父を探して 絵本に魔法がかけられたかのように動く、奥深い作品

わがくに現代メディア芸術の最先端展覧会はじまる

第20回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門の優秀賞を受賞した作品です。

「父を探して」2014年・ブラジル アレ・アブレウ監督

2014年アヌシー国際アニメーション映画祭クリスタル賞(最高賞)を受賞した作品ですが、日本での公開が遅かったため本年度の選考対象になりました。

9月16日から28日にかけて、東京都内の会場で受賞作品展が開催されています。入場は無料なので早速見に行ってきました。

出稼ぎに出た父親を探しに、少年が広大な世界を旅するという内容のこの作品は、セリフがない純粋に絵と音響効果で語る骨太な作品です。

クレヨン・色鉛筆・切り絵・油絵具などを自在に使い分けた筆づかいの持つ自然な質感は日本のアニメーションを見慣れた人からも新鮮に見えます。

映画は有機体

会場は新宿のTOHOシネマズです。大会事務局ではシアター11を期間中借り切って公開展示会場に当てています。
作品展の楽しみは制作者のトークが終演後に予定されている絵画あることです。
この「父を探して」のアレ・アブレウ監督のトークが聴けるとあって期待していた上映会でした。

本作は背景の白と円のモチーフが重要な要素となっています。
これについて監督は「映画は有機体であり、(頭に中に)浮かんでいるエレメントから必要なもの以外のものを削ぎ落としていくことが重要だ」と語っていました。

「芸術はカオスの中にとどまり続ける忍耐力が必要でカオスの中にとどまり続けるうちに、それまで見えてこなかったものが見えてくる。本作ではとどまり続けるなかで登場人物の関係性が見えてきた」と語っていたのが印象的でした。

なぜかというとこの作品はシナリオがありません。
監督ははじめ実写のドキュメンタリーを作ろうとしていたのだそうです。その時、頭のなかに浮かんだのはノートの片隅に書き留めた少年のイラスト。
彼が物語を作って欲しいように思えて、ドキュメンタリーの代わりにアニメーションづくににとりかかりました。
それも白い紙の上に直接文字を書くようにストーリーを広げていくやくかたで創作していったそうです。
まさに一刀彫の世界。制作者の話を直接聞くことは作品鑑賞の楽しみをひろげてくれます。

今日もご覧いただき、ありがとうございます。
円は円環。ものごとは次の世代に確かに受け継がれ、つながっていきます。