
ミステリーランキングが次々に発表される季節を迎え、書店の店頭もミステリー一色になり始めています。
ランキングのトップバッターは早川書房が発行するミステリーマガジン1月号。早川書房は翻訳ものを手掛ける出版社なので海外ミステリーに力が入ります。
Contents
その裁きは死
実直さが評判の離婚専門の弁護士が殺害された。現場の壁にはペンキで乱暴に描かれた数字“182″。被害者が殺される直前に残した謎の言葉。脚本を手がけた『刑事フォイル』の撮影に立ち会っていたわたし、ホロヴィッツは、元刑事の探偵ホーソーンから、再び奇妙な事件の捜査に引きずりこまれて――。
2019年のミステリーランキングを完全制覇した「メインテーマは殺人」。その第二弾。
著者アンソニー・ホロヴィッツが作中でも活躍します。こうしたメタフィクション形式は読者を錯覚させる効果が期待できる反面、失敗すると楽屋落ちになりがちなのですが、存在感ある描かれ方がされています。
伏線の貼り方やキャラクターの個性、動機や展開の妙などといったミステリーを支える柱の強靭さに加え、しみじみと伝わってくる人生の重みなどのメッセージ性もバランスよく、ベストミステリーを推せといわれたら押さざるを得ない作品です。
あとがきによればシリーズは全10冊が予定されているようで、じわじわヒットを続けるうちにとてつもないブームにつながっていくのかもしれません。
『カササギ殺人事件』は美妙巧緻な時計細工のような作品で、ミステリ史に名を残すような傑作でしたが、読んでいる最中の面白さだけで言うと『カササギ〜』をも凌ぐと思いました。
シャーロック・ホームズの物語が大好きな人にはたまらない内容。
アンソニー・ホロヴィッツさん
イギリスを代表する作家。ヤングアダルト作品〈女王陛下の少年スパイ! アレックス〉シリーズがベストセラーになったほか、人気テレビドラマ『刑事フォイル』『バーナビー警部』の脚本を手掛ける。コナン・ドイル財団公認のシャーロック・ホームズ・シリーズの新作長編『シャーロック・ホームズ 絹の家』『モリアーティ』、イアン・フレミング財団公認の『007 逆襲のトリガー』で、翻訳ミステリ界の話題をさらった。