸子らしい“女の業×郊外×不穏”。
メールの「助けて」から始まる、
日常が地獄に変わる系サスペンス。
『三重県津市西区平山町3-15-7』大舟,2026-01-26
それは、存在するはずのない住所。けれどネットで、書籍で、新聞で、雑誌で。
あらゆるところでその住所の情報を目にし、作家の小林は、まるで見入られたように、その住所について調べ始める。
存在しない住所をめぐる“都市伝説×ホラー×ミステリー”。
情報が増えるほど謎が深まる構造が秀逸。
『おおきな口がまっている』一條次郎,2026-01-26
荒唐無稽で目が離せない連作短編集。
ミステリー的には、
「なぜこんな世界が成立しているのか」
という設定の謎が魅力。
『この罪を消し去ってください』高谷再,2026-01-26
罪を犯した少女は隠蔽のために、サポートAIを利用するが――。その決断は、恐るべき惨劇へ辿り着く!少女たちの儚い想いと悪意が交錯する、第10回ジャンプホラー小説大賞最高賞
『あるネット掲示板の奇妙な書き込み(1)』機村械人,2026-01-27
オカルト配信者・仲島勇水はネットの怪談に潜む邪神「アダバミ様」を発見する。その存在を広めるべくライブ配信を始めるが、そこにはある意図があり――。オカルト板に潜む怪異を解き明かすモキュメンタリーホラー!
『グレタ・ニンプ』綿矢りさ,2026-01-27
2001年『インストール』で文藝賞を受賞し作家デビューしてから25年――綿矢りささんが挑んだ初のコメディ小説の主人公はファンキーな妊婦!?
『エデンの裏庭』吉田篤弘,2026-01-27
「あなたに『本当のこと』をひとつかみ差し上げましょう」川のそばにあるお菓子屋〈おやつ〉。ある日店を訪れた青年は、チョコレートと引き換えに不思議な「種」を置いていく。お菓子屋で渡される“種”の謎。
寓話的で、「本当のこととは何か」をめぐる哲学ミステリー。
『被告人、AI』中山七里,2026-01-28
AIがヒトに〈殺意〉を抱く可能性はあるのか。AIとの共存共生が現実になるなかで、われわれの未来を問うリーガル・ミステリー。中山七里らしい“逆転の連続”が期待できる。
『生きとるわ』又吉直樹,2026-01-28
公認会計士として傍目には順調な生活を送っている岡田。 しかし、高校時代の仲間だった横井に500万円を貸したことから、その人生は狂い始める“人間関係サスペンス”。
又吉の観察眼が光る。
『踊る男 (木部美智子シリーズ)』望月諒子,2026-01-29
記者・木部美智子は一見無関係な数々の犯行が、ある中学の同窓生たちを標的としていることに気づいた。木部美智子シリーズ。同窓生を狙う連続犯行という、「過去の因縁」型ミステリーの王道。
『はくしむるち』豊永浩平,2026-01-29
暴力が支配する世界に、「ヒーロー」は現れるのか? 戦争の傷が刻まれた沖縄で、新しい地図を描くための「戦い」がはじまる。沖縄を舞台にした暴力と戦争の物語。ミステリー的には、暴力の根源を探る“社会の謎”が中心。
『幽民奇聞』恒川光太郎,2026-01-30
若き民俗学者・鶯谷玄也が、文明開化と共に姿を消した歴史の闇に生きる集団「キ」の痕跡を追う連作集。民俗学×怪異×歴史ミステリー。恒川作品らしい“異界の気配”が濃厚。
『冷蔵庫婆の怪談』大島清昭,2026-01-30
都市伝説“冷蔵庫婆”を模倣した児童殺害事件。
都市伝説×犯罪心理という鉄板の組み合わせ。
「怪談が現実に侵食する瞬間」を描く、ホラーとミステリーの境界線上の作品。
