比べて楽しむ「北斎になりすました女 葛飾応為伝」

北斎になりすました女 葛飾応為伝
フルタニ
こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。

テレビドキュメンタリーは取材が命。しかし集めた情報の中で使えるのは多くて数十分という放送時間に限られます。

活字という定着した形で残したいという思いが本になりました。

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北斎になりすました女 葛飾応為伝

東京堂書店神田神保町店で週刊ベストセラー1位となった本です。

著者はドキュメンタリージャパンというテレビ制作会社の企画・構成作家です。2018年NHK『4人のモナリザ』でATP賞テレビグランプリ・優秀賞を受賞したという実績があります。もともとテレビドキュメンタリーとして企画されたテーマを、まったく別の切り口で美術ノンフィクションに再構成したのがこの作品です。

本では、応為が北斎のゴーストライターだったのではないかという説を、様々な絵や証拠を挙げながら検証する。疑問が次の疑問の引き金となって、次々と謎解きが繰り返されるうちに幻の絵師の人生が浮かび上がり、最後にたった一つの謎が解き明かされるというミステリー小説のような構成で、後半に進むに従って畳み掛けるように展開するので、先が気になってついつい一気に読み進めてしまう。

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北斎の娘・応為の存在については杉浦日向子さんの「百日紅」で知りました。画狂老人として、絵を描くこと以外なにもできなかった北斎を陰で支えた娘を想像力豊かに描いた作品です。

のちにアニメーション監督の原恵一が劇場版アニメーションにした「百日紅」は丁寧な作画が光る佳作でした。

応為の人生は様々な作家によって描かれてきました。朝井まかてさんの著した「眩 (くらら)」で描かれた応為は杉浦さんの人物像とはまた違った素顔を見せてくれました。

名作を生み出す才能と、名作を世に出す能力はかならずしも一致しません。それは現代の創作現場を見るとよく分かります。天才の能力を引き出すにはプロデューサーの存在が欠かせません。

北斎の存在が偉大すぎるだけに、陰に隠れた人物の存在が見えてくると創作の舞台裏が身近になります。読み比べてみると興味深い作品です。

原恵一監督が劇場版アニメーションにした「百日紅」の動画は販売されていませんが書籍は手に入れることができます。

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