名作の条件は読後感。読み終わってなにか自分の心の中にのこる物があることだと思います。
それはあれもこれもある必要はなく、一本の灯火のように向かうべき方角を差し示してくれるだけでいいのです。
ライオンのおやつ
表紙に描かれているのは水面に浮かぶ小さな船です。
瀬戸内海でしょうか。手前にはミカン畑を思わせる緑が置かれ、穏やかに凪いだ海には島影が描かれています。
小川糸さんの著書はだいたい簡素なデザインです。本屋の店頭に面陳したとしても、派手に着飾った新刊書たちの間にかすみがちです。
なぜこんな風景画なのかと感じた疑問が、読み終わったと同時に解けました。
最初、目が奪われたのは帯に書かれた帯でした。帯は「人生の最後に食べたい”おやつ”はなんですか」と問いかけます。答えは表紙に描かれていたのです。
主食とは生きること。おやつは楽しむこと。そして船は岸を離れ水平線上に浮かぶ太陽に向かっています。ああこういう未来が待っていてくれるならすばらしい。
読む人の心の中をじんわりと。そして、揺り動かすように暖めてくれる作品です。
こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 ライオンのおやつ を書きます。※本ページにはPRが含まれます