『このホラーがすごい! 2024年版』は『このミス』編集部が制作した初のホラー小説ガイドブックです。
2023年4月~2024年3月に発売されたホラー小説から、国内・海外ベスト20の作品が掲載されています。
このホラーがすごい! 2024年版 ベスト10
1「禍」小田 雅久仁
「俺はここにいると言ってるんだ。いないことになんかできねえよ」。恋人の百合子が失踪した。彼女が住むアパートを訪れた私は、〈隣人〉を名乗る男と遭遇する。そこで語られる、奇妙な話の数々。果たして、男が目撃した秘技〈耳もぐり〉とは、一体 (「耳もぐり」)。ほか
- どの短編も、口、耳、目、肉、鼻、髪、肌…といった人体のパーツがそれぞれのテーマになっている。読書好きの人が知ったら引き返せなくなること必至の「食書」
- 誰もがちらっともっている願望とかを元に膨らませた短編集。笑う本?
- どうやってこんな表現を思いつくのだろう?という禍々しいのに容易に想像できるリアルさが気持ち悪くてもはや読みながら何度か笑ってしまった
1「近畿地方のある場所について」背筋
情報をお持ちの方はご連絡ください。近畿地方のある場所にまつわる怪談を集めるうちに、恐ろしい事実が浮かび上がってきた。近畿地方のとある場所を舞台に様々な物語が展開、どれも数ページ、時間も場所も人もバラバラ、読んで行くと断片的に繋がっていく。
- 近畿地方のとある場所。それにまつわる情報を集めることでどんどん怪異に引き込まれていく、じわじわとした恐怖がたまらなかった。
- 自分の周りにも現れるのではないかと思わせられる恐怖感がありました。構成も秀逸で巻末の袋とじも相まって一層恐さが掻き立てられます。
- 風呂敷を広げに広げて真相を有耶無耶ににするのではなく、はっきりオチが付けられているのもポイントが高い。
3「をんごく」北沢 陶
妻を亡くした画家の壮一郎は巫女に口寄せを依頼する。しかし妻を降ろした巫女は誰も知らない歌を歌い、最後に「奥さんな、行んではらへんかもしれへん」と語る。その後、死んだ妻の簪がいつのまにか机の上にあるなどの怪奇現象が起き始め……大正時代の大阪を舞台にした長編。
- ホラーミステリーでありながら、恐怖と悲哀そして感動が同居した小説。
- 怪談は苦手なのに、人情味あふれるお話でひきこまれました。巫女や妖怪までもが親身になってくれるおもしろさ。
- おどろおどろしい雰囲気でゾクゾクとしながら読んだ。ホラーなのに最後は爽やかですらある。納得の3冠。
4「本の背骨が最後に残る」斜線堂有紀
読まないほうがいい。虜になってしまうから……。その国では、物語を語る者が「本」と呼ばれる。一冊につき、一つの物語。ところが稀に同じ本に異同が生じる。そこで開かれるのが市井の人々の娯楽、「版重ね」だった。どちらかの「誤植」を見つけるために各々の正当性をぶつけ合う本と本。互いに目を血走らせるほど必死なのはなぜか。表題作の他「痛妃婚姻譚」「『金魚姫の物語』」「本は背骨が最初に形成る」など7編収録
- 独特の世界観に息を呑む展開の連続、満足度200%の作品でした。これが短編集でよかったかも。
- なかなかにグロいファンタジー。想像力を働かせると痛い熱い辛いになる?
- 痛妃婚姻譚がベスト。残酷な描写が美しく、思わず溜息が漏れた。
5「でぃすぺる」今村 昌弘
小学6年生のユースケ、サツキ、ミナの3人が、サツキの従姉妹が殺された未解決の殺人事件の謎を追う謎解きミステリ。謎を追う3人が行き着いた真実とは。
- ハラハラしながら読み終えました。しかし、屍人荘の殺人の作家は単なるミステリーでは終わらせない。思わず笑いが出ました。
- オカルトでも何でもありにならないように、ミステリーのルールに沿って推理が進むのが、分かりやすかった。
- 最初はオカルトから始まる探偵団かと思いきや、本格的な推理合戦と伏線回収、謎を解き明かしていく探偵的な要素も含んだ作品。
6「最恐の幽霊屋敷」大島 清昭
幽霊を信じない探偵・獏田夢久(ばくたゆめひさ)は、屋敷で相次ぐ不審死の調査を頼まれる。婚約者との新生活を始めた女性、オカルト雑誌の取材で訪れたライターと霊能者、心霊番組のロケをおこなうディレクターと元アイドル、新作のアイデアを求める映画監督とホラー作家。滞在した者たちが直面した、想像を絶する恐怖の数々と、屋敷における怪異の歴史を綴ったルポ。そのなかに、謎を解く手掛かりはあるのか?
