その年のミステリー作品を競うランキングイベントの季節が近づいてきました。膨大な作品が出版される中、読みたい本を探すのも一苦労ですよね。何を選んでいいか迷ったときには、優れた読み手がイチオシする作品を押さえておくべきでしょう。
海外ミステリーを専門に評論する池上冬樹さんがおすすめする4冊が10月17日付朝日新聞に掲載されました。
池上冬樹さんが選んだ4冊
今回の推薦作の切り口は女性。ヒロインたちが直面する過酷な現実と、すさまじい人生を通じて現実世界のありようを描いた作品が並びます。
贖いのリミット
建設現場で元警官の惨殺死体が発見された。現場は血の海。鑑識の結果、大量出血したのは被害者でなく現場から姿を消した女だと判明する。特別捜査官ウィルは車の側に残された銃が別居中の妻アンジーのものと知り動揺する。やがて事件の背後に恐るべき闇が浮かびあがり―「ウィル・トレント」シリーズ。
他社を攻撃することでしか自分を慰められない女にのすさまじい人生が切々ととらえられている秀作。
[itemlink post_id=”6713″]グッド・ドーター
アメリカ南部の小さな町で白人女性が殺され、容疑者の黒人青年を担当した弁護士の自宅が放火された。28年後、辛くも生き残り、父と同じ弁護士になった次女シャーロットは、後悔を抱えながらも前に進んでいた。だが地元中学校で起きた銃乱射事件が、封印した過去を呼び戻し…。映像化決定!MWA賞受賞作家、渾身のサイコサスペンス。
[itemlink post_id=”6666″]“50代から始まる新しい人生を、もっと自由に、わがままに。”
大人の女性のための生活総合誌「毎日が発見」の公式オンラインショップです。
果てしなき輝きの果てに
薬物蔓延で荒廃するケンジントンのパトロール警官ミッキーは線路脇でドラッグ中毒者の遺体が発見されたとの報せに現場へ赴く。売春の客引きや麻薬取引をする妹ケイシーかもしれない。ところが遺体は彼女ではなかった。ケイシーの姿も消えさらに似たような事件が相次ぐ。姉妹の絆と孤独を抉る、アメリカの今を映した新しい警察小説。
[itemlink post_id=”6750″]念入りに殺された男
小説家の夢破れた内気な女性アレックスはゴンクール賞作家のベリエに襲われ、抵抗したはずみに彼を殺してしまう。家族との生活を守るため、殺人を隠蔽しなければ……彼の近くにいる、罪を被せられそうな人物を見つけだし、ベリエに「正しく」死んでもらうために──。
[itemlink post_id=”6739″]池上冬樹さん
文芸評論家、書評家。1955年山形市生まれ。山形県立山形中央高等学校、立教大学文学部日本文学科卒。マルタの鷹協会会員。ハードボイルドの翻訳から初めて、ミステリなどの書評家となり、『週刊文春』、『本の雑誌』、『ミステリマガジン』、「日本経済新聞」などではばひろく書評・批評をおこなう。
痛みを癒すのは痛みの記憶
なぜ過酷な現実や凄まじい人生を作家たちは描こうとするのでしょう。その答えは癒しにあると池上さんはいいます。
大震災で経験した人が多いだろうが、悲しみを癒すのは笑いでも激励でもなく、その人に寄り添う他社の悲しみの記憶だ。悲しみは悲しみの、痛みは痛みの記憶でしか癒されないという絶望的真実を見据えている。悲しく、辛く、どこまでも残酷であるけれど、だからこそ救われる。いつまでも読者の胸を揺さぶり続ける、世界で読まれているの用がわかるだろう。
物語としての面白さに加えて、深層を貫くように流れるものが見えてきたとき、本当に読みたかったものに出会える。そんなことをこの4冊は教えてくれる掃守れません。
こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 池上冬樹 を書きます。※本ページにはPRが含まれます