本の雑誌 が選ぶノンジャンルのベスト10

フルタニ

こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 本の雑誌 が選ぶノンジャンルのベスト10 を書きます。※本ページにはPRが含まれます

2023年11月から2024年10月までに発行された新刊本から、本の雑誌が年間ベストという「王者」を選ぶベスト10。

本の雑誌 が選ぶノンジャンルのベスト10

第一位「越境」砂川文次

自衛官出身、『小隊』の砂川文次が圧倒的なリアリティーで描くノンストップ・ミリタリーアクション巨編!
ロシア軍の侵攻から10年が過ぎた北海道東北部は、ロシア軍や自衛隊の残党、民兵、マフィア、ヤクザなどが群雄割拠している。日本政府「支援飛行隊」のイリキは、ヘリコプター墜落から九死に一生を得る。救ってくれたヤマガタ、アンナと共に、血なまぐさい「無法地帯」を奥へ奥へと進んだイリキの前に、ついに究極の兵器が現れる!

  • 無政府状態となった近未来のSF。釧路での作戦に派遣された自衛隊パイロットのイリキだが、作戦途中で墜落し、そこから行き当たりばったり決死のロードムービーが始まる。
  • どこまでいってもマチズモとニヒリズムとリアリズムは、いっそ清々しい。けどどこかでは同じような状況なのだと気付く。
  • 読み進めるのに疲れる部分はあるけど好き。村上龍さんの『半島を出よ』を彷彿とさせる。イヌがカッコよくて胸が熱くなる。

第二位「自立からの卒業」勝山 実

著者の勝山さんは1971年生まれ。高校3年生の時に不登校になり、以降、「ひきこもり」となりました。勝山さんはひきこもりを、「学校にも行かない、アルバイトもしない、ただ無条件で生きる権利が保障された世界を求める人間ストライキ」といいます。
相次いで繰り出される「自立支援」はひきこもりへの支援ではなく、「自立支援業者」の「支援」であると本質を喝破し、いのちの瀬戸際で苦しむひきこもりに、みっともなくてもいい、寄生してでも「生きよう」と呼びかける。これはひきこもりだけでなく、障害者や生活困窮者への支援とも響き合うことです。

  • 自分の恥ずかしくて口外しないようなエピソードを赤裸々にかつまたユーモラスに記すことにかけてはこの著者ほどの方は稀有なんじゃないだろうか。
  • 私自身もひきこもりに近い人間なので、共感できるところはある。

第三位「孤独への道は愛で敷き詰められている」西村 亨

アラフォーの柳田譲の前に現れた三人の女との出会いと別れ。愛を求め、また与えようとして却って孤独へと突き進んでしまう魂の悲哀を描く。

  • 私小説なんだろうねえ。こういう文体珍しく、一気に読んで面白かった。こじれて、こじれて、って感じがいい。
  • こじらせアラフォー男の、さまざまに問題や悩みを抱える女たちとのやり取りと人生の重なりがどうしようもなく現実的で情けなくて、厭世観全開の語りがめんどくさいのに癖になる。
  • いるいる!あるある!が心でこだました。

第四位「バタン島漂流記」西條奈加

荒れ狂う海と未知の島、そして異国の民。ため息すら、一瞬たりとも許されない――船大工を志すものの挫折し、水夫に鞍替えした和久郎は、屈託を抱えながらも廻船業に従事している。
ある航海の折、船が難破してしまう。
船乗りたちは大海原の真っ只中に漂う他ない。生還は絶望的な状況。
だがそれは和久郎たちにとって、試練の始まりに過ぎなかった……。
史実に残る海難事故を元に、直木賞作家が圧倒的迫力で描く海洋歴史冒険小説。

  • 江戸時代の(350年前)史実をもとにした海難漂流記。持ってる道具は斧一丁。それで新しく船を造り上げたのが史実と思うと驚きしかなかった。
  • あきらめず日本に帰るために船を造るあたりからワクワクした。読んでよかった。
  • 西條先生の取材、お見事です。

第五位「ハヤブサを盗んだ男――野鳥闇取引に隠されたドラマ」ジョシュア・ハマー

これは実際に起きた犯罪の物語であり、壮大な冒険譚であり、最後のページまで息をつかせない――イギリスはバーミンガムの空港で、稀少なハヤブサの卵を持ち出そうとした男が捕らえられる。取り調べを担当するは、絶滅危惧種の密輸撲滅を目指す英国野生生物犯罪部の捜査官。ひと筋縄ではいかない犯人との攻防を軸に、卵コレクターや鷹狩り愛好家、ハヤブサレースを楽しむ中東の富裕層の存在など、闇取引の背後にある世界と、各国の野生生物保護の取り組みが臨場感たっぷりに描かれる。ジンバブエの国立公園からパタゴニアの火山まで、そして北極圏近くのツンドラ地帯からドバイの砂漠の豪華な鳥舎まで――4大陸を股にかけ、〈完璧な鳥〉を我がものにしたいと願う無謀で傲慢で、破壊的な衝動にとらわれた男の足跡をたどった国際ジャーナリストによる、手に汗握る一冊

