
期待の若手ミステリー作家が、人生や目標に悩む同世代に向けて贈る物語。新たな分野に挑む「青春小説」を意識したミステリーをご紹介します。
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斜線堂有紀 の描く「ゴールデンタイムの消費期限」
小学生でデビューし、天才の名をほしいままにしていた小説家・綴喜文彰。「二十過ぎれば只の人」と言われるように、主人公もまた天才と呼ばれたその才能を発揮できなくなり苦しんでいた。そんなある日、高校三年生になった主人公はある集まりに招待される。『レミントン・プロジェクト』と呼ばれる試みは若き天才を集め交流を図る11日間のプロジェクトだった。「また傑作を書けるようになる」という言葉に参加を決めた主人公を待ち受けていたのは思いもよらないジレンマだった。『楽園とは探偵の不在なり』で最注目の俊英が贈るAI×青春小説‼
人生に絶望しがちな若者たちに向けたメッセージ
著者の斜線堂有紀さんは、大学在学中に「キネマ探偵カレイドミステリー」でデビュー。昨年は「楽園とは探偵の不在なり」で年間ベストセラーとなった若手作家です。
「この物語は、次の夢を見つけるとか、生き方を見つけることに希望を持たせる話にしたかった」
著者の斜線堂有紀さんがインタビューに答えた言葉が印象に残りました。
子どものころから体が弱かった著者は入院生活を経験しました。
「人がしないような経験をすれば小説に書ける。つらい目にあっているのは人生にとってはマイナスだけど、それを筆に還元で切ればプラスになる」
入院生活の体験は小説家への道につながった反面、人とは違う歪をもたらしたと 斜線堂有紀さん は思い返します。
しかし、実際に小説を書き始める中でその考え方も正解ではないことに気づいたのです。
「人生を丸ごと小説に食い尽くされる」と作中の人物がつぶやいた一言。
この言葉にその思いが凝縮されています。
「つらい目にあうことで小説が書けるという考え方を続けていると、たとえば逃げた方がいいときでも必要以上に耐えてしまう。生きることよりも生きていくための方便を優先してしまった結果、人生を食い尽くされてしまう」
つらいときこそ「がんばるな」「逃げてもいいんだ」という、作家の思いが込められています。
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