
追伸:ツイッターで公開延期の情報が届きました。片渕監督自らが発信するツィッターの頻度が多いので、公開延期は心の中ではすでに織り込み済みです。慌てずゆっくり待ちましょう。
公開を心待ちにされているファンの皆様には謹んでお詫び申し上げますとともに、より魅力を増して公開される『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』を楽しみにお待ちいただけるようお願い申し上げます。
— 映画『この世界の片隅に』&映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』公式 (@konosekai_movie) 2018年10月19日
2018「この世界の片隅に」製作委員会#この世界の片隅に#いくつもの片隅に pic.twitter.com/aDBsvOrcKU
アニメ映画監督・片渕須直さんから短い動画が届きました。
線画で描かれた人物がふたり。
おぼつかない足取りで向かい合うという2秒ほどのシーンです。
すずさん。 pic.twitter.com/YnI0dZDuck
— 片渕須直 映画「この世界の片隅に」公開中 (@katabuchi_sunao) 2018年10月12日
原作を知る人なら心を締め付けられる象徴的な雪の日のシーン。
普通のアニメーションでは数カットで表現してしまう場面を、積み重ねられたおびただしいカットが人物の動きをなめらかに表現しています。
表現するというのはこういうことなのだ。細部に心血を注ぎ込む片淵監督の姿が眼の前に蘇りました。

監督の肉声を聞いたのは文化庁メディア芸術祭アニメーション部門の大賞となった「この世界の片隅に」の記念トークの会場でした。 監督の片渕須直さんと宇田鋼之介さんのトークイベント[1]日時:6月13日、場所:学校法人・専門学校 HAL東京です。
完成度の高さはすでに折り紙つきの作品です。製作にかける思いを監督の口自ら聞きたいと思ったからです。
トークショーで片淵監督が引用したのは主人公の少女が広島に届け物を届けに行くシーンでした。船から陸に上がった主人公が風呂敷包を肩に背負う場面。上映中は軽く見過ごしてしまう動きに使ったカットが実はものすごい手数の積み重ねの上になりたっていたことが監督の口から語られました。
「アニメーション版「この世界の片隅に」を捉え直す」(前田隆弘)より
※このシーンの持つ意味について前田隆弘さん記事の中で細かく分析・解説しています。
子どもの背丈と筋力、体重移動を含んだ一連の動作を線画の連なりで描き出していた。アニメ表現の持つ可能性に触れた一瞬でした。
会場では作品の特徴とも言える徹底した時代考証などが語られました。エピソードの一つ「楠公飯」をじっさいに作って食べてみた話や、物を運ぶ時に使う天秤棒の担ぎ方を実物が保存されている博物館まで行って実演した話など、徹底した取材がドラマの奥行きを支えている点に感心しました。
監督は「主人公のすずさんという一人の人物が実際に生きていた」それを表現したいと語ります。主人公の生き方は、当時の人々の生き方を暗示していることはいうまでもありません。架空のキャラクターに命を吹き込むためには技術としての絵の細密描写と、取材に裏打ちされたドキュメンタリー作品としての事実の積み重ねの2つが欠かせないことが伝わってきました。
まとめ
トークイベントで「この場だけの話」といって公表されたのが、長尺版の製作に取り組んでいるというニュースでした。それが劇場版ではカットされていた原作のエピソードを加えた長尺版に取り組んでいるというのです。
監督から届けられた2秒ほどのパイロット版からは、長尺版で新たに描かれる世界もまた徹底した取材と最高のアニメーション技術をもとに製作が進められていることが伺えます。
References
↑1 | 日時:6月13日、場所:学校法人・専門学校 HAL東京 |
---|