
ユニクロや宅配業界などにも潜入取材を試み続けるジャーナリストが、Amazonの物流センターに短期のバイトとして潜入取材したルポ。潜入取材しか持ちえない臨場感に加え、膨大緻密な資料収集と裏取りが、秘密のベールに閉ざされた巨大企業の実像を描き出しています。
横田増生さんの本を紹介します。
Contents
「潜入ルポamazon帝国」
巨大物流センター、即日配送、カスタマーレビュー、マーケットプレイス、AWSなど、アマゾンのさまざまな現場に忍び込んでは「巨大企業の光と影」を明らかにしていく力作ルポルタージュ。
- 労働現場
- 出品やレビューなどの実態
- 書籍直取引への算入
- 新規事業への取り組み
- 節税
著者が勤務したのは小田原にある物流センター。ここでは最新鋭のシステムが導入され、作業員は庫内を無駄に移動することなく荷物を仕分けます。一見作業員の負担を軽くするかに見えるこのシステムの狙いはあくまで「顧客優先」。荷物を寸秒でも早く正確に配送するのが目的です。
著者は作業中の死亡事故をきっかけにその様子を社員や遺族から聞き出し、配送トラックに同乗し、さらに出品事業者やフェイクレビューの書き手など幅広い当事者を訪ね歩いて証言を積み重ねていきます。
アマゾンの影とは、一言で言うと「顧客以外無視」。これに集約される。「顧客以外」とは、アマゾン倉庫アルバイト、アマゾン正社員、宅配ドライバー、マケプレ出品者、税務当局などである。アマゾンはこれら関係者の思惑をほとんど無視し顧客の便益を最大化しようとする。
アマゾン叩きの立場から書かれたものではありませんが、巨大化した企業が持つ指向性に不気味な共通性を感じます。著者の体験からは私たちの生活を支える社会システムの裏の顔を垣間見ることができます。
横田増生さんとはどんな人
1965年に福岡県生。関西学院大学文学部英文科卒。予備校講師を務めた後、アメリカのアイオワ大学大学院でジャーナリズムを学ぶ。物流業界紙の編集長を務め、フリージャーナリストになる。著書に「アマゾン・ドット・コムの光と影」「ユニクロ帝国の光と影」「仁義なき宅配 ヤマトVS佐川VS日本郵便VSアマゾン」などがある。
- 出版日:2019/09/17
- ページ数:354ページ
まとめ
アマゾンという職場に対する感情は「世界共通」です。人間を部品のように扱い敬意を示さないAmazonの企業体質は日本だけにとどまりません。その本質は「顧客優先」。客の要望を最優先で実現するためには手段を択ばない姿勢は新自由主義の理想と重なります。ルポに憤りながらも、それでもamazonで物を買わざるを得ない消費者としての自分に唖然とさせられます。