秋から冬にかけてのお楽しみが、毎年恒例のミステリーランキングの発表です。
SFやミステリーなどの出版で知られる早川書房発行の「ミステリマガジン」1月号の特集「ミステリが読みたい!」では恒例のランキングが公開されました。

首都圏の大手書店(代官山蔦屋、有隣堂など)では軒並み在庫切れという大人気です。
「ほんミス」「文春ミス」「このミス」と合わせて一番面白いミステリーの読書計画を立ててみてはいかがでしょうか。国内編のランキングを紹介します。
ミステリが読みたい! 2026年版ランキング《国内編》
第1位 『失われた貌』 櫻田智也(2025年8月20日)

山奥の谷底で発見された男の遺体。顔も指紋も徹底的に消され、身元不明──。静かな雪の描写から、いきなり凍るような緊張感。“なぜ彼は、自分の存在を消そうとしたのか?”櫻田作品では珍しい、どっしりした警察捜査もの。
推理の精度も高く、刑事たちの人間臭さも沁みる。警察小説って難しそう…という初心者にもスッと入れる筆致。いや〜これは“静かな怒り”を描く櫻田さんの真骨頂。冷気がページから漂ってくる感じ!もう、手がかじかむような読書体験でした。
第2位 『禁忌の子』山口未桜(2024年10月10日)

命を「授かる」から「作る」時代へ。生殖医療の進歩が家族の絆を静かに壊していく――。手術室の無機質な光の中、母が小声で「あなたは作られた子なの」と言った。
えっ…と、思わず背筋がゾクッとしました。現役医師だからこそ描ける医療の裏側と、そこに交錯する倫理と家族の闇。初心者にも読み応えバツグンです。
16位『名探偵再び』潮谷 験(2025/4/16)

私立雷辺(らいへん)女学園に入学した時夜翔(ときやしょう)には、学園の名探偵だった大叔母がいた。数々の難事件を解決し、警察からも助言を求められた存在だったが30年前、学園の悪を裏で操っていた理事長・Mと対決し、ともに雷辺の滝に落ちて亡くなってしまった……。
悪意が去ったあとの学園に入学し、このままちやほやされて学園生活を送れると目論んでいた翔の元へ、事件解明の依頼が舞い込んだ。どうやってこのピンチを切り抜けるのか!?
第4位 『崑崙奴(こんろんど)』 古泉迦十(2024年11月26日)

舞台は唐の長安。安禄山の乱の傷跡がまだ残る街で起きる連続殺人。異国の官吏と若き進士が、血と香と砂塵の中を駆ける。剣戟、陰謀、そして“人が信じる神の正体”までを描く、まさに「歴史×幻想×ミステリ」のフルコース。
唐代ミステリ!?と思ったら、最後ファンタジー的余韻で“あ、夢か現か…”って。こういう世界観、映像化してほしいわ〜。衣装デザイン込みで!「真実とは、時代を越えても腐らぬものだ。」という言葉に、思わずページを閉じて深呼吸。古泉節、健在です。
第5位 『目には目を』新川帆立(2025年1月31日)

娘を殺された母が、加害少年に復讐を決意した。静かな取材室で記者が録音機を置き、「彼を殺して後悔は?」と問いかける。母はしばし息を止め、机に落ちた涙の音だけが響く…。この瞬間、読者として「正義って何だっけ?」と立ち止まります。
初心者でも“考えるきっかけ”として読む価値あり。テーマの重さゆえに読み終わったあと余韻が残る一冊です。

11〜15位は、“枠に収まらない物語”たち。
芸能界、昭和、未来、文学、古代中国――時代もテーマもバラバラなのに、
どの物語にも“人間の本音”が見える。
つまり、“ミステリ”というジャンルが、もはや「現代の鏡」なんですよね。
第6位 『夜と霧の誘拐』 笠井潔(2025年4月15日)

同日に起きた二つの事件――一つは夫の誘拐、もう一つは妻の殺害。関係なさそうな二つの線が、ある“ひとつの思想”で結ばれていく。
「夜霧の向こうに、彼女の声が聞こえた気がした。」とても静かで、だけど心臓の奥を刺すような冷たさ。ベテラン笠井潔の重厚なロジックと、人間ドラマの融合が光る。これぞ“古典と現代の融合”ってやつ。読後、頭使いすぎてちょっと放心するんだけど、その疲労感すら気持ちいい。まさに知的サウナ。
第7位『寿ぐ嫁首 怪民研に於ける記録と推理』三津田信三 (6/26)

はい、出ました、三津田信三さん。
今回の舞台は、「嫁首様」を祀る屋敷で行われる奇妙な婚礼。
花嫁行列の後ろをついてくる、もう一人の花嫁…これ、ゾワゾワが止まりません。
しかも婚礼の夜、屋敷の「迷宮社」で死体が見つかるんですが、この迷宮社というのが、もう読んでて方向感覚が狂う造り。どこまで行っても似たような廊下、急に現れる扉、そして…あの匂い。
民俗学ミステリとしての知的な面白さと、視覚的なホラーの濃度が高すぎて、最後は息を止めてページをめくってました。
第8位 『神の光』 北山猛邦(2025年9月27日)

“街が、館が、まるごと消える。”──そんな不思議な“消失”をテーマにした5つの短編。「光の中にすべてが溶けていった。それでも彼女の笑顔だけは残った。」静かで、美しく、どこか儚い。
読んでいると、現実と夢の境界がふっと曖昧になってくる。いやもう、“消失”って言葉の響きがずるい…。北山作品読むと、現実の壁がちょっと透けて見える気がするんだよね。深夜2時に読むと、マジで自分の部屋が消えそうになるから注意。北山猛邦らしい“存在の不在”を描く幻想ミステリ。読後はしばらく沈黙したくなる。
第9位『路地裏の二二六』伊吹 亜門 (2025/1/31)

昭和10年(1935)8月12日、陸軍省にて相沢三郎歩兵中佐が軍務局長・永田鉄山少将を惨殺する事件が起きる。そのとき、部屋にはもう一人の人物がいた――。
憲兵大尉・浪越破六【なみこし・ばろく】は、この事件には、語られていない「真実」があると確信する。
そんな折、浪越は渡辺錠太郎陸軍大将から、密命を受ける。そして運命の日に向けてのカウントダウンが始まった。
気鋭のミステリ作家が、2.26事件と同時進行していた「ある事件」を大胆に描き出した本格長編。
昭和史を揺るがす重大事件の謎をめぐる圧巻の歴史ミステリ。
伊吹亜門氏デビュー10周年を飾る勝負作!
第10位 『ブレイクショットの軌跡』/逢坂冬馬(2025年3月12日)

一台の車「ブレイクショット」が結ぶ人と運命の群像劇。深夜のガレージで男が車を磨く――その瞬間、SNSの通知がバイブレーションを繰り返し、炎上の火種が生まれる。
「うわっ、この展開、マジで現代っぽい!」と思わず身を乗り出しました。YouTuber、LGBTQ、闇バイト、投資…現代の“選択”と“つながり”がひとつの物語に。超おすすめ。




こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 ミステリが読みたい! を書きます。