【予想】 このミステリーがすごい! 2025年版 国内編 注目作品はこれだ

フルタニ

こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 このミステリーがすごい! を書きます。※本ページにはPRが含まれます

現役時代、本屋でお手伝いをしていました。楽しみだったのは続々入荷する新刊本。毎年楽しみにしていたのがミステリーのランク当てでした。

今年もこのミステリーがすごい! 2025年の予想を始めます。

対象となるのは2023年10月から2024年9月に刊行された新刊本です。ミステリーナビが詳しくまとめています。その中から注目の作品を月別にセレクトしました。

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Contents
  1. このミステリーがすごい! とは
  2. 9月
  3. 8月
  4. 7月
  5. 6月
  6. 5月
  7. 4月
  8. 3月
  9. 2月
  10. 1月
  11. 12月
  12. 11月
  13. 10月
  14. まとめ

このミステリーがすごい! とは

1988年から『別冊宝島』(宝島社)で発行されている、ミステリー小説のブック・ランキングムック本です。国内編、海外編の二つからなり、ランキングは本屋大賞などの参考にもされています。最近宝島社は調子が良くなさそうですが、頑張って欲しいものです。

9月

二人一組になってください」 木爾 チレン 2024/9/19

「このクラスには『いじめ』がありました。それは赦されるべきことではないし、いじめをした人間は死刑になるべきです」
とある女子高の卒業式直前、担任教師による【特別授業(ゲーム)】が始まった。突如開始されたデスゲームに27人全員が半信半疑だったが、余った生徒は左胸のコサージュの仕掛けにより無惨な死を遂げる。

  • デスゲーム単体としても物語としても終わり方が個人的にかなり好みで、これまでの木爾チレン作品のなかでも一番好き。
  • 付属の栞に記載のあるクラスカーストの表を見ながら読み進める緊迫感のある物語は、ページをめくる手が止まらなかった。
  • さすがの木爾チレンさんでした。めちゃくちゃ面白かった。
https://www.tumblr.com/crookedphantombread/763994708116684800

舞台には誰もいない」 岩井圭也 2024/9/11

他人を演じている間だけは、ここにいていいんだと思える。
ゲネプロの最中に一人の女優が命を落とした。彼女の名は遠野茉莉子。開幕を直前に控えた舞台で主役を演じる予定だった。舞台演劇界で高い評判を得て、名声をほしいままにしていた茉莉子。彼女をその地位に押し上げたのは、劇作家の名倉敏史だった。
茉莉子の死からほどなくして、舞台の関係者が一堂に会するなか、名倉は重い口を開く。「遠野茉莉子を殺したのは、ぼくです」。やがて関係者たちも次々に、彼女について語りだす。茉莉子の「死」の真相を探るほどに、次第に彼女の「生」が露わになっていき――。

  • 岩井さんまたスゴいものを。この物語の中に引き摺り込まれてしまわないように、読み進めるのにパワーがいる。
  • 重いテーマでもあるが本当に読ませる作家さんだと思った。岩井さんは本当に振り幅がすごい。

明治殺人法廷」芦辺拓 2024/9/11

明治二〇年に発布・施行された保安条例のために東京を追放された新聞記者の筑波新十郎と、負け続きのため「コマルさん」と揶揄される大阪の駆け出し弁護士の迫丸孝平。出会うはずのない東西二人の青年は、質屋一家を襲った鏖殺事件の謎に挑むが……日本推理作家協会賞&本格ミステリ大賞受賞作『大鞠家殺人事件』の著者が、巨星・山田風太郎の〈明治小説〉への敬意を胸に本格ミステリと伝奇時代小説の融合に挑む、圧巻のグランドミステリ!

  • 歴史の闇を感じる時代長編ミステリ。 本題にたどり着くまでが少し遠回りのように感じたが、その紆余曲折がこの時代を、そしてこの事件の大きな謎を解く伏線になっていた

死体で遊ぶな大人たち」倉知淳 2024/9/5

作家デビュー30周年記念作品。変な状況の死体が出てくる中短編集でベストは表題作。へんてこな状況に変な死体、そこに独特なロジックを掛け合わせていく。

  • みんなが読みたい倉知淳だ!という期待通りの作家デビュー30周年記念作品。
  • まずページをめくってゾンビのアップと目が合って笑ってしまった。これは今年読んだ作品のなかでも上位に来る。
  • 普通に考えたら絶対に辿り着けないイレギュラーだらけの事件の真相を、いかにロジカルに解いていくか。それを可能にするのがこのタイトル。

