いやぁ、今年もこの季節がやってきました。
夏の猛暑がようやく過ぎ去り、夜に窓を開けても涼しい風が入ってくるようになったころ。ミステリーファンにとっての秋の恒例行事といえば――そう、「このミステリーがすごい!」のランキング予想です。
毎年12月の発表に向けて、「今年はどの作品が来るんだろう?」と本屋やSNSでソワソワしてしまう、この時間。わたしにとっては年末ジャンボよりワクワクする瞬間です。
さて、2026年版のエントリー期間は2024年10月から2025年9月まで。
今回はその幕開け、2024年10月に刊行された国内ミステリー11作品の中から、「これはランキング入りしてもおかしくない!」と思える注目作をまとめてご紹介します。
2026年版 このミステリーがすごい! 国内篇予想作品10月版
『禁忌の子』 山口未桜

救急医・武田の元に搬送されてきた、一体の溺死体。その身元不明の遺体「キュウキュウ十二」は、なんと武田と瓜二つであった。彼はなぜ死んだのか、そして自身との関係は何なのか、武田は旧友で医師の城崎と共に調査を始める。しかし鍵を握る人物に会おうとした矢先、相手が密室内で死体となって発見されてしまう。自らのルーツを辿った先にある、思いもよらぬ真相とは――。過去と現在が交錯する、医療×本格ミステリ! 第34回鮎川哲也賞受賞作。
いや〜これはやられた!ラストに向かうほど「えっ、そんなことある!?」って心臓がドキドキしっぱなし。
登場人物の視点を通して「親と子の絆」って何だろうって考えさせられるんだけど、それがただの感動で終わらずに、怖さとか不安も一緒に迫ってくる。
読み終えたあと、「知ること」と「知らないままでいること」、どっちが幸せなんだろうって、ずーっと頭の中で反芻してました。
『虚の伽藍』 月村了衛

より多くの金をつかんだ者が京都を制する――最後に嗤うのは仏か鬼か。
日本仏教の最大宗派・燈念寺派。弱者の救済を志す若き僧侶・志方凌玄がバブル期の京都で目にしたのは、暴力団、フィクサー、財界重鎮に市役所職員……古都の金脈に群がる魑魅魍魎だった。腐敗した燈念寺派を正道に戻すため、あえて悪に身を投じる凌玄だが、金にまみれた求道の果てに待っていたのは――。人間の核心に迫る圧巻の社会派巨編。
もうね、読んでて息が詰まる!政治と権力、そして人の欲望がからみ合う中で、人間の弱さとか醜さがえぐられていく。
仏教界を舞台にしたノワール巨編です。真面目が取り柄の青年僧侶が悪に身を投じることで成り上がっていく第一部が痛快。
月村さんの文章って硬質なんだけど、だからこそ描かれる人間の生々しさがグサッと刺さるんですよ。ラストに近づくほど「これ以上どうなっちゃうの!?」ってページをめくる手が止まらなかった。
現代日本に生きる僕らにも直結してる怖さがあって、読み終えたあともしばらく背筋がゾワゾワしてました。
『まず良識をみじん切りにします』 浅倉秋成

「とにかくヘンな小説をお願いします」
そんな型破りな依頼に応えるべく、炒めて煮込んで未知の旨味を引き出した傑作集。
憎き取引先への復讐を計画する「そうだ、デスゲームを作ろう」、集団心理を皮肉った「行列のできるクロワッサン」、第76回日本推理作家協会賞ノミネートの『ファーストが裏切った』など、日々の違和感を増殖、暴走させてたどり着いた前人未到の五編。
タイトルからしてぶっ飛んでるけど、中身も予想以上にクレイジー!
日常のワンシーンが不気味な非日常へと変貌していく短編5作品。いずれもそんなバカなと思うようなドタバタな展開が楽しいです。
だけどね、不思議と笑いながらゾクッとするんですよ。日常の中に潜んでる狂気をここまでユーモラスに、しかもリアルに描くのか!って感心しまくり。
読み終えたあと、「良識ってホントに必要?」っていう危ない問いを自分に投げかけられてる気がして、ちょっと怖くなりました。いや〜浅倉さん、やっぱ天才!
『飽くなき地景』 荻堂顕

