年末年始を前にしたこの季節は書店の稼ぎ時。今年登場した新刊本を査定するランキングが一斉に発表されるからです。
中でも話題作が女性科学者が書いた翻訳のミステリー。翻訳本は配本が少ないため取り寄せになることが多いのですが、取り寄せするお客様が増えています。アメリカでロングセラーとして話題となった本をご紹介します。
ザリガニの鳴くところ
ノース・カロライナ州の湿地で男の死体が発見された。人々は6歳で家族に見捨てられ湿地の小屋で生きてきた「湿地の少女」に疑いの目を向ける。みずみずしい自然に抱かれて生きる少女の成長と不審死事件が絡み合い、思いもよらぬ結末へと物語が動き出す。全米500万部突破、感動と驚愕のベストセラー。
本書が出版されたのは2018年。その翌月には《ニューヨークタイムズ》紙のベストセラー・リストに登場し、2020年2月の現在73週連続でランクインし続けているというから驚きです。
作品の舞台であるバークリー・コーヴは架空の村です。
主人公のカイアが暮らした湿地はバージニア州南東部のディズマル湿地をモデルにしたといわれています。
読んでから見るか、見てから読むか。想像の楽しさを味わうのなら読んでから見るのが正解ですが、今回は逆に見てから読むほうを選びました。逆聖地巡りです。
湿地は標高3~6mの高さの開墾地がところどころに点在していて、作品では自然が克明に美しく描かれています。
日本の自然しか見たことがない私には想像を絶する世界が広がっていました。
みずみずしい自然を背景に描かれる人間の残酷さや偏見、孤独や強さが読む人の心を強く揺さぶります。
湿地の少女と呼ばれ、蔑まれてきた主人公。湿原を生き抜く姿はとても強く見えるし弱くも見えます。
濃密な自然の中でけなげに生きる主人公の姿が輪郭を結んだ気がしました。
美しく、儚く、強く生きていく少女の一生を壮大な大自然を舞台に描いた作品であり、共に自分もそこに少女を助けたい一心になる。
一人の女性の人生を追体験でき、密度が凄まじい。作者は生物学者らしく、自然描写や生態系描写がおぞましいくらい緻密で、残酷であり、優しい自然の空気感がありありと伝わる。
頁を繰る手を少しも止められず、痛みを伴う感情が込み上げ、祈るような気持ちで読み進めた。ラストは衝撃的で再度、読み返すことになりました。そして誰かと語り合いたくなりますね。
中盤はだらだらしてると思う人もおられるでしょうが、最後のたった1ページを読み終えた時には、読み切った悦びと、表現できない感情に包まれるはずです!w
こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 ザリガニの鳴くところ を書きます。※本ページにはPRが含まれます