
セル画時代からのアニメーションの大ファンです。
作家性のある作品を探し出して見るのが大好きです。
見終わったあと、作品が語るメッセージを読み解く作業がよくできたアニメの醍醐味です。
物語の半分を観客の想像に委ねる作品は、自分がそれまで気づかなかった感情や感覚、ものの考え方を掘り起こしてくれるからです。
アニメーションは現代社会が生み出した芸術の一つなのです。
そうした作品を生み出し続ける監督の新作アニメが久しぶりに公開されます。

Contents
期待の話題作「さらざんまい」
つながっても、見失っても。手放すな。欲望は君の命だ。
注目しているのが4月に放送を予定している「さらざんまい」[note]アニメーション制作は『この世界の片隅に』『ユーリ!!! on ICE』などを手がけ高品質な作画で知られるMAPPAと、『ユリ熊嵐』にアニメーション制作協力として参加したラパントラックが共同で担当する[/note]です。
幾原邦彦新作アニメ「さらざんまい」に村瀬歩・内山昂輝・堀江瞬ら、完全版PVも(動画あり) #さらざんまい #幾原邦彦 #村瀬歩 #内山昂輝 #堀江瞬 #諏訪部順一 #宮野真守 #細谷佳正 https://t.co/4R0XVjmTKO pic.twitter.com/f46FJToAVh
— コミックナタリー (@comic_natalie) 2018年11月1日
監督は『少女革命ウテナ』『輪るピングドラム』『ユリ熊嵐』を手がけた幾原邦彦。その新作オリジナルテレビアニメですから、期待が高まります。
ウテナにしろピングドラムにしろユリ熊にしろ、表現は暗喩的でもテーマはど直球ストレートなんよね
今回は何をモチーフに、何を描くんだろう
回転寿司をモチーフに愛を描いても不思議じゃないからな幾原監督は #さらざんまい— aster (@aster_666) 2018年3月6日
優れたデザイン感覚
幾原監督が得意としている手法の一つが大胆なデザイン感覚です。
案内板や公共標識など何らかの情報や注意を示すために表示される視覚記号が「ピクトグラム」
そのピクトグラムを無秩序に作品画面に取り入れた作品は、私たちの感覚を根本から揺さぶります。
ウテナにしろピングドラムにしろユリ熊にしろ、表現は暗喩的でもテーマはど直球ストレートなんよね
— aster (@aster_666) 2018年3月6日
今回は何をモチーフに、何を描くんだろう
回転寿司をモチーフに愛を描いても不思議じゃないからな幾原監督は #さらざんまい
幾原監督の作品は暗喩つまり“たとえ“に特徴があります。物語は謎に包まれ、その謎を解く鍵として暗喩が大きな意味を持っているように描かれます。
今回の「さらざんまい」もタイトルからしてトリッキーです。
回転寿司のチェーン店の店名のように受け取った瞬間に、幾原監督の仕掛けた罠にはまってしまうのです。
公開された予告編を見ても、画面のそこかしこに視覚記号がなにかを主張するように置かれています。

実写と作画の融合
予告編を見て驚いたことは、もうひとつあります。
それは実写の使われ方です。
浅草周辺のランドマークを舞台に撮影された実写映像が作品の中に多用されています。

実写映像はアニメ作品に置くとどうしても現実のイメージを引きずってしまいます。
そのためアニメの世界観に没頭したい人にとっては違和感を感じさせることがあります。

ところが本作は、実写と作画とをかなりの精度で同期させることに成功しています。
おそらくそれは実写画面の中に映り込む生物を象形的な記号に変えているからかもしれません。
雑踏の映像を見ても実写では記録されたはずの人間が、人の形をした記号に置き換えられています。
つまり人間臭さ、生活感が絵から漂ってこないのです。


代わりにアニメの二次元キャラクターは実写の立体映像に溶け込むような処理がなされています。
コインロッカーの壁面にキャラクターの影がさり気なく描かれています。
こうした細かな作業は、制作陣の高度な技術の為せる業なのだと思います。
まとめ
得意とする視覚記号を実写の中に組み込ませる試みが幾原監督の狙いの一つのようです。それだけでもアニメファンとしては楽しみです。
難解とは言われながらも若い視聴者から絶大な人気を集める幾原監督。
これまでに見たこともない、記憶に残るアニメを私たちに見せてくれるような期待を感じます。