2023年11月から2024年10月までに発行された新刊本から、本の雑誌が年間ベストというミステリーの「王者」を選ぶベスト10
本の雑誌 が選ぶエンターティンメントのベスト10
第1位「方舟を燃やす」角田光代
1967年鳥取県岩美郡生れの柳原飛馬(ヒウマ)と1949年杉並区久我山生れのた望月不三子(フミコ)の2人の1967~2022年の日常生活を描き、杉並区を接点にして、現在のコロナ禍の非日常性を描き出した大河的な小説。
- 昭和から令和ってこんなにも変わったんだ。
- 何かを信じないと崩れそうになる世の中に一石を投じる 信じたいものがきっと真実なのだ。
- その時々に起こることは異なるけれどデマや嘘も含め何を信じるかを問われ続ける。
第2位「愚か者の石」河崎秋子
明治時代、国事犯として、北海道月形の樺戸集治監(後の樺戸監獄)に13年の刑期で収監された瀬戸内巽。そして、囚人がどんどん死んでいく、まるで地獄のような集治監で出会った、巽より10歳近く年上の山本大二郎。彼が大事に持っている石は何なのか。
- 北海道の刑務所の過酷な歴史を知るとともに、罪を償うことの意味を問い詰めてくる。
- 骨太な味のある話。ほんの少し前まで日本ってこうだったんだなと思うと感慨深い。
- 良質な歴史小説として興味深く読みました。
第3位「また団地のふたり」藤野千夜
生家の団地に暮らす、なっちゃん(桜井奈津子)とノエチ(太田野枝)。
イラストレーターのなっちゃんはフリマアプリで「不用品」を売買し、大学非常勤講師のノエチとおしゃべりをしては、近所のおばちゃんたちを手助けし、ちょっとした贅沢を楽しむ。共同菜園でイチゴを摘んだり、フリマイベントに出店したり、健康診断の結果を気にしつつも台湾料理をつまみに台湾映画を楽しんだり…。
- 主人公たちの住む昭和の団地、懐かしくも温かい人間関係が令和の時代にも残り続けると良いなぁ〜と思います。
- こういう作品に触れると、何気ない日常を楽しめることがどれほど幸せか、ということに気づかされます。
- ドラマを観てから、どうしても、あの二人のイメージで読んでしまう。普通が楽しい。
第4位「孤独への道は愛で敷き詰められている」西村 亨
第5位「女の子たち風船爆弾をつくる」小林エリカ
日露戦争30周年に日本が沸いた春、その女の子たちは小学校に上がった。できたばかりの東京宝塚劇場の、華やかな少女歌劇団の公演に、彼女たちは夢中になった。
ある時、彼女たちは東京宝塚劇場に集められる。いや、ここはもはや劇場ではない、中外火工品株式会社日比谷第一工場だ。彼女たちは今日からここで、「ふ号兵器」、すなわち風船爆弾の製造に従事する……。膨大な記録や取材から掬い上げた無数の「彼女たちの声」を、ポエティックな長篇に織り上げた意欲作。
- 仕方がなかった、嫌々やったのだとしても、自分がした事の先に犠牲者がいたとしたら向き合わなければならない。男たちの責任問題に終始せず、罪に向き合った女たちの記録。
- 抑制された文章で書いているが、却って戦争で青春を奪われた少女たちの無念さが伝わってくる。
- 短文は一気に立ち上がるため胸にぐんと迫りくる。心底おそろしい。これからも繰り返されるだろう「春が来る。桜の花が咲いて散る」。
第6位「富士山」平野啓一郎
些細なことで、私たちの運命は変わってしまう。
あり得たかもしれない幾つもの人生の中で、
何故、今のこの人生なのか?その疑問を抱えて
生きていく私たちに、微かな光を与える傑作短篇集。
- ささやかな出来事が分岐点となり、世界が分裂し続ける。別の世界を想像することは、きっと、この世界を大切に生きることにつながる。
- あのときこうしていれば、とかもしこれをしたらとか考えることあるけど、それがふんだんに散りばめられている。
- 自分では気づかない偶然の連なりで日常は動いてる。ヒヤリとしたり、ゾワッとしたり。
第7位「猛獣ども」井上荒野
高原の閑静な別荘地で「姦通」していた男女が熊に殺された。別荘地の管理人と6組の定住者に事件がもたらした波紋。一筋縄では行かない愛の姿をたっぷりの毒を含んで描く長編。男女二人の管理人と、管理人6組の夫婦の関係が各章で描かれる。
- 井上荒野節が炸裂の作品で読むのが、とても楽しかった。
- 気が付いたら熊よりも「猛獣」なのは人間ではないかという結論に至る。
- 定期的に摂取したい井上荒野作品。
第8位「生殖記」朝井リョウ
直木賞作家の朝井リョウさん最新作で掲げたのはあらすじもジャンルも伏せる“ネタバレ厳禁”ベテラン編集者も驚きの方針の裏にいったいどんな思いが…
直木賞作家の朝井リョウさん
— NHK おはよう日本 公式 (@nhk_ohayou) December 10, 2024
最新作で掲げたのは
あらすじもジャンルも伏せる
“ネタバレ厳禁”
ベテラン編集者も驚きの方針の裏に
いったいどんな思いが…
あすの #おはよう日本 7時台で📺
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- なにか専門書のような、観察日記のような、不思議な読書体験。
- 小説ではなく朝井リョウさんのエッセイだと思って読みました。
- 40代で読んだ今、主人公の気持ちが分かる。
第9位「冬に子供が生まれる」佐藤正午
三十年前にかわした密かな約束、
二十年前に山道で起きた事故、
不可解な最期を遂げた旧友……
平凡な人生なんていったいどこにあるんだろう。
『月の満ち欠け』から七年、かつてない感情に心が打ち震える新たな代表作が誕生。読む者の人生までもさらけ出される、究極の直木賞受賞第一作!
- 裏テーマとして大切な伴侶を失なった人達の物語であるとも感じた。
- 実験的、野心的な作品。
- 謎は残ったままだったが、心を揺さぶられる名作だった。
第10位「死んだ山田と教室」金子 玲介
夏休みが終わる直前、山田が死んだ。飲酒運転の車に轢かれたらしい。山田は勉強が出来て、面白くて、誰にでも優しい、二年E組の人気者だった。二学期初日の教室。悲しみに沈むクラスを元気づけようと担任の花浦が席替えを提案したタイミングで教室のスピーカーから山田の声が聞こえてきたーー。教室は騒然となった。山田の魂はどうやらスピーカーに憑依してしまったらしい。〈俺、二年E組が大好きなんで〉。声だけになった山田と、二Eの仲間たちの不思議な日々がはじまったーー。
- 進学などの環境の変化で過去の自分と決別した経験がある人には胸がきゅっとなる本です。
- 長い時間が経ち、教室の風景がおぼろげになった「大人」の胸にこそ迫るものです。
- 変わっていく環境、人には知られたくなかった本心。踏み入りたくない部分を容赦なく書く。今までに読んだことのないシチュエーションでおもしろかった。
こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。本の雑誌 が選ぶエンターティンメントのベスト10を書きます。※本ページにはPRが含まれます