
番組の企画を立てるとき、制作者の頭の中に広がるのは妄想です。取材した事実をつなぎ合わせるために、全体像のイメージを膨らませ、カードゲームのように並び替えながら解決策を探ります。
番組制作では当たり前の考え方が、現代社会では意外とブレークスルー的に非常識な考え方であることを改めて学んだ本です。
Contents
直感と論理をつなぐ思考法
「直感」を「論理」につなぎ「妄想」を「戦略」に落とし込む思考=「ビジョン思考」=「直感と論理をつなぐ思考法」について書かれています。
情報があればあるほどいいかというと、そうともいえません。人間の脳が扱える情報には限りがあるからです。書店に行って読みたい本が見つからないのは処理できる情報に限りがあるからです。
逆にシンプルであればいいかというと、わかりやすくなる半面視野が狭くなってしまいます。
SNSでやり取りされる情報が、いつのまにか自分の狭い世界に最適化されてしまっていた。西遊記の主人公の孫悟空が釈迦の手の中から出られなかったような寓話に思い当たる人も多いのではないでしょうか。
価値のあるものは妄想からしか生まれない。「イシュードリブン」から「ビジョンドリブン」へのパラダイムシフトが進んでいる背景には、問題解決型のアプローチが限界を迎えていることがある気づかされる本です。
ビジョン思考を習慣化する上で何より大切なのは、そのための余白を人為的につくることだといいます。それは図式化するなら「妄想→知覚→組替→表現」のサイクルを回すこと。
右脳、左脳モードの往復を繰り返すことで鍛えられるのだそうです。
まとめ
本書を読みながら、つらつら頭の中に浮かんできたのがこの言葉。
「テレビは中学一年生でもわかるように作れ」
という言葉です。
その考え方を貫いたのが池上彰さんです。池上さんが手がけた「週刊こどもニュース」は、初めて見た人でも内容が理解できるように、難しい言葉はやさしい言葉に言い換えるなど手間をかけてつくったのだそうです。
番組の視聴者は子どもだけでなく、年配の人たちの人気を集めることになりました。理由は新聞を見ても内容について行けない大人たちのガイドとして評価されたからです。
わかったつもりでいても、深いところまで理解しないと身につきません。そうしたニーズに応えるためには伝える側も学ぶ努力が欠かせないのです。
わかりやすい説明をするために必用なのは、ものごとをなるべく平易なことばに置き換えてみることです。小学校で学んだようなことばを使い、シンプルな表現を心がけることです。
シンプルなことばであるほど、中身が理解しやすくなり、結果として心の中に強く刺さるのです。参考になるのは、そぎ落とされたことばを使い、読んでみてなるほどそうだったのかと頷ける本を読むことです。