守りたいと思うものとは何か「葬送のフリーレン」

フルタニ
こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。

このマンガがすごい2021オトコ編2位を獲得したのがこの作品「葬送のフリーレン」

魔王を倒して王都に凱旋した勇者ヒンメル、僧侶ハイター、戦士アイゼン、魔法使いフリーレンの勇者パーティ4人。10年間もの旅路を終え、感慨にふける彼らだが、1000年は軽く生きる長命種のエルフであるフリーレンにとっては、その旅はとても短いものであった。ヒンメルの葬儀でフリーレンは自分がヒンメルについて何も知らず、知ろうともしなかったことに気付いて涙する。その悲しみに困惑した彼女は、人間を”知る”旅に出るのだった。

数人の仲間と冒険の旅をする。異世界ゲームではありふれたパターンです。ありふれているだけに普通のストーリーでは埋もれてしまいます。本作は、そんな難いテーマに、「冒険のその後」という切り口で挑んだ意欲作です。

本来ならば主人公となる役割の勇者が冒頭で死んでしまうこと。その勇者の残した意志をたどりに長命のエルフが旅に出ます。

作品は驚くような展開もなく、淡々と立ち上がります。読んでいて眠くなるくらいのスローペースです。タイトルの”葬送”という言葉の重さもあって異世界ものとは思えないような地味さです。

エルフは長命なため仲間が次々に寿命を迎える中一人生き続けます。たぶん私たちがセミやカエルなどの短命な生物に対して感じる世界観と同じなのでしょう。

異様な胸騒ぎを感じ始めるのは、冷酷に見えるエルフの価値観が旅をつづけるにつれ変わり始める下りからです。

ヒンメルの葬儀に立ち会ったフリー連は、老いた僧侶のアイゼンの元を訪ね質問します。「天国はあるのか」それに対してアイゼンは「私も実在するかどうかはどちらでもいい」と答えこういいます。「でも、たとえ実在しなかったとしてもあるべきものだと思います」。

その方が都合がいいからです。必死に生きてきた人の行きつく先が無であっていいはずはありません。だったら天国で贅沢三昧していると思った方がいいじゃないですか。

「この感触。どこかで見たことがある」

頭に浮かんだのは、「自動手記人形」と呼ばれる代筆屋の少女を中心に繰り広げられる群像劇「ヴァイオレットエヴァーガーデン」です。こちらは戦争で機械人形として扱れ、「愛してる」という言葉が理解できなかった少女が様々な人との出会いと別れを通じて人間性を取り戻していく物語。

守りたいと思うものとは何か。強いメッセージに心を揺さぶられました。

話の展開は異なりますが、耳に聞こえないような通奏低音がしっかりした音楽のように命の長さの意味を知るエルフの旅は、読者の心をとらえてやまない作品として育っていくような気がします。