
こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。
番組作りの基本は「予定調和」です。予定調和とはあらかじめ誰の目にも結果が明らかで、実際に予想通りの結果になること。
予定調和を悪く言う番組制作者もいますが、テレビドキュメンタリーは99%予定調和で作られているといってもいいでしょう。番組に限らず読者をひきつけるポイントは飽きさせないことです。東野作品にはその秘伝が詰め込まれています。
意外性と機知に富み、四季折々の風物を織り込んだ短編ミステリー9編。
Contents
素敵な日本人
東野さんの初期の作品を思いださせる「素敵な日本人」。「どこが素敵な日本人だ」というツッコミもまた楽しめる短編集です。
どの物語にも精巧などんでん返しが仕掛けられていて読者の期待はいい意味で裏切られます。
- あたし、人づきあいが得意じゃないんだよね。一人の方が気楽。それに、外に出るのって、好きじゃない。疲れるし、お金かかるし
- 人との交わりが深くなりすぎると、いずれは過去を探られることになる
- やりたいことをやろう。進みたい道を進むのだ。どんなことになろうとも、すべて自分の責任だと腹をくくった。挑戦なくして幸せはない。自分の人生だ。誰にも文句は言わせない
- 誰だって今の仕事や立場に満足しているわけじゃない。その中から生き甲斐を見つけだしていくものなんだ
- オーディションで役を射止め、完成した映画が日本でもヒットしたら、馬鹿にした者たちの鼻を明かしてやれる
- 下手な嘘はつかないほうがいいだろう。虚栄を張っている人間を相手にするのは疲れるものだ
読者の心をつかむ言葉を見つけ出すのも楽しみです。丁寧に読み進めて発見したフレーズは、例えばSNSなどに引用できます。短く刈り込まれた文章のおかげでまとまらなかった自分の頭の中が少し整理できます。