穢れた聖地巡礼について」 背筋  2024/9/3

フリー編集者の小林が出版社に持ち込んだのは、心霊スポット突撃系YouTuberチャンイケこと、池田の『オカルトヤンキーch』のファンブック企画だった。
しかし、書籍化企画を通すには『オカルトヤンキーch』のチャンネル登録者数は心許ない。企画内容で勝負するべく、過去に動画で取り上げた心霊スポットの追加取材を行うことに。池田と小林はネットなどで集めた情報をもとに、読者が喜びそうな考察をでっちあげていく――。
(『オカルトヤンキーch』ファンブックより一部抜粋)
『変態小屋の真相判明!』
もともと変態が盗撮した写真のコレクションを保管するための場所ではないかという噂で有名だった当スポットだが、我々の追加取材によりここが実は全く別の目的で使われていたことが判明。
さらに動画内に映っていた一枚の写真が、とある女性の自殺直前に撮られたものであることを突き止めた。この写真に写った女性について、次項で詳しく考察していく――。

物語は、伝統と現代の狭間で揺れる聖地を訪れる登場人物たちが、次々と不可解な事件に巻き込まれるところから始まります。背筋氏特有の緻密な心理描写と巧みなプロット展開は、読者を一気に引き込む力を持っています。ミステリーでありながらも人間の内面に迫るテーマ性を持ち、登場人物たちの葛藤や人間関係が巡礼というテーマがさらに深みを与えています。

読者の反響

  • 登場人物たちの内面が丁寧に描かれており、特に彼らが抱える葛藤や不安に共感できる部分が多い。人間の複雑な感情がミステリーの緊張感を高めている。
  • サスペンスとしての展開が巧妙で、物語が進むごとに謎が深まり、読者を引き込む力がある。特に、終盤でのどんでん返しが秀逸。
  • 聖地巡礼をテーマにした物語の舞台設定が新鮮で、歴史や宗教的な側面が物語に深みを与えている。旅の過程がストーリーに大きく影響している点も魅力的。
  • 読了後も登場人物の選択や物語の結末について考えさせられ、読者の心に長く残るタイプの作品。
  • ストーリーが多層的であり、特に序盤は情報量が多く、登場人物や背景の理解に時間がかかる。速読には向かず、ゆっくり読み進める必要がある。
  • 巡礼というテーマを扱っているため、宗教的・哲学的な要素が強く、内容が重厚で暗い。軽い読み物やエンタメ性を求める読者にはややハードルが高い。
  • 一部の読者には、物語の進行が遅く感じられる場面があり、特に中盤でのテンポの遅さが気になることがある。
  • ラストの展開が意図的に曖昧で、多くの読者が自分なりの解釈を求められる。ミステリーとしての明快さを好む人にとっては、やや不満に感じるかもしれない。

右園死児報告」真島 文吉 2024/9/3

右園死児案件が引き起こした現象の非公式調査報告書である。明治二十五年から続く政府、軍、捜査機関、探偵、一般人による非公式調査報告体系。右園死児という名の人物あるいは動物、無機物が規格外の現象の発端となることから、その原理の解明と対策を目的に発足した。

  • 「右園死児」という現象を収集した、フェイクドキュメンタリー。その言葉に触れただけで「厄災」が現れる。過去は平安時代から現代まで、様々な禍々しい現象が報告される。流行りのフォーマットとはいえ、輪郭の曖昧な恐怖が想像を膨らませてくれて楽しい。

8月

日本扇の謎」有栖川有栖

舞鶴の海辺の町で発見された、記憶喪失の青年。名前も、出身地も何もかも思い出せない彼の身元を辿る手がかりは、唯一持っていた一本の「扇」だった……。そして舞台は京都市内へうつり、謎の青年の周囲で不可解な密室殺人が発生する。事件とともに忽然と姿を消した彼に疑念が向けられるが……。動機も犯行方法も不明の難事件に、火村英生と有栖川有栖が捜査に乗り出す!

