
読んだことのない話題の作家や作品を知るには、20年以上も続く週刊文春「ミステリーレビュー」がおすすめです。2020年11月の選書、国内編4冊をご紹介します。
国内編
11月05日号
Another 2001

今年の〈もう一人〉は、誰──?
多くの犠牲者が出た1998年度の〈災厄〉から3年。春から夜見北中三年三組の一員となる生徒たちの中には、3年前の夏、見崎鳴と出会った少年・想の姿があった。〈死者〉がクラスにまぎれこむ〈現象〉に備えて、今年は特別な〈対策〉を講じる想たちだったが、ある出来事をきっかけに歯車が狂いはじめ、ついに惨劇の幕が開く!
相次ぐ理不尽な“死”の恐怖、そして深まりゆく謎。〈夜見山現象〉史上最凶の〈災厄〉に、想と鳴はどう立ち向かうのか──!?」
2009年に刊行された『Another』のシリーズ最新作です。舞台は「あの中学校」。生者と見分けがつかないくらい<死者>が紛れ込み、対策を取らないと生徒や学校関係者に被害が続出する。
困ったことに、作中人物たちの記憶が消去されているため、犯人がわかるのはこの作品を読む読者だけという設定が一味変わったサスペンスになっています。
辞書の厚さに近いほどボリュームがある内容ですが、読み始めると止まらないという評判を聞きます。本作だけでも楽しめますが、シリーズを読み返すとさらに面白さが加わります。
死者と言葉を交わすなかれ

不狼煙さくらは探偵・彗山小竹との浮気調査中に、調査対象の死に遭遇。一見病死だが、しかけた盗聴器からは“死者との会話”が流れ出してきた!?これは自然死か、死者の呪いなのか…。旧知の警察官に興信所廃業の脅しをかけられるなか、真相を追う二人は予想だにしない悪意に出遭う―。デビュー二作目にして本格ミステリ大賞を受賞した天才に、あなたは絶対に騙される。
女性ばかりが働いている彗山興信所。悪徳探偵・三途川理シリーズで知られる森川智喜さんによる異色作。
作品中の怪奇現象は本当に霊がかかわっているのか、予想がつかない展開です。物語の展開も怪異と実在の間を振り子のように揺れ続けるので、ミステリーファンもそうでない人も楽しめる作品です。
森川先生が御洒落に振るとこうなるのか、という感じ。
けっして気持ちの良い話ではないけれど、血とかそういうグロさはないし、ぐいぐい読ませる。