証言の持つ重み「戦争は女の顔をしていない」

戦争は女の顔をしていない
フルタニ
こんにちは、フルタニです。放送局で番組作りをしてました。

番組づくりの基本は掘り起こすこと。埋もれていた事実を伝えることです。

本を探して西東。今日出会った本は、タイトルに奥の深いメッセージが込められたこの一冊。ジェンダーに関する話題が広く語られるようになった今だからこそ読み込みたい作品です。

戦争は女の顔をしていない

戦争は女の顔をしていない』 は独ソ戦に従軍した500人以上の女性兵士にインタビューして書かれた本です。

原作の作者はロシアの作家、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ。

戦争の英雄神話をうちこわし,国家の圧迫に抗い続けて執筆活動を続けるジャーナリストです。その活動が認められて2015年ノーベル文学賞受賞を受賞しました。

スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチ特集 – 岩波書店

「男の言葉」で語られた「男の」戦争観

独ソ戦は第二次世界大戦中の1941年から1945年にかけて戦われた戦争で、人類史上最大の犠牲者を出した戦争です。

この戦争には女性も志願兵として参戦。看護婦や軍医としてのみならず兵士として武器を取って戦いました。その数は100万人を超えたといわれています。

エース狙撃兵として戦った女性や、夫婦で戦った女性など生々しい証言に驚かされます。ところが戦後、女性たちの多くは世間から白眼視されその戦争体験を隠さざるを得ませんでした。戦争は正義だという男の戦争観が支配していたからです。

歴史から消えかけた弱者の声を聞き書きして歩いたのがアレクシエーヴィチでした。証言を積み重ねるのはドキュメンタリーの手法の一つですが、彼女は口を閉ざす当事者の家を訪ね歩き体験を聞き書きすることで文学賞として認められました。

「戦争は女の顔をしていない。しかし、この戦争で我々の母親たちの顔ほど厳しく、すさまじく、また美しい顔として記憶された物はなかった」(アレーシ・アダモーヴィチ)

コミックで表現できることがある

その内容から出版を拒否され続けた作品を日本の漫画家小梅けいとさんがコミカライズしたものです。

マンガ化にあたっては、活字で表現されたすべての事象を考証し、映像化しなくてはなりません。

兵器や風景、衣食住の暮らしまで事実関係を調べ、パズルのピースをはめるように描くことが求められます。

原作で描かれなかった映像部分を補完するという気の遠くなるような作業をコミカライズにあたった小梅けいとは乗り越えることで、従軍した女性たちのリアルな姿が立ち上がってきたといえます。

「一人の人間の中で人間の部分はどれだけあるのか?その部分をどうやって守るのか? 」

人間の愚行に対する怒りと同時に、生きることの喜びと共感を感じる作品です。

アレクシエーヴィチ『戦争は女の顔をしていない』 – 名のもとに生きて