少女には向かない完全犯罪」方丈貴恵

黒羽烏由宇は、ビルから墜落し死につつあった。
臨死体験のさなか、あと七日で消滅する幽霊となった彼は、
両親を殺された少女・音葉に出会う。
彼女は、出会い頭に彼に斧を叩き込んで、言う。
「確かに、幽霊も子供も一人じゃ何もできないよ。
でも、私たちが力を合わせれば、大人の誰にもできないことがやれると思わない?」
天井に足跡の残る殺人、閉じ込められた第一発見者、犯人はこの町にいる。

ぼくは化け物きみは怪物」白井智之

クラスメイト襲撃事件を捜査する小学校の名探偵。
滅亡に瀕した人類に命運を託された〝怪物”。
郭町の連続毒殺事件に巻き込まれた遊女。
異星生物のバラバラ死体を掘り起こした三人組。
見世物小屋(フリークショー)の怪事件を予言した〝天使の子”。
凶暴な奇想に潜む、無垢な衝動があなたを突き刺す。

虚史のリズム」 奥泉光

1947年東京、石目鋭二はかねてより憧れていた探偵になることにした。進駐軍の物資横流しなど雑多な商売をこなしつつ、新宿にバー「Stone Eye」を開き、店を拠点に私立探偵として活動を始める。石目がレイテ島の収容所で知り合った元陸軍少尉の神島健作は、山形の軍人一家・棟巍家の出身。戦地から戻り地元で療養中、神島の長兄・棟巍正孝夫妻が何者かによって殺害される。正孝の長男・孝秋とその妻・倫子は行方知れず、三男の和春も足取りが掴めない。他の容疑者も浮かぶ中、神島の依頼を受けた石目は、初めての「事件」を追い始める。ほどなく、石目のもとに渋谷の愚連隊の頭から新たな依頼が舞い込む。東京裁判の行方をも動かしうる海軍の機密が記されている「K文書」の正体を探ってほしいと言われるが……。

全員犯人、だけど被害者、しかも探偵」下村 敦史

「私が犯人です!」「俺が犯人だ!」、全員犯人です! 社長室で社長が殺された。それに「関わる」メンバーが7人ある廃墟に集められる。未亡人、記者、社員2人、運転手、清掃員、被害者遺族ーー。やがて密室のスピーカーからある音声が流れる。「社長を殺した犯人だけ生きて帰してやる」。犯人以外は全員毒ガスで殺す、と脅され、7人は命をかけた自供合戦を繰り広げるがーー。

  • あっちへこっちへと最後の最後まで著者に翻弄されまくり、あ〜スッキリ!とはならず疲弊感が残る読後。
  • あなたも読んで興奮して下さい。あっと驚いて下さい。
  • 面白かった〜!! かなり気をつけて読んでもいたけど、思わぬ方向へ進んでいくので予測つかない。こんなのはじめてだ!!

7月

法廷占拠 爆弾2」呉勝浩

東京地方裁判所、104号法廷。史上最悪の爆弾魔スズキタゴサクの裁判中、突如銃を持ったテロリストが乱入し、法廷を瞬く間に占拠した。「ただちに死刑囚の死刑を執行せよ。ひとりの処刑につき、ひとりの人質を解放します」前代未聞の籠城事件が発生した。スズキタゴサクも巻き込んだ、警察とテロリストの戦いが再び始まる!

  • 後半はタゴサクも本領発揮して存在感抜群。この先どうなっていくんだろうか?もう第3弾に期待しかない。
  • めっちゃ面白かった!こりゃ、まだ続くねぇ。このレベルの小説を続けられる呉勝浩さんが凄い!
  • まさかの続編。そしてまさかの結末。これはまだ続きそうな予感……?

バーニング・ダンサー」阿津川辰海

コトダマと呼ばれる特殊能力による犯罪に対抗するため作られた警視庁公安部公安第五課。全身の血液が沸騰した死体と炭化するほど燃やされた死体が発見される。相棒を失った元捜査一課刑事が寄せ集めの新部署で関係を築きながら殺人犯を追う特殊設定ミステリー。

  • 超能力バトルエンターテイメント。ジャンプ黄金期世代にはたまらない。限定条件の設定がよいですね。
  • アクションシーンもしっかり。ミステリとしても上質で、最後は警察ものお約束のどんでん返しが「キター!」という感じ。
  • 設定自体がかなり現実離れしてるから苦手な人はいるかも。それでも私はこの本に出会えてよかった。