  • 世界を股にかけた狂気の卵ハンターを猛烈に追ったノンフィクション。追う側と追われる側のやりとりも面白い。
  • 本作品の主人公はハヤブサを所有したい中東の富豪のために危険を顧みず卵の盗みを繰り返す。
  • 厚いけど飽きずに読めた。

第六位鳥と港」佐原 ひかり

高学歴だが仕事に馴染めず退職したみなとと、不登校中の高校生飛鳥。ふとしたきっかけで、2人の文通が始まるが、そのうち文通を仕事にすることを思いつく。アナログな文通と今どきなクラファン。それぞれ思い悩みながらも、前に向いて進む青春譚。

  • 一気読みだった。読後は心がふわっと軽くなる。
  • 誰かに手紙を書きたくなるし、自分宛ての手紙を受け取りたくなる!
  • SNSが発達する中で、相手のために言葉を選んで紡いで、便箋を選んで、切手を選んで送るという行為が素敵で、手紙を書いて文通をしたくなった。

第七位「青嵐の旅人」(上下)天童荒太

文久2(1862)年。舞台は、260年間続いた江戸幕府がいま、まさに消えようとする頃の伊予松山藩(愛媛県)。代々続くおへんろ宿「さぎのや」で育てられた娘ヒスイと弟の救吉は、危機一髪の場面を救われたことをきっかけに、年少の藩士、青海辰之進と知り合う。医術で人を救うべく精進する救吉に、ある日郷足軽隊の調練に医師見習いとして同行せよと命が下る。誰よりも戦を厭い、平和を願うヒスイは、やがて救吉が真の戦に送られることは必定とみて、男装して弟に同道することを決意する。 

  • 幕末の伊予松山藩の騒動、軽い時代小説として読むならいいかも。
  • 時代は幕末、2人が出会う歴史上の人物達との絡みが楽しくてページを捲る手が止まらない。
  • 翡翠(カワセミ)は「けなげで強く美しい」

第八位「癲狂院日乗」車谷長吉

私小説作家・車谷長吉が、『赤目四十八瀧心中未遂』で直木賞を受賞する前後1年間の苦悩と煩悶の日々を綴った未発表の日記。

  • 2024年8月初版。発表を前提として書かれながら、二十五年経て出版されたもの。
  • 各出版社の編集者との確執が…。この書きぶりは今の私には辛いかも。引っ張られて鬱々とした気分になってしまいました。
  • 一番問題の夏目漱石の息子のところで女中をしていた叔母が94歳で死ぬのを待って、問題のある箇所は人名を「よ氏」などとして刊行。

第九位「東京降りたことのない駅」本橋信宏

車窓を流れるあの駅、あの街……。
いつもはなんとなく通りすぎてしまっていた「隣の駅」には、何がある?
JR、私鉄、地下鉄、モノレール…東京には660もの駅が存在する。いつも使う路線にも、見たこと聞いたことはあっても「降りたことのない」駅があるだろう。そんな「謎の駅」で途中下車、知られざる街をぶらり歩き、裏側をのぞく旅。
「異界シリーズ」でご存知、街歩きの達人・本橋信宏が清濁併せ掘り起こす!

  • とりあえず駅を決めて、そこから物語を紡ぐ実力がすごい。行ってみたくなる。
  • 事件に限らず、土地の歴史やいわれを知っていると、想像力を働かせながら興味深く歩けますね。
  • 久住昌之や清野とおるがやってそうな企画ですが、あちらの和む系とは違ってこちらは必ずそこで起きた陰惨な事件現場を訪ねるあたりがさすが

第十位「本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む」かまど,みくのしん

「生まれて一度も読書をしたことがない男が本を読んだら、一体どうなるんだろう」
そんな素朴な疑問がきっかけで生まれた「本を読んだことがない32歳が初めて『走れメロス』を読む日」というオモコロ記事。
1人の男が人生で初めて本を読む。ただそれだけの記事が爆発的に拡散され、100万人の目に留まる大ヒット記事に……!

  • 「本に正しい読み方なんてない」んですよね。この本は私に新しい読書の仕方を教えてくれました。感謝してます。
  • みくのしんさんの読み方がすごくピュアで良い反応で、こんな読み方あるんだ、って面白かった。
  • 1行読むことに感じたことを発言するから面白いし、それに対してかまどさんか突っ込むから、おもしろくて声に出して笑いながら読みました。