- 夜読むと夢に見るくらいには怖かった…。
- これはマジで怖い。栃木県にある曰く付きの一軒家。心霊現象も出没する霊も多岐にわたってるし、幽霊屋敷をウリにして貸し出しちゃう家主も怖い。
- なんとなく『貞子VS伽椰子』を彷彿とさせる読後感。
7「梅雨物語」貴志 祐介
命を絶った青年が残したという一冊の句集。隠された恐るべき秘密が浮かび上がっていく。
巨大な遊廓で、奇妙な花魁たちと遊ぶ夢を見る男。夢に隠された謎を解かなければ命が危ない。
朝、起床した杉平進也が目にしたのは、広い庭を埋め尽くす色とりどりの見知らぬキノコだった。想像を絶する恐怖と緻密な謎解きが読者を圧倒する三編を収録した、貴志祐介真骨頂の中編集。
- 終始不穏な雰囲気が漂う。重くて暗い、オカルト寄りの話だけど、どれも趣向が凝っていて一筋縄にはいかない。
- いわゆる「信頼できない語り手」の三篇。最初の一つが特に面白い。多重解決でもあるし、そもそも俳句の精読という地味な過程に読み応えを持たせる筆力が素晴らしい。
- 3話とも途中から話の筋は見えてくるので意外性は無いが、「梅雨物語」というタイトル通りにジメジメした感じを味わえる。
8「わたしたちの怪獣」久永 実木彦
運転免許証を取得したつかさが家に帰ると、妹が父を殺していた。立ち尽くす姉妹。その時、テレビから東京湾に怪獣が出現したという緊急ニュースが流れる。つかさは父の死体を棄てに東京にいくことを思いつく。短編として初の日本SF大賞候補作(「わたしたちの怪獣」)。伝説的な“Z級”映画の上映会中、街にゾンビが出現。参加者たちは館内に籠城しようとするが。
- 収められている4篇とも雰囲気が暗いけど、とても魅力があった。
- SF×ファンタジー?な短編集。怪獣にタイムトラベラー、吸血鬼、ゾンビ。ぞくぞくする(笑)。
- 最後は脳内に伊福部マーチが流れました。どの作品も、きれいな文章で描かれる絵がいい。
9「きみはサイコロを振らない」新名 智
中学時代の友人の死が忘れられず、そんな信条で日々を淡々と過ごす高校生の志崎晴。不審な死を遂げたゲーマー男性の遺品を調べることに。大量に残されたゲームをひとつずつ遊んで検証する三人。するといつのまにか晴の日常に突然〈黒い影〉が現れるように――。呪いのゲームはどこにあるのか? その正体と晴の呪いを解く方法は。
- きれいな青春ホラー。呪いのゲームの伝播方法や呪われてしまったから視える黒い影やら、なかなか面白い。
- 青春+オカルト。オカルトがなければ青春物語としても広げられたろうが、そこに呪いが加わると、目新しい。
- 怖い話なんだけど怖くなかった。ミステリーかと思っていたけど、オカルトの要素が強かった。
9「食べると死ぬ花」芦花公園
最愛のひとり息子を失った桜子は、カウンセラーの久根からふしぎな壺を与えられる。3つの約束さえ守れば、息子が帰ってくるというが……。「もう本当に最悪でした、もちろん褒め言葉」「吐きそうなくらい嫌な話」連載時から話題沸騰! デビュー作でネット民を震撼させたホラー界の気鋭が描く、血と涙で彩られる美しき地獄。
- すごく厭な気持ちになるのがわかっているのにグイグイ読ませる。
- こわい話ではあるが、何だか読み進めてしまう。理解しづらい内容もあったが、久根ニコライの存在感は圧倒的。 精神的に食い込んでくる作品
- 心が元気な時に読むと面白いけど、疲れてる時に読むのはお勧めしません。
こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 このホラーがすごい! を書きます。