わたしの知る花」町田その子

「あんたは、俺から花をもらってくれるのか」 虫も殺せぬ優男、結婚詐欺師……? 77歳で孤独死した老人の、誰も知らない波瀾に満ちた意外な人生とは? 『52ヘルツのクジラたち』町田そのこの新作は、一人の男と美しい花を巡る物語。

  • 全てがわかったときは涙涙。そして苦しくも暖かい気持ちに。また町田さんに泣かされました。
  • 人の感情は複雑で黒も白もある。言葉にすることが難しいのに、町田さんは見事に表現する。
  • 劇的ではないけれど、苦しく、静かに生きてきた老人の人生が浮き出てくる。

死蝋の匣」櫛木理宇

住宅で殺された男女の遺体が発見され、その後中学生5人が殺傷される事件が発生。指紋などから浮かび上がった両事件の容疑者は、一家心中事件の生き残りでかつて家裁調査官時代に白石が担当した少女だった…。

  • 福祉や法の限界を感じ、何ともやりきれない気持ちになった。今回も白石の美味しそうな料理にほっこり。
  • 気分はどんよりなまま。でもまたこのコンビに会いたいと思ってしまう自分もどうしようもないな、と思ってしまう。
  • 鬼畜な大人たちに怒りが込み上げ、胸がキリキリ痛んだ。エピローグで語られる彼女の想いに悲しみの余韻が残る。

密室偏愛時代の殺人 閉ざされた村と八つのトリック」鴨崎暖炉

巨大な鍾乳洞の内部に作られた白い直方体の建物が立ち並び奇妙な風習の伝わる八つ箱村。因習村で巻き起こる怒濤の8連続密室殺人事件。たまたま村を訪れていた高校生の葛白香澄らが、次々と現れる密室の謎に挑む。現実的にはほぼ無理だけど理論的には可能な突き抜けた密室トリック。

  • 絶対に暴けないようなトリック、完全脱帽でした。
  • 読んでる最中「リアリティなんてくそくらえじゃあ!」と言う作者の声が聞こえて来そう。
  • ここまでぶっ飛んでるともう行くとこまで行って欲しいですね。

「呪詛を受信しました」上田春雨

北海道のとある町で暮らす女子高生が主人公。彼女の友人のスマホに事故死した中学時代の友人から二文字の言葉が書かれたメッセージが届き、送られた人が次々と死んでいく主人公の周囲で連鎖する謎の真相とは。サスペンスミステリ。

  • てっきりホラー小説かと思ってたが読んでみたら結構ガッツリとサスペンスやってた作品だった。
  • 結末がどこにどう着地するのか後半になるまで予想のつかない作品でした、ホラー風味のミステリー…いや青春サスペンスかな。
  • 呪いや幽霊より生きている人間が一番怖い。

6月

難問の多い料理店」結城真一郎

怪しげなレストラン。オーナーシェフからバイトを頼まれた主人公。噓みたいな儲け話に主人公はこの店は「ある手法」で、探偵業も担っているらしいことに気づく。「もし口外したら、命はない」オーナーの正体とは。

  • 謎解きモノかと思いきや最後にはゾクっとさせられるダークな展開に驚く『真相はあなた次第』の新感覚のミステリ。
  • 連載開始時からここまで計算していならすごいよな、と感心。なかなかおもしろかったです。
  • 真相の究明というよりも謎解きがキモになっていてその解釈を楽しむという新感覚なミステリ。

オパールの炎」桐野夏生

時代に先駆けてピル解禁を訴えていた女がいた。世間を騒がせた彼女は田舎町で生涯を終えた。
関係者証言や記録から女性であることで受ける理不尽さや不本意さを浮き彫りにしていく。

  • ドキュメンタリー風でインタビューに答える人によって彼女の見え方がそれぞれでなかなか面白かった。
  • 結局彼女のことがわかった人っているの? オパールの炎の言及そこだけかぁ。
  • 50年以上前にこんな活動をした女性がいたなんて。キワモノ扱いされた末、打つ手を誤って退くことになりどんなに悔しかったことだろう。昭和の男社会は強烈だからなあ。

明智恭介の奔走」今村 昌弘

『屍人荘の殺人』で活躍した自信家でミステリ愛好会の会長明智恭介。その生前の活躍譚。葉村くんと共に謎に挑む新作シリーズ第1作。肌着引き裂き事件に試験問題漏洩事件。手紙ばら撒き事件など五つの謎に挑む日常系ミステリ。