土地開発と不動産事業で成り上がった昭和の旧華族、烏丸家。その嫡男として生まれた治道は、多数のビルを建て、東京の景観を変えていく家業に興味が持てず、祖父の誠一郎が所有する宝刀、一族の守り神でもある粟田口久国の「無銘」の美しさに幼いころから魅せられていた。家に伝わる宝を守り、文化に関わる仕事をしたいと志す治道だったが、祖父の死後、事業を推し進める父・道隆により、「無銘」が渋谷を根城にする愚連隊の手に渡ってしまう。治道は刀を取り戻すため、ある無謀な計画を実行に移すのだが……。やがて、オリンピック、高度経済成長と時代が進み、東京の景色が変貌するなか、その裏側で「無銘」にまつわる事件が巻き起こる。刀に隠された一族の秘密と愛憎を描く美と血のノワール。第172回直木賞候補作。
これは重厚!風景描写がただの背景じゃなくて、人間の心理そのものを映し出してる感じ。
ゼネコンの成長、街の開発、一家の離散など、この時代背景を綴った、戦後日本を舞台に繰り広げられる一族の愛憎を描いた大河ロマン。
読んでて「この場所に自分も立ってる」って錯覚するくらい臨場感があるんですよ。で、その中で繰り広げられる人間模様がまた苦しい…。
でもその苦しさがすごくリアルで、ページを閉じたあとも心に残る。まさにタイトル通り、「飽くなき」って言葉がしっくりくる体験でした。
『遊廓島心中譚』 霜月流

幕末日本。幼いころから綺麗な石にしか興味のない町娘・伊佐のもとへ、父・繁蔵の訃報が伝えられた。さらに真面目一筋だった木挽き職人の父の遺骸には、横浜・港崎遊廓(通称:遊廓島)の遊女屋・岩亀楼と、そこの遊女と思しき「潮騒」という名の書かれた鑑札が添えられ、挙げ句、父には攘夷派の強盗に与した上に町娘を殺した容疑がかけられていた。伊佐は父の無実と死の真相を確かめるべく、かつての父の弟子・幸正の斡旋で、外国人の妾となって遊廓島に乗り込む。そこで出会ったのは、「遊女殺し」の異名を持つ英国海軍の将校・メイソン。初めはメイソンを恐れていた伊佐だったが、彼の宝石のように美しい目と実直な人柄に惹かれていく。伊佐はメイソンの力を借りながら、次第に事件の真相に近づいていくが……。
妖しい!艶やか!もう、読んでる間ずっと異世界に連れていかれてました。
遊廓っていう閉ざされた空間の中で、愛と欲と裏切りが渦巻く…って言うとありがちな感じに聞こえるかもしれないけど、霜月さんの筆致は違う2024年乱歩賞受賞作品。
登場人物の感情がめちゃくちゃ濃くて、こっちまで熱に浮かされたみたいになるんです。
事件の推理よりむしろ愛について力点が置かれているため、それをミステリとして着地させる力業は意外性満点。なので、読み手にとっては好みが分かれそう。
読後感は決して軽くないけど、この濃密さはクセになる!
『放課後ミステリクラブ 5 龍のすむ池事件』 知念実希人

「なんかね、すごいのがいるの。かいじゅうみたいなやつ!」
冬休み直前の朝。学校のすみの池に、大きく口をひらいている龍がいたーー?
池の底にいた「龍」とは。なぜそこにいたのか。そして、ほかの事件も起こっていて……?
4年1組、辻堂天馬・柚木陸・神山美鈴、通称「ミステリトリオ」が動き出す!
「ぼくは読者に挑戦する」
名探偵辻堂天馬の挑戦に、キミは答えられるかーー?
うわ〜、楽しかった!小学生たちの探偵ごっこなんだけど、本格ミステリとしても手を抜いてない。
謎解きのワクワク感と、子どもたちの友情や成長が絶妙に絡み合ってて、読んでる自分まで放課後に戻った気分になれるんです。
ラストで「なるほど〜!」って膝を打ちながら、ちょっとジーンともして。子どもはもちろん、大人が読んでも胸が熱くなるシリーズです。
『婚活マエストロ』 宮島未奈

40歳の三文ライター・猪名川健人は、婚活事業を営む「ドリーム・ハピネス・プランニング」の紹介記事を書く仕事を引き受ける。安っぽいホームページ、雑居ビルの中の小さな事務所……どう考えても怪しい。
手作り感あふれる地味なパーティーに現れたのは、やけに姿勢のいいスーツ姿の女性・鏡原奈緒子。場違いなほどの美女だが、彼女は「私は本気で結婚を考えている人以外は来てほしくありません」と宣言する。そして生真面目にマイクを握った――そう、彼女は婚活業界では名を知らぬ者はいない〈婚活マエストロ〉だった。
いや〜これは笑ったし泣いた!
婚活ってテーマ、今や珍しくないんだけど、宮島さんはそこに温かさとユーモアを全力で吹き込んでくる。登場人物のひとりひとりが「いるいる!」って思えるリアルさで、しかもその人たちが不器用にぶつかり合う姿が最高に愛おしいんですよ。
結婚ってゴールじゃなくて通過点なんだなって、改めて感じさせられました。
『天鬼越 蓮丈那智フィールドファイルV』 北森鴻・浅野里沙子
旧盆に山の神・鬼哭様の面をつけた若者たちが、奇妙な念仏を唱えながら練り歩く〈鬼哭念仏〉の最中に起きた5年前の惨殺事件の真相に蓮丈那智が挑む「鬼無里」など全6篇。内藤三國が率いたフィールドワークでの恐ろしき推理。ひんな神伝承と殺人事件の忌まわしい関係。昭和初期、絵師の恋の謎を解いた人物とは――。民俗学とミステリへの敬愛に心震える最終巻。
民俗学×ミステリの最強コンビ再び!いや〜待ってましたって感じですよ。
フィールドワークの描写がめちゃくちゃリアルで、読んでるうちに「自分も調査に同行してるんじゃないか」って気分になる。
そしてただの知識披露じゃなくて、人間のドラマとがっつり絡んでくるから熱い!知的好奇心をガンガン刺激されながら、最後はグッと胸をつかまれました。
『夜更けより静かな場所』 岩井圭也

