
番組作りの仕事は忙しかったけれど、ほぼ強制的に自分が知らない世界に飛び込むことで有益な情報に触れることができました。
知らない世界に飛び込む上でやっておいて損しないのは事前の準備。著作を知れば本の中身にリアリティがわいてきます。
今年の注目ネタはメディアの変化。5Gが本格化すると動画が爆発的に広がります。すると既存のメディアはどうなるのでしょうか。
驚いたのが、新聞が読まれていない残酷な事実。
小学生の親世代がもうほとんど新聞を購読していないので「新聞の気になったニュースを切り抜いて持ってくる授業」がもう出来ない。のだそうです。
読売新聞社の強気の戦略とその末路をしつこく追ったノンフィクションから手掛かりが得られそうです。
Contents
2050年のメディア

「デジタル化が日本を滅ぼす」と言って、新興ネットメディア(ヤフーです)を上から目線で見降ろした読売新聞社。この20数年間にメディアが経てきた激変の輪郭が見えてくる本です。
メディア関係者なら読んで損はありません。著者は長年週刊誌の記者として現場を見続けてきた人。読ませる力の持ち主なので、わかりにくいマスコミの内側をわかりやすく解説してくれます。

レビュー
渡邉恒雄氏が2018年の賀詞交換会で「読売はこのままでは持たんぞ」という言葉から本書は始まるが、購読者が大幅に減少している今切羽詰まった言葉で、本書にあるように電子版をどう制覇するかが今後のカギだ。
既存のマスメディアに対する風当たりが強くなっています。手に入れた情報を比較することが簡単にできる時代です。 情報を独占するという商売が成り立たなくなってきたからです。
「シノギ」が厳しくなってそれまで敵対しあっていた日経と読売と朝日が手を組んで「あらたにす」を始めて見事に失敗するとか、ヤフーの中で新しいプラットフォームを考えた男が会社にそれを潰されそうになって「敵側」の共同通信に移籍するとか、締め付けの厳しすぎる組織に弓を引いて返り討ちに遭う「清武の乱」とか、出てくるエピソードがいちいちヤクザ映画っぽい。
情報とその対価に対する考え方や、情報源を独占してきたカルテルのような仕組みに対しても厳しい目が注がれています。
「記者が夜討ち朝駆けで苦労して取ってきた情報をネットがタダで使うなんて」という論理だった。「労働価値説」とでも言うのか。本書はそれを「いわば内輪の論理で、外から見るとまったく非常識に見えた」と書く。結局、ここに、それ以降、新聞がネットに負け続ける理由が表れていると思う。新聞は長い間、世論を自由に操ってきたので、自分たちの慢心に気づかなかった。
マスメディア経営の内幕を知ることで、マスメディアを批判的に眺めることの大切さに気付かされます。
まとめ
結局「デジタル化が日本を滅ぼす」と言っていた新聞メディアは方針を前言を撤回せざるを得ませんでした。
イノベーションのジレンマとは、 巨大企業が新興企業の前に力を失う理由を説明した企業経営の理論です。
経営規模が巨大になればなるほど巨大な市場を守ることが目的になり、低い利益率ながらも競争の少ない新市場に手が出せなくなるのです。
この市場で急速に売上を拡大することができる新興企業に負けてしまうというわけです。
5Gの時代、既存のマスメディアと新興動画産業とのぶつかり合いから目が離せません。