代官山蔦屋書店の文学コンシェルジュが贈る「オールタイム・ベスト」2025年2月号。
今月は、心に響く物語やエッセイ集を厳選してご紹介します。日常にそっと寄り添う作品や、胸を揺さぶる感動作など、多彩なジャンルが揃うラインアップです。朝霧咲さんの切なくも温かな『どうしようもなく辛かったよ』や、王谷晶さんのユニークな発想が光る『他人屋のゆうれい』など、文学ファン必見の単行本が勢揃い。四季折々の情景を切り取った『掌篇歳時記』や、山田詠美さんの珠玉のエッセイ集も見逃せません。この機会に、新しい一冊との出会いを楽しんでみませんか?
- 「どうしようもなく辛かったよ」朝霧 咲
「どうしようもなく辛かったよ」朝霧 咲
「特別になりたい」と願う中学生の若菜は、日々、バレー部での練習に明け暮れていた。しかし三年生になると、顧問の異動によってチームは大きく動揺してしまう。若菜の「ある提案」によって落ち着きを取り戻したチームは、最後の大会へ向かうのだが――。
夏から、少女たちは「それぞれの最終学年」に直面することになった。学業優秀な真希、学校を休み続ける愛美、裏と表をうまく使い分ける桜、ルールから逸脱することができないくるみ。部活というつながりを失った少女たちが隠してきた本心、我慢してきた関係性。少女たちの卒業までの日々が、始まった。
「くらべて、けみして 校閲部の九重さん」こいし ゆうか
文芸界震撼!至宝の校閲秘話から生まれた変態的情熱溢れるお仕事コミック!
普段ほめられることはなく、陽の当たることのない縁の下の力持ち――それが校閲。ひとつの言葉、ひとつの表現にこだわる日本語のプロとして本作りに欠かせない校閲者たちは、個性豊かな文芸作品とどう向き合っているのか? 文芸版元だからこそ知り得た作家とのエピソードや秘蔵の校閲あるあるを楽しめる校閲者の日常物語!
「掌篇歳時記 春夏」
麋角解(さわしかのつのおつる)、東風解凍(とうふうこおりをとく)、桃始笑(ももはじめてわらう)――あまりにも美しい、四季を彩る“季節の名前”。
古来伝わる「二十四節気(にじゅうしせっき)七十二候(しちじゅうにこう)」に導かれ、手練れの十二人がつむぐ匂やかな小説集。
「掌篇歳時記 秋冬」
綿柎開(わたのはなしべひらく)、水始涸(みずはじめてかるる)、朔風払葉(きたかぜこのはをはらう)――。
季節を表す言葉を鍵に、物語は膨らんでゆく。
十二人の作家の想像力で、旧暦「二十四節気七十二候」が現代の物語に生まれ変わった。
「キッチンつれづれ」
世界はキッチンで回っている! 大崎梢、近藤史恵、永嶋恵美、新津きよみ、福田和代、松村比呂美、矢崎存美、福澤徹三。短編の名手8人が「台所」をテーマに競演。「ここだけのお金の使いかた」「おいしい旅」シリーズなど、続々重版中の人気ユニットによる全編書下ろし短篇集。
「他人屋のゆうれい」王谷 晶
急死した伯父の部屋には人懐っこい隣人たちと「幽霊」が付いてきた!
長い内廊下でつながるアパートメゾン・ド・ミルでは、「ふつう」を外れた人が寄り添い生きる。
文芸界最注目の著者・王谷晶が描く現代版長屋噺!
「もの想う時、ものを書く-Amy’s essay collection since 2000」山田 詠美
もう会えない人の記憶、夫との愛しい日常、そして文学。2000年代に各紙誌で発表されたエッセイ、文庫解説、芥川賞選評を一冊に。作家生活40周年記念のエッセイ集。
「深淵のテレパス」上條 一輝
「変な怪談を聞きに行きませんか?」会社の部下に誘われた大学のオカルト研究会のイベントで、とある怪談を聞いた日を境に高山カレンの日常は怪現象に蝕まれることとなる。暗闇から響く湿り気のある異音、ドブ川のような異臭、足跡の形をした汚水――あの時聞いた”変な怪談”をなぞるかのような現象に追い詰められたカレンは、藁にもすがる思いで「あしや超常現象調査」の二人組に助けを求めるが……選考委員絶賛、創元ホラー長編賞受賞作。
「カフネ」阿部暁子
法務局に勤める野宮薫子は、溺愛していた弟が急死して悲嘆にくれていた。弟が遺した遺言書から弟の元恋人・小野寺せつなに会い、やがて彼女が勤める家事代行サービス会社「カフネ」の活動を手伝うことに。弟を亡くした薫子と弟の元恋人せつな。食べることを通じて、二人の距離は次第に縮まっていく。
「カラフル」阿部暁子
高校入学式の朝、荒谷伊澄は駅のホームでひったくり犯を捕まえた。
その際に、犯人の前に出て足止めをしようとしたのが、車椅子に乗った少女だった。
その後の事情聴取で判明したのだが、渡辺六花というその少女も、伊澄と同じ高校の新入生だった。
弁が立ち気の強い六花に、伊澄はヤな女だな、と感じたのだが……?
夢を追い続けられなくなった少年と少女の挫折と再生の恋物語!