  • あの「明智先輩」が主役の短編集なんて! いろいろ考えますね〜。シリーズの持つインパクトこそありませんが、読みやすくて面白かったです。
  • 明智恭介のまさかの復活を祈っているファンは多いはず。私もその一人。キョウスケ、カムバック!!
  • 屍人荘での明智の運命を考えると切ないが、青春ミステリシリーズとして、もう少し続いても良いのではと感じた。もちろん本編シリーズの続編にも期待したい。

了巷説百物語」京極 夏彦

狐獲りの名人で、裏の渡世として人の嘘を見抜く洞観屋も行う藤兵衛のもとに依頼がかかる。老中・水野忠邦の改革の邪魔をしようとする一派を見抜くことが、藤兵衛に与えられた仕事だった。藤兵衛は源助とお玉の三人で、化け物が関わる事件の現場に出かけていくが…。巷説百物語シリーズ堂堂の完結。

  • これまでとは違い短編連作形式ではない。オールスターキャストで楽しい。
  • 過去の巷説シリーズだけではなく、江戸怪談シリーズも出てくるなんて、再読したい本が増えちゃうじゃないですか。
  • 四半世紀にわたって1作目から欠かさず追って来たシリーズが遂に。千代田のお城に巣食う鼠…その全貌がようやくなのは嬉しいはずなんだけど寂しさが勝るなあ。

魂婚心中」芦沢央

死後用マッチングアプリ。脳波も刺激されるゲーム対決。嘘をつくと消える世界。死後七つの世界の階層を変える会社。間違い探しの中の世界。超能力を持つ人と能力の謎・・・。6編からなるSF短編集

5月

クスノキの女神」東野 圭吾

記憶障害の少年と認知症が進む老人。詩を書く少女。不思議な力を持つクスノキの番人のもとへ
訪れる人々との物語。

六色の蛹」櫻田 智也

昆虫を求めてさすらう青年が主人公。6色の色をテーマに虫大好き人間の主人公が解く事件の鍵。人間の奥に潜む善意と本性。温かな余韻に包まれる連作短編集。

4月

冬期限定ボンボンショコラ事件」 米澤穂信

交通事故で入院中の主人公。小市民をめざす彼が思いめぐらしたののは、三年前、同じ場所で
同級生が巻き込まれた交通事故のことだった。15年ぶりの新作。シリーズ完結編。

「それは令和のことでした、」歌野 晶午

著者の企みに舌を巻く!哀しみと可笑しみの令和ミステリー 小学生のときは女男と指をさされ、母親からはあなたの代わりは誰にもつとまらない、胸を張れと言われる。平穏を求めて入学資格に性別条項のない私立の中高一貫校に入るが、いじめはさらにエスカレートし、みじめな姿がSNSで世界中にさらされていく。それは僕の名前が太郎だから――

  • 一行を読み逃せば、謎の迷宮から抜け出せないと帯にあるように、読み手の思い込みや視点を反転させられる内容となっている。
  • ジェンダー、児童へのわいせつ、スマホゲーム依存、毒親、同姓婚、ヤングケアラーなど…後から振り返った時に、令和の時代にはこんな問題があったのね…と思うような7つの短編集。
  • オモイ。ひたすらオモイ。ネタは昭和。ニンゲンは令和も変わらないというコトだろうか。ココロがグッタリした。

「斬首の森」澤村伊智

カルトじみた企業の研修。場所も不明な宿泊施設に集められた五人が主人公。施設の火事に乗じて脱出するも、森の中で迷い一人が首を切られた形で発見される。裏切者がいるという疑惑がでる中、メンバーが次々と斬首されていく。ミステリ要素も加わったグロホラー。

  • 前半もなかなかだが、後半からかなりグロくなる。構成も見事。エグい、グロい、クズいと三拍子そろった良作でした。
  • 怖かったし不快感すごいし、最高…。「ヒトコワだったら許さない…澤村さんは絶対違うはず…」と最後まで読んだが、怖さと気持ち悪さで感動した。
  • さすがにこのオチは想像していなかった…ゾクゾクした〜。でも澤村さんのこういうの好きなんだよなあ(笑)

3月

「兎は薄氷に駆ける」 貴志祐介

資産家を殺害した疑いで逮捕された主人公。しかしそれは、過去に殺人の容疑で捕まった自らの父の冤罪を雪ぐためだった。主人公は本当に殺人犯なのか。それとも冤罪なのか。冤罪をテーマとした法廷ミステリー。

