年をとるからこそ、見える世界がある「少年と犬」

少年と犬
フルタニ
こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。

誰が作っても一定の視聴率を上げられるとてわれた番組があります。それは「赤ちゃん」と「ペット」を扱った企画です。さすがに最近ではその手の企画が乱立気味なのでテレビの企画としては安易に成立しませんが、メッセージがしっかり込められていれば話は別です。

今年話題の新刊をご紹介します。

少年と犬

少年と犬

震災で職を失った和正は、認知症の母とその母を介護する姉の生活を支えようと、犯罪まがいの仕事をしていた。 ある日和正は、コンビニで、ガリガリに痩せた野良犬を拾う。

セールスポイント
  • 動物好きの人たちにオススメする物語
  • 傷つき悩む人びとと、彼らに寄り添う犬を描く感涙作
  • ハードボイルド作家が見せる別の持ち味

犬という使い

都会を舞台に悪事や犯罪に手を染める人々を描く作家として馳さんは様々な作品を発表してきました。ベストセラー作家となった馳さんは“ノワールの旗手”と言われるほどになりました。

ところが、直木賞を受賞した新作『少年と犬』はこれまでの馳さんのイメージと異なる内容でした。

「もう肩肘張ってノワール、ノワールって言わなくてもいいんじゃないかと。その時書きたいものを書きたいように書けばいいんじゃないかって思えるようになったんですね」

東日本大震災で飼い主を失った1匹の犬が、出会った人々との交流を通じて人々を救う物語だったのです。なぜ悪事の世界から180度違う世界ともいえるテーマを描こうと思ったのでしょうか。

「年をとってくると多分いろんなことが変わってくる。例えばもう30代の時なんか、自分が死ぬなんてことは考えてもないでしょ。でも50過ぎると、あと10年か20年しか生きられないんだろうなとか。そういうことも現実になってくるから、いろいろなことが変わってくるよ。それを肯定的に受け止められるかどうか」

馳さんにはある心境の変化がありました。それは11年連れ添った愛犬の最期を看取ったことがきっかけでした。

犬との別れは辛いですよ。本当に胸を引き裂かれるような辛さですけど、それ以前に10何年間、すごく幸せだった10何年というのがあるんですよね。犬は寿命が短いんでそうかもしれないけど、人間だって必ず死んで別れるんですよ。誰とだって。だったらその必ず来る別れを嘆き悲しむよりも、その幸せな10年間を取りたい。

(犬は)人という愚かな種のために、神様だか仏様だかが遣わしてくれた生き物なのだ

「救いのない死」もあるけれど、「救いのある死」もある。大事なのは「死ぬ」その日まで、人生をどう生きるかだと気づかされたのだといいます。

「作家である自分と個人の自分というのは切り離せない。だから、その時の自分がどう生きているかということが、作品に如実に反映されると思う。“それを書いた時は、そういう俺だったよ”というだけの話。未来はどうなるかなんて分かんないから、自分でこうなるだろうと思ったことなんか簡単に覆るよ。だから、自分の可能性を狭めない方がいいよ、というぐらいのことは言いたいね」

書評

読みやすい文章で、あっという間に読めた。犬と人間の交流。救いを求めているのは人間の方なのかもしれない。

久しぶりに小説で泣きました。犬がつないだ絆。いろんな人と犬が出会い生活をしていく。犬が探していた少年のと出会いと別れには涙が溢れてきたした。犬って賢い生き物なんですね。

馳星周といえばダークな不夜城。ダークだよなあと思いつつ犬で浄化されていく。

馳星周さん

55歳。代表作は1996年、31歳のとき新宿・歌舞伎町を舞台に、血で血を洗うマフィアの争いを描いた『不夜城』でデビュー。都会を舞台に悪事や犯罪に手を染める人々を描く「ノワール小説=暗黒小説」作家として知られる。

まとめ

登場する人物は孤独な老人や冷え切った夫婦、そして心に傷を負った少年など、逃げ場のない厳しい状況に置かれた人たちでした。それはノワール小説で登場した人物たちの持つ隠された一面。救いがたい存在である人間を救うのは犬であるという作家の思いを感じました。