静かなんだけど、めちゃくちゃ重い…。岩井さんって、人間の弱さとか後悔を描かせたら天下一品だと思うんですよ。
この作品も、一見平穏に見える日常の裏側にある“言えなかったこと”“引きずり続ける思い”を丁寧に掘り下げていく。その静けさが逆に心に響いて、気づいたら涙がにじんでました。
こんな読書会あったら参加したい。読んだあと、自分の過去まで振り返らされるような余韻が残ります。
『罪名、一万年愛す』 吉田修一

横浜で探偵業を営む遠刈田蘭平のもとに、一風変わった依頼が舞い込んだ。九州を中心にデパートで財をなした有名一族の三代目・豊大から、ある宝石を探してほしいという。宝石の名は「一万年愛す」。ボナパルト王女も身に着けた25カラット以上のルビーで、時価35億円ともいわれる。蘭平は長崎の九十九島の一つでおこなわれる、創業者・梅田壮吾の米寿の祝いに訪れることになった。豊大の両親などの梅田家一族と、元警部の坂巻といった面々と梅田翁を祝うため、豪邸で一夜を過ごすことになった蘭平。だがその夜、梅田翁は失踪してしまう……。
タイトルからして強烈なんだけど、中身も負けてない!
愛と罪がこんなに表裏一体で描かれるなんて…。大ヒット中の映画「国宝」を書き下ろした大作家・吉田さん独特の都会的でクールな筆致はSF風荒唐無稽。
なのに、読んでるこっちの心はどんどん熱くなるジャンル分けなんてどうでもよくなるくらい濃密な物語でした。
最後は見事な大どんでん返し。吉田修一版「火垂るの墓」。読み終えたあと、胸の奥にドスンと残る感情が忘れられません。
『耳に棲むもの』 小川洋子

耳の中に棲む私の最初の友だちは涙を音符にして、とても親密な演奏をしてくれるのです。補聴器のセールスマンだった父の骨壺から出てきた四つの耳の骨(カルテット)。
あたたかく、ときに禍々しく、
静かに光を放つようにつづられた珠玉の最新作品集。オタワ映画祭VR部門最優秀賞・アヌシー映画祭公式出品
世界を席巻したVRアニメから生まれた「もう一つの物語」
補聴器のセールスマンだった父の骨壺から出てきた四つの耳の骨(カルテット)。 あたたかく、ときに禍々しく、 静かに光を放つようにつづられた珠玉の最新作品集。
「正確には骨ではありません。耳に棲んでいたものたち、と言ったらよいのでしょうか」ふわふわとしたファンタジーのような作品。
装画や挿絵が小説の世界観にピッタリ。癖になる気持ち悪さというか、ホラーって血とか幽霊とかじゃないんだなって改めて思いました。小川さんの描く「静かに侵食してくる異物感」、これが本当にゾワゾワしてくるんですよ。
日常がじわじわ壊れていく、その過程があまりに美しくて、読んでる自分がどこまで正気なのか不安になるくらい。読後はしばらく耳を澄ませるのが怖くなりました。
まとめ
こうして並べてみると、2024年10月刊行分だけでもすでに豊作すぎる。
医療サスペンスの衝撃から、仏教ノワール、奇妙な味、戦後大河、乱歩賞受賞作、子ども探偵シリーズ、大作家の涙腺崩壊ミステリまで。
ジャンルもテーマもバラエティに富みすぎていて、これはもう「どれがベスト10に入ってもおかしくない!」状態。
12月の発表まではまだ時間がありますが、いまから予想を立てて一冊一冊楽しんでおくのがミステリファンの醍醐味ですよね。
さて、みなさんはどの作品がランクインすると思いますか?

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こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。 2026年版 このミステリーがすごい! 国内篇予想作品10月版 を書きます。