「サロメの断頭台」 夕木 春央

人間標本」湊 かなえ

幼い頃から蝶に魅了されて蝶博士になった榊史郎。人間を蝶に見立てて人間標本を作る。二転三転する真実。15周年を迎えたイヤミス女王貫禄の作品。

鼓動」葉真中顕

2月

「黄土館の殺人」 阿津川辰海

地震による土砂崩れで滞在する荒土館に閉じ込められた田所と三谷の2人。そこで起きる惨劇。頼みの綱の葛城はいない。果たして2人は生き残れるか。館四重奏シリーズ第3作目

あなたが殺したのは誰」まさきとしか

東京で女性が殺され、10ヶ月の娘が誘拐された。時を戻し、北海道の離島でリゾート開発が頓挫する。離れた場所が捜査過程でつながっていく。三ツ谷&田所刑事シリーズ第三弾。

「そして誰かがいなくなる」下村 敦史

「奇岩館の殺人」高野 結史

1月

「1947」 長浦 京

1947年。英国軍人のイアンは、戦場で不当に斬首された兄の仇を討つため来日する。駐日英国連絡公館の協力を得つつ少ない手掛かりを追うが、英経済界の重鎮である父親ゆずりの人種差別主義者でプライドの高いイアンは、各所と軋轢を生む。GHQ、日本人ヤクザ、戦犯将校……さまざまな思惑が入り乱れ、多くの障害が立ちふさがる中、次第に協力者も現れるが日本人もアメリカ人も信用できない。イアンの復讐は果たされるのか?

  • 年ベス級に面白かった。やはり長浦京はアナーキーな物語が似合う。それもそのはず、終戦直後の1947年、GHQ占領下の東京が舞台である。
  • レイモンド・チャンドラーの強くなければ生きられない、優しくなければ生きていくのに値しない、のフレーズをリフレインしながらページを繰りました。
  • 戦後すぐの懸命に生きる人達の息づかいが聞こえてくるかのような、非常にスリリングで濃厚なストーリーでした。

「シャーロック・ホームズの凱旋」 森見 登美彦

ヴィクトリア朝京都というわくわくする架空の街で、深刻なスランプに陥ったホームズと復帰させたいワトソンのあれこれはやがて「世界」を根幹から揺さぶり始める。

  • クスクス笑えるところもあり、怪しげなところもあり。この世界観は誰にも真似できない、最後もどうなるか分からない。
  • 作者にブンブン振り回されてたけど気がついたら最後には登場人物達がいい塩梅に収まってたみたいな感じ。ちょっとクセになりそうな読後感。
  • 中盤から終盤にかけてはドタバタし過ぎて訳が分からないうちに読了。

「ブラック・ショーマンと覚醒する女たち」東野 圭吾

婚活中の美奈、姪の真世の顧客の上松さん、ミュージシャンの彼女、老夫婦のリフォームと妊婦、認知症ぎみの老女と娘。元マジシャンで現在はバーのマスターである神尾武史が鋭い洞察力と華麗なるトリックにより様々な謎を解き明かす短編集。

  • 気軽に読める上質のミステリーという感じ。
  • 短編で読みやすかった。騙された爽快感!
  • 人間の欲望と欺瞞を鋭く描きつつ、ラストには希望の光も。 エンタメ性と社会派要素を兼ね備えた、一気読み必至の一冊!

「ファラオの密室」白川 尚史

紀元前1300年代後半、古代エジプト。死んでミイラにされた神官のセティは、心臓に欠けがあるため冥界の審判を受けることができない。欠けた心臓を取り戻すために地上に舞い戻ったが、期限は3日。
ミイラのセティは、自分が死んだ事件の捜査を進めるなかで、やがてもうひとつの大きな謎に直面する。棺に収められた先王のミイラが、密室状態であるピラミッドの玄室から消失し、外の大神殿で発見されたというのだ。浪漫に満ちた、空前絶後の本格ミステリー。

  • ミステリーというよりはファンタジー要素が強め。古代エジプトで死者が蘇って…という驚きの設定に対して、謎解きや最後の展開は印象薄め。でも物語としては十分に面白いし引き込まれた。
  • 古代エジプトを満喫しながら事件解決の爽快感も味わえる。
  • トリックはちょっとお粗末な感じでしたが、概ね満足なストーリー。 読み終えた後、もう一度気になった箇所を見返すと、しっかり伏線張ってるんですね。

12月

「不夜島(ナイトランド) 」荻堂顕

「変な家 2 ~11の間取り図~」雨穴

11月

「地雷グリコ」青崎有吾

主人公は見た目はゆるギャル系JK。実はとんでもない頭脳の持ち主。グリコにじゃんけん、だるまさんがころんだなど、誰もが知ってる遊びにルールが加わり知的ゲームの騙し合いが展開される。

「Q」 呉勝浩

「ともぐい」 

明治後期の北海道の山で、猟師というより獣そのものの嗅覚で獲物と対峙する男、熊爪。図らずも我が領分を侵した穴持たずの熊、蠱惑的な盲目の少女、ロシアとの戦争に向かってきな臭さを漂わせる時代の変化……すべてが運命を狂わせてゆく。

「きこえる」道尾秀介

タイトル通りQRコードを通じて聴くyoutubeの音声がキーとなる5編の短編集。①殺された女性シンガー②殺された投資セミナー講師③転校生とガキ大将④気になる塾の教え子⑤自殺した芸術家2世とその妻。時代を代表するシステムや機器を利用した、革命的なミステリー小説。

10月

「歌われなかった海賊へ」逢坂冬馬

1944年、ナチス体制下のドイツ。強制収容所へ続く鉄橋を爆破した少年少女がいた。ナチス体制下のドイツに実存した「エーデルヴァイス海賊団」。人間として「究極の悪」への反抗へ。命を賭けて闘っていく。名もない若者たちの、名もない物語。

「なれのはて」加藤シゲアキ

作者不明の一枚の絵。イベント事業部に異動になった元記者の主人公は展覧会の開催のため謎の作者を追い始める。戦前戦後と油田開発に携わった一族の悲劇が明らかになる。

  • テーマが多少散在しすぎている感はあるが、面白かった。
  • 現代の進行と過去を語る真実の並び等、先を読ませるよく出来たミステリだったと思います。
  • 謎が一つ一つパズルが解けるように解決していき、最後に過去のことが迫力とともに明かされて思わずため息をついた。

「半暮刻」月村了衛

児童養護施設で育った元不良の翔太は先輩の誘いで「カタラ」という会員制バーの従業員になる。女を釣っては風俗へ堕とす悪質ホストとして成り上がった「翔太」と「海斗」の暗躍と転落を通して、社会の闇と現代人の生き方を浮き彫りにした、社会派小説。

  • 最後に人生、生き方を示唆するまとめ方がとても文学的で素晴らしかったです。
  • 虐めや様々な事件で見る平然とした若者の姿と重なり読後も戦慄が止まらない。
  • 欲深い人達は無傷なまま。本当にこういう世界が存在するのかもと思うようなリアリティに溢れていた。

「悪逆」黒川博行

府警捜査一課の舘野と箕面北署のベテラン刑事・玉川が最初の事件を追うなか、手口の異なる新たな強盗殺人が起こる。さらに新興宗教の宗務総長が殺害され……。凶悪な知能犯による完全犯罪を突き崩すことができるのか?

  • ラストまでハラハラ。世の中、腐った人がとても多いことを実感。
  • 今回は不良刑事とかではなく、ベテランと若手それぞれの良さが出ていた。
  • 中弛みもなく、スピード感があって最高でした。また黒川さんを読んでみよう。

「幽玄F」佐藤究

戦闘機に魅了された少年は一途に夢を追い求め、自衛隊で天才パイロットとなるも思わぬ挫折で日本を離れる。護国、仏教などに関する思考を重ねつつ、巡り会わせでF35Bと再会を果たす。男が満たされる場所は一体どこなのだろうか。

  • 主人公のラストには感動。その後の爽やかな描写も良かったです。
  • 自由で青緑な空を求めた主人公が本当の自由をつかむための物語だと。いやこの境地は凄まじすぎる。
  • 読み心地の良い会話文と、戦闘機の圧倒的な空中描写が圧巻。

まとめ

有力な作品は募集期間ぎりぎりの九月にかけて発表されることも多いので、賞の行方はまだまだわかりません。作品一覧のなかから、お気に入りの1冊を探